輝く星団と赤い星雲のコントラスト、ハッブルが撮影した21万光年先の星形成領域
【▲ 散開星団「NGC 346」(Credit: NASA, ESA and A. Nota (STScI/ESA))】
こちらの画像の中央に写っているのは、南天の「きょしちょう座」(巨嘴鳥座)の方向にある散開星団「NGC 346」です。散開星団とは、数十〜数百個の恒星がまばらに緩く集まっている天体のこと。画像に写るNGC 346の力強く輝く星々は、アーチ状の構造に支えられた赤いベールのような領域に優しく包まれているかのようにも見えます。
NGC 346を取り囲んでいるこの赤色の領域は、幅およそ200光年に渡って広がる「N66」と呼ばれるHII領域です。HII領域は、若く重い星が放射する紫外線によって電離した水素が輝いている輝線星雲の一種です。ここはガスや塵でできた低温で高密度な分子雲のなかで新しい星が誕生している場所でもあるため、星形成領域とも呼ばれます。星団を包むようなN66の姿は、若い高温の星々からの放射が星雲の高密度な部分を侵食したことで形作られたと考えられています。
散開星団NGC 346とHII領域N66は天の川銀河ではなく、およそ21万光年先にある不規則銀河「小マゼラン雲」に位置しています。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、小マゼラン雲にあることが知られている青く高温な大質量星全体のうち、その半分以上にあたる数十個がNGC 346に存在しているといいます。小マゼラン雲のように小さな不規則銀河は初期の宇宙では一般的であり、他の銀河と合体することでより大きな銀河のもとになったと考えられています。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」による可視光と赤外線の観測データから作成されたもので、NASAの今日の一枚「Brilliant, Hot, Young Stars Shine in the Small Magellanic Cloud」として2021年8月30日付で紹介されています。
【▲ ブランコ4m望遠鏡(セロ・トロロ汎米天文台)の「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使って撮影された小マゼラン雲(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/SMASH/D. Nidever (Montana State University))】
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Image Credit: NASA, ESA and A. Nota (STScI/ESA)
Source: NASA
文/松村武宏