(写真:PIXTA)

写真拡大

「もうすぐバレンタインデーということもあり、みなさんチョコレートを食べる機会が増えているのではないでしょうか。でも、大好きなチョコレートを“太るのに……”と、罪悪感を抱きながら食べたくありませんよね。そんな人に朗報。チョコレートは食べる時間によって、ダイエットにうれしい効果があると指摘する論文が発表されたんです」

そう語るのは、ボストン在住の内科医・大西睦子さんだ。大西さんが注目している医学論文は、’21年6月『FASEBジャーナル』で発表された。

「ハーバード大学医学部睡眠医学部門に所属するフランク・シェアー博士と、スペインのムルシア大学のマルタ・ガラウレット博士らの共同研究です。これまでも、ダークチョコレートが健康にいいという報告はされてきましたが、今回の研究で用いられたのは甘くて食べやすいミルクチョコレート。有名大学の論文ということもあって、公衆衛生学の医師からも注目が集まりました」

研究は、45歳から65歳までの閉経後のスペイン人女性を対象に行われたもの。被験者は“起床後1時間以内に100グラムのミルクチョコレートを食べるグループ” “就寝前1時間以内に食べるグループ” “チョコレートを食べないグループ”の3つに分けられた。

■チョコを食べ続けても体重が増えなかった!

被験者全員が、チョコレート以外に関しては一切食事制限をせずに2週間過ごし、その後、それぞれのグループを体重増加率など多くの指標で比較したという。

「この研究のように、毎日500キロカロリーを超えるチョコレートを2週間食べ続けると、本来約1キロ体重が増加するはずです。さらに、女性は閉経するとエストロゲンが減少するなどホルモンのバランスが崩れ、太りやすい状態になります。しかし、今回の実験で朝や夜にチョコレートを食べたグループでは、体重が増加しませんでした。それどころか“朝チョコ”にはウエストサイズが小さくなるダイエット効果まで見られたんです」

実験によると、朝にチョコレートを食べたグループは、食べなかったグループに比べ、脂質の燃焼が促進されており、ウエストサイズは1.7%小さくなったという。メタボリックシンドロームの基準となるウエスト90センチで考えると、約1.5センチ減少したことに。

「空腹時の血糖値は4%下がり、ストレスホルモンのレベルも低下。空腹感や、甘いものを食べる欲求を抑える効果も見られました」

また、夜にチョコレートを食べたグループは、寝付きがよくなり、睡眠が規則的になったとの報告も。さらに、糖質の燃焼が35%も増え、翌日の摂取カロリーまで減少したという。

なぜチョコレートを食べるとやせるのだろうか? そのヒントは“食べる時間”にありそうだ。

「今回の研究で明確なメカニズムは明らかにされていませんが、研究に関わったシェアー博士は、チョコレートを食べるタイミングに答えがあるのではと考えています。こうした“食べる時間”に着目した栄養学である“時間栄養学”は、世界の研究者が注目している分野でもあるのです」

食事をすると、運動をするときのようにカロリーが消費される。ドイツのリューベック大学の研究によると、この食事によって消費されるカロリーの量は、朝だと夜の2倍多くなるのだという。

「また、“朝チョコ”で空腹感を抑えたのは、ポリフェノールの一種であるフラバノールのエピカテキンといった物質ではないかと推測されています」

カカオ含有率が高いダークチョコレートや純ココアなどに豊富に含まれるポリフェノールは、血圧を下げ、心疾患、脳卒中、糖尿病、認知症のリスクまで下げるといわれている。

■まずは板チョコ3分の2枚を2週間

今回の論文では、被験者は100グラムのミルクチョコレートからポリフェノールを毎日800ミリグラム以上摂取していたが、同量のポリフェノールを日本で売られているミルクチョコレートから摂取するとなると、よく見かける明治の板チョコなら3枚弱食べる必要がある。

しかし、ヨーロッパのチョコレートメーカーが欧州食品安全機関に提出した報告書によると、1日200ミリグラムの摂取でも健康効果があるという。200ミリグラムなら、一般的な日本のミルクチョコレートで換算すると、1日3分の2枚。これなら、続けられそうだ。

「より効率的にポリフェノールを摂取したい人は、カカオ含有率の高いダークチョコレートで“朝チョコ” “夜チョコ”を試してみてもいいかもしれません」

ダイエットを狙うなら、ポリフェノールを200ミリグラム以上取ることを目指して、起床1時間以内にチョコレートを食べてみては?

市販のチョコレートのポリフェノール含有量は次を参考に。実験と同じ2週間を目安に続けるのがいいだろう。

■市販チョコのポリフェノール含有量(※メーカーホームページより本誌作成)

【ミルクチョコレート(明治)】:含有量・343ミリグラム/1枚50グラム
チョコレート効果72%(明治)】:含有量・127ミリグラム/1枚5グラム
【ダース ダースミルク(森永製菓)】:539ミリグラム/1箱
【カレ・ド・ショコラ フレンチミルク(森永製菓)】:33ミリグラム/1枚4.9グラム

太ることを気にせずに、チョコレートを食べられるなら、こんなにオイシイ話はない!