イプシロンロケット5号機、地元より見学自粛の呼びかけ
JAXAは、イプシロンロケット5号機を2021年10月1日(金)9時48分頃〜9時59分頃(日本標準時)、内之浦宇宙空間観測所から発射すると発表しました。
打上げ予備日は2021年11月30日(火)までで、4号機から2年9ヶ月振りの打ち上げになります。搭載する人工衛星は「革新的衛星技術実証2号機」としてまとめられた9機の小型衛星です。
【▲ 報道公開された革新的技術実証衛星2号機(Credit: JAXA)】
計画発表を受け、内之浦宇宙空間観測所が置かれる鹿児島県の肝付町(きもつきちょう)は、町のホームページやSNS上で、町外住民の見学目的での来町を自粛するよう呼びかけています。新型コロナウイルス感染症の広がりを抑えるため、人の流れを抑制するのが目的です。
【▲ 自粛の呼びかけ文書(Credit: 肝付町)】
見学者が発症した場合、地元に負担を強いることに
今回の呼びかけでは、町が設置する打ち上げ見学場について町内在住者に限って開設することと、見学目的で町外からの来訪を遠慮して欲しいむね、書かれています。その裏側にある現状について、町に尋ねました。
肝付町では、仮に打ち上げ見学者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、最初の搬送先は隣接する鹿屋市(かのやし)になります。地域の中核市なのでコロナ対応病床を備えた病院があります。ですが、通常時でも救急搬送に40〜50分を要する上、感染者が増えた場合は受け入れにより時間がかかることが予想されます。さらに、鹿屋が溢れた場合はより遠くに運ぶことになります。8月27日の発表では、鹿児島県のコロナ病床使用率は70%を越え、自宅待機等の人数は1396人に上っています。
これは見学者でも住民でも変わりませんので、結果として地域医療を圧迫することになってしまいます。
「私は大丈夫、感染対策もしているし、もうワクチンも打ったから」。そう考える方は思いとどまって下さい。相手はウイルスですから目に見えません。ワクチンは感染そのものを止めるわけではありません。
【▲ 平常時の打ち上げでは、町が開設する見学場はかなりの密度になる。写真は見学場のひとつである、IHIスペースポート内之浦(旧称:宮原ロケット見学場)の風景(Credit: 金木利憲)】
「感染が収束しましたら、ぜひおいで下さい」
肝付町の担当者からのメッセージを紹介します。
今回の打上げは1年9ヶ月ぶりということで、楽しみにしていた方も多かったと思います。町としても、感染状況が落ち着けば一般見学場を開設し、皆さんに見て頂けるように準備していました。
ですが、感染症が広まると大変なことになってしまいますから、本当に残念ながら今回は見送ることになりました。
次回の打上げは来年度予定だと聞いています。新型コロナウイルス感染症が収束しましたら、ぜひおいで下さい。
長く続く自粛に疲れてしまった方もいるかもしれません。ですが当日は、中継や写真で打上げを楽しむのがいいようです。
【▲ イプシロンロケット初号機打ち上げ(Credit: 金木利憲)】
参考資料
・鹿児島県内での新型コロナウイルス感染症発生状況(鹿児島県):https://www.pref.kagoshima.jp/kenko-fukushi/covid19/hassei/index.html
・【重要】イプシロン5号機打上げに係る一般見学について(肝付町)https://kimotsuki-town.jp/soshiki/kikakuchoseika/uchuunomatidukurisuisin/5/1/4567.html
・革新的衛星技術実証2号機/イプシロンロケット5号機(JAXA)https://fanfun.jaxa.jp/countdown/kakushin2-epsilon5/index.html
Image Credit: 肝付町、JAXA、金木利憲
文/金木利憲