北海道の名店三代目に教わる豚丼レシピ。プロの味に近づける4つのポイント

名店ぶたはげ直伝。おうち史上最高の豚丼

北海道・帯広の名物グルメ、豚丼。豚肉のボリュームと甘辛くてコクのある味が魅力で、北海道のみならず全国各地で愛される料理です。

北海道出身である筆者も、そのひとり。よく家庭でも作っていたのですが、市販のたれを使ってみてもお店の味わいには遠く、ちょっと残念に思っていました。

そこで、北海道を代表する豚丼の名店、帯広はげ天グループ「豚丼のぶたはげ」の三代目、矢野整さんに作り方を教えてもらいました。

「豚丼誕生初期から仲間数人と豚丼を普及させたひとりが、私の祖父にあたる初代『帯広はげ天』の矢野省六。祖父は試行錯誤を重ね、豚丼のぶたはげの味の源となる豚丼のたれを作り上げました。

我々の命であるたれのレシピをお教えすることはできませんが、焼き方ひとつ変えるだけでも、おいしく仕上がりますよ」と矢野さん。

お店の味に近づけるための4つのポイント

1. 豚肉はロース肉か肩ロース肉を使用

「推奨する豚肉の部位はロース、もしくは肩ロース。店舗では6~6.5mmのものを使用していますが、入手が困難な場合はなるべく近づける感じで問題ありません。お安めの豚肉を使うときは、むしろ少し薄めの方がいいですね」

2. たれは二度づけする

「店舗では1回しかたれをつけませんが、家庭で作る場合は二度づけするのがおすすめ。味がしっかりとついておいしく仕上がります」

3. なるべく網焼き、魚焼きグリルを使う

「フライパンでも作れますが、できれば網焼きを使って、しっかりと焼き目を作ることが肝心。家庭で作るならば、魚焼きグリルを使うとお店の味わいに近くなりますよ。一番の理想は炭焼きですが難易度が高いので、バーベキューをするときに挑戦するといいかもしれません」

4. たれをしっかり煮詰める

「たれがシャバシャバしているようでは、北海道の豚丼とは言えません!市販のたれを使う場合も自家製レシピで作る際も、たれはしっかりと煮詰めることが必要。焦げる一歩手前までグツグツ煮立てるように加熱すると、肉の焼き目以外からも芳ばしさを感じるおいしい豚丼になります」

材料(2人分)

・豚ロース肉または豚肩ロース肉……6~8枚(好みや予算に合わせて)
・市販の豚丼たれ……適量
・粗びきこしょう……適量
・グリーンピース(缶詰でOK)……適量

「たれはしょうゆ、砂糖、みりんなどで作る一般的な自家製たれでも構いません。僕は家で作るときは、ぶたはげで販売している『秘伝豚たれ』を使用しています。豚肉とのセットもあるので、ぜひ使ってみてください」

作り方

今回はスーパーで買った、4~5mmの厚さの豚肩ロース肉を使用。魚焼きグリルを使って、調理していきます。

1. たれを絡めた豚肉を魚焼きグリルで焼く

まず豚肉にたれをまんべんなく絡めます。その間に魚焼きグリルを余熱して、十分に熱くしておきます。

※フライパンの場合も同様の工程

グリルに豚肉を並べ、片面を芳ばしく焼きあげます。焼き時間・焼き加減は、様子を見ながら調整。表面8に対して裏面2の割合にするのがコツです。

2. 肉に再びたれをつけて、裏面も焼く

焼き始めて10分ほどすると、肉の端に焦げ目がついてほぼ火が通った感じに。ここでいったん火を止めることにしました。

取り出した豚肉に、もう一度たれを絡めます。そのあと裏面を上にしてグリルに並べ、再び加熱します。

もくもくと煙が立ち、芳ばしくて甘辛い香りが充満してきたので、ここで焼きあがりとします。

3. ごはんにかけるたれを煮詰める

豚肉を焼いている間に、ごはんにかけるためのたれをフライパンで煮詰めておきます。グツグツと強火で煮立てて、焦げる直前のところで火を止めます。

4. 丼に盛りつける

熱々のごはんを丼に盛り、煮詰めたたれを回しかけます。とろりとしたテクスチャーのたれが、ごはんによく絡みます。

ごはんの上に焼きあげた肉を並べます。今回は購入した豚肉の形状により横並べにしていますが、中心から円を描くように並べるとお店のような盛りつけになりますよ。

最後にこしょうとグリーンピースをのせれば、完成!豚肉に追いだれをすれば、ツヤツヤと食欲をそそる見た目に。

芳ばしさがたまらない!いつもとは別格の味

魚焼きグリルで焼きあげた豚肉は、端に焦げ目がついてカリっとした仕上がりに。フライパンで焼くのとはまったく違う、芳ばしい風味です。

豚肉をめくってみると、たれをまとったごはんが!豚肉でごはんを巻きこむようにして、パクリ、思わず笑顔がこぼれます。まるで炭火で焼いたのかと思うくらい風味がいいんですよね。たれを二度づけした効果も抜群で、そのしみしみ加減といったら……ごはんとの相性がよすぎて、次から次へと箸が進んでしまいますよ。

たれは煮詰めてあるので丼の底にたまらず、ごはんも適度な水分を保ってふっくらツヤツヤのままです。シャバシャバではないことが、こんなに大事だとは……。

最後にかけたこしょうもピリっとした辛さがきいていて、欠かせないアクセントになっていました。矢野さんいわく、こしょうは粗びきがおすすめだそうです。

おいしい豚丼を作るには芳ばしさが必須

最初は魚グリルを使うことが少々面倒にも感じた筆者。いざトライしてみると、想像以上に簡単。かつ、自己流の作り方とは歴然の差が生まれたことに驚きました。

「豚丼は芳ばしさが命!豚肉とたれの双方から芳ばしさを引き出すことを意識してください。魚グリルがなくても、今回の工程さえ守ればフライパンでもおいしい豚丼を作れますよ」と矢野さん。

芳ばしさの有無が、お店の味に近づけられるかの分かれ道。お気に入りのたれや自慢のレシピがある人も、しっかり芳ばしく仕上げて、本格的な豚丼作りに挑戦してみてくださいね。


取材協力

文・撮影/那須顕代