国内2例目 新登場の「完全個室付き高速バス」が超豪華だった! 昼行で眺めは“全方位”
夜行バスの高額設備として知られるのが「個室」です。特に床から天井までパーテーションで仕切られた「完全個室」の夜行バスが最高級というなか、全但バスが昼行の高速バス「ラグリア」に扉付きの個室を設置しました。
運転士からスマートグラスを渡される
全但バスが運行する高速バス「LuxRea(ラグリア)」は、大阪と兵庫県北部の城崎温泉・湯村温泉を結んでいます。元々、広々としたパウダールームを備え、木目調の内装をしたグレードの高いバスだったのですが、2021年12月28日より、昼間の高速バスでは唯一となる、床から天井まで達するパーテーションで仕切られた扉付き個室「グリーンルーム」を備えた車両を登場させました。
2022年2月現在「グリーンルーム」が運行されるのは、大阪(阪急三番街)〜城崎温泉線の大阪18時20分発と城崎温泉12時発、大阪(阪急三番街)〜湯村温泉線の大阪17時20分発と湯村温泉10時30分発です。
全但バスが大阪〜城崎温泉・湯村温泉間で運行する高速バス「LuxRea(ラグリア)」。昼間の高速バスでは唯一、扉付き個室「グリーンルーム」を備えた(2022年1月、安藤昌季撮影)。
大阪(阪急三番街)〜城崎温泉線のみ、個室内のモニターから周囲の景色を眺められるという「バスビュー」機能が設置されていると聞き、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は城崎温泉を12時に出る大阪行きのバスに乗車しました。
城崎温泉駅前にはインフォメーションセンター「SOZORO」があり、そこで高速バスの切符を買ったり、電話予約した切符を受け取ったりできます。
午前11時35分、城崎温泉駅前に「ラグリア」が姿を現しました。一見、通常の高速バスですが、後部に個室が設置されているのが外から見て取れ、乗車前から期待が高まります。
いよいよ乗り込むと、運転士よりスマートグラスとスマートフォン、消毒薬などの入った手提げ袋が渡されます。これはバスビューとは別に期間限定で、全但バスが芸術文化観光専門職大学およびKDDIと提携して行っているサービスです。スマートグラスで観光モデルコースなどの動画が見られるとのことで、それは乗車後の楽しみにするとし、まずは個室に向かいます。
昼行バスでは唯一 いざ扉付き個室へ
「ラグリア」も、一般的な高速バスと同じく、2+2列で座席が並んでいますが、後部右側に個室が2室だけ、前後方向に設置されています。
筆者は後部の「L2」個室を予約しました。入口がカーテンではなく扉で仕切られた個室バスは、「ラグリア」以外では夜行バス「ドリームスリーパー東京大阪号」だけですから、昼行バスの客席としては日本一の豪華さではないでしょうか。
扉付き個室「グリーンルーム」(2022年1月、安藤昌季撮影)。
この個室は、2+2列座席2列分、つまり4名分のスペースを1人で占有できます。にも関わらず、通常運賃+1000円で利用できるのですから、「コスパ良好」です。なお通常席にも許可を得て座りましたが、フットレストと個別コンセントを備え、リクライニングもよく倒れます。全体的にグレードが高いバスだと感じました。
個室内には革張りのリクライニングシート、テーブル、ドリンクホルダー、コンセント、そしてモニターが設置されています。モニターの上にもカメラがありますが、このカメラがないと法令上、扉付きの個室は設置できないのです。ただ、乗客が座席に座ると運転席のモニターは消えるので、走行中の乗客のプライバシーは確保されます。
座席の上には荷物棚もあります。しかし、扉を開けないと荷物が出し入れできないこともあり、筆者は個室内に荷物を置きました。個室前方と座席の後ろに荷物を置けるだけの床面積があります。個室をうたうバスのなかでも珍しいゆとりです。
側扉の内側にコートかけもあるほか、使い捨てのスリッパも備えられています。個別エアクリーナーや車内全体で使えるフリーWi-Fiもあり、設備面では夜行バスの豪華個室と比較しても、同等かそれ以上と感じます。
個室が広いので、あれこれ測ってみた
この開放感のある個室がどのくらい広いのか、各部を計測してみました。室内は前後方向に1.5m、幅が93.5cmあります。側窓は縦97cm、横136cmと大きくとられています。
さらに正面の18インチ(約45.7cm)モニターに、周囲の景色が4分割されて映し出されます。2つは前方の風景。運転士と、天井中央の視点からの風景です。天井のカメラはトンネルに入った時に「車高ギリギリ」の視点となり、迫力があります。もう2つは空と後方を写すカメラからの映像で、側窓と合わせて5つの景色を同時に見ることができます。
ARグラスの提供は期間限定(2022年1月、安藤昌季撮影)。
1人がけの座席は広く、横幅は45〜57cmもあり、背もたれも大きく倒れます。レッグレストも装備され、充分に「寝られる」設備です。
テーブルは縦25cm、横35cmでした。脇にコンセントがあるので、ノートパソコンなどでの作業も可能です。ただ滑り止めはないので、ものが落ちないように注意が必要です。
期間限定サービス、ARグラスを装着
さて、乗車時に運転士から渡されたスマートグラスを装着します。スマートフォンと連携して、動画を再生するコンテンツ「ARグラス」です。You TubeやNetflixといった動画配信サービスも楽しめるほか、豊岡市の観光モデルコースの疑似体験もできます。スマートグラスで視界が覆われているために臨場感がありました。
大阪までの3時間18分があっという間に感じるほど、コンテンツが盛りだくさんの「グリーンルーム」。ARグラスは2022年2月28日までとのことですが、今後のコンテンツ拡大に期待を持てる、楽しいバス旅となりました。