「夏野菜」で作る冷たいデザート。料理研究家 柳瀬久美子さんに教わる暑さ乗り切るレシピ

夏野菜をもっと味わう!冷たいデザートのレシピ

夏野菜がたくさん出回る季節。夏野菜には水分やカリウムが多く含まれており、むくみを解消させたり、体の熱を冷ましたりするはたらきがあります。

そんな夏野菜を、料理としてだけでなく冷たいデザートにして味わってみませんか?ひんやり冷たい口当たりが、連日の猛暑を忘れさせてくれるはず。

そこで、食材を活かした体にやさしいお菓子作りを得意とする料理研究家の柳瀬久美子さんに、夏野菜を使う冷たいデザートのレシピを3つ教わりました。

「その季節に旬のものを食べることは、利にかなっていると思うんです」と話す柳瀬さん。料理研究家として独立して28年、新たなチャレンジをしたいと思い、この春から薬膳の学校に通い始めたのだそう。

「例えば夏の暑い日に、きゅうりが食べたいなぁと思うことがあります。そこで薬膳の教科書を見てみると、”きゅうりには体の熱を冷ますはたらきがある”と書いてあるんですよね。こういう、体が欲しているものを感じ取るセンサーは、とても大切だと思います」

本企画で教わったのは、旬のとうもろこし、トマト、枝豆を使うデザートのレシピ。連日の猛暑を食事で上手くやり過ごしたい人や、夏野菜の食べ方がマンネリしている人は必見です。

1. やさしい甘味がおいしい。とうもろこしのプリン

「とうもろこしのやさしい甘味を感じられるプリン。私、プリンがとっても好きなんです。今日のおやつはケーキだと少し重たいなぁというときでも、プリンならスルッと食べられるのでよく作ります。

また、とうもろこしは利尿作用があるので、体内の湿気を取り、むくみを抑えるはたらきもありますよ。暑さで食欲のない日にもおすすめです」

「ポイントは、とうもろこしをハンディブレンダーでしっかりと細かくすること。とうもろこしが粗いと濾すときが大変ですし、皮が残っていると口当たりが悪くなってしまいます。体内でも分解されにくいので、しっかり細かくしてから漉しましょう」

材料※120cc(直径6.5cm/高さ5cm)のプリン型6個分

<とうもろこしプリン>
・とうもろこしの粒……1本分(150~200g 目安)※冷凍や水煮缶でもOK
・卵……3個
・卵黄……1個
・牛乳……400cc
・グラニュー糖……60g

<キャラメルソース>
・砂糖……80g
・水……10cc(小さじ2杯)
・熱湯……40cc

作り方

キャラメルソース

1. 鍋に水と砂糖を入れ中火にかける

2. 砂糖液が沸騰してきて鍋肌のほうから茶色く色づき始めたら、鍋を揺すって全体が均等に濃い茶色になるまで煮詰める

3. 好みの色になったなら火を止めて、木べらを伝わせながら熱湯を注ぐ。ムラなく混ぜ合わせたら、用意した型に均等に流しておく

とうもろこしプリン

1. とうもろこしは蒸してから粒をはずしておく

2. 鍋に牛乳・グラニュー糖・コーンを入れ、ひと煮立ちさせたら火を弱める。液面が多少ゆらゆらするくらいの火加減に調節し、そのまま1~2分煮てコーンの味を全体になじませる

3. 火から下ろし、ジューサーやハンディブレンダーにかけてポタージュ状にしたら50℃くらいまで冷ます

4. ボウルに卵と卵黄を入れホイッパーでほぐし、卵のコシを切ったら2を加え混ぜあわせる。漉し器を通して漉す(漉し器はザルのような目の粗いものがおすすめ)

5. キャラメルを敷いた型に流し入れる

6. バットに間隔を空けて型をのせ、熱湯を型の底から2cmくらいまで注ぎ、160℃に予熱したオーブンで約30~35分焼く。オーブンから出したら粗熱を取り、冷蔵庫に入れ充分に冷やす

ワンポイント

「プリンを型から外すとき、いろいろな方法があると思いますが、手を使うのもひとつ。プリンのフチをキュッキュッとやさしく抑え、型に隙間を作って空気を入れるイメージです。そのまま手のひらの上でキャッチしてお皿にのせると、美しく盛り付けることができます。

また、プリンの型にキャラメルが残ってしまったときは、スプーンで集めて茶漉しを通してからプリンにかけてください。プリンのカスが入らずきれいな見た目になりますし、無駄なくいただけます」

2. 鮮やかな色味に心躍る。ミニトマトのテリーヌ

「カラフルなミニトマトを、レモン風味のゼリーの中に閉じ込めるひと品。以前、知り合いのコックさんに食べさせてもらったトマトのジャムが、レモンの効いた爽やかな味でとてもおいしかったんです。

そのジャムがきっかけで、トマトは甘い味付けにも合うということや、レモンとの相性が良いことを知りました。

また、トマトは体の熱を取り、暑さで弱った胃腸のはたらきも助けてくれるので、夏場は特に積極的に摂りたい食材のひとつです」

「今回はいろんな色のミニトマトを使いましたが、もちろん1種だけでもOK。その場合はレモンやライムの輪切り、もしくはバジルを添えてあげると華やかになりますよ。

ミニトマトをバランス良く配置するコツは、ゼリー液を氷水に当てて冷やしながらかき混ぜ、少しドロっとした固さにすること。そうするとミニトマトが浮いて偏ることがありませんし、最後に竹串で配置を微調整することができます」

材料(直径17cmのパウンド型1台分)

・ミニトマト……約20個
・レモン果汁……1個分(40cc)
・板ゼラチン……15g
・グラニュー糖……40g
・はちみつ……40g
・水……450cc

作り方

1. 板ゼラチンは、たっぷりの冷たい水(分量外)でふやかす
※粉ゼラチンの場合は、ゼラチン15gに対して水75cc

2. ミニトマトはへたを取り、竹串を刺して10カ所くらいに小さい穴を開けておく

3. 鍋にグラニュー糖・はちみつ・水(分量のうちの150cc)・レモン果汁を入れ火にかける。煮立つ直前まで温めてグラニュー糖をなじませたら火を止め、1を加え混ぜながら余熱で溶かす

4. 茶漉しを通してボウルに移したら、残りの水も加え混ぜあわせ、ミニトマトを加える。このまま常温で10~15分置く

5. 4のボウルを氷水が入ったボウルに当てて、かき混ぜながらゼリー液を冷やしてとろみを付ける。とろみが付いてきたら、ミニトマトの位置や全体のバランスを見ながらパウンド型に流し入れる

6. 冷蔵庫で2時間以上しっかりと冷やし固める。固まったら型から抜き、好みの厚さにカットする

ワンポイント

「型から抜くときは50~55℃くらいの温度のお湯で、型のまわりを温めます。そうするとゼリーのフチが少しゆるくなるので、指の腹で軽く押さえ、型に空気を入れると、スルッと外れやすくなります。その後カットするときも、ナイフの刃を温めてから切ると断面がきれいに仕上がります。

パウンド型がなければ、お好みの容器や牛乳パックでも作ることができますよ」

3. 動物性食品不使用。枝豆の豆乳ずんだ汁粉

「枝豆と豆乳を使う冷たいお汁粉です。ひと口食べると、枝豆の香りがふわっと広がります。

大豆から生まれる枝豆と豆乳は親子のようなもので、言わずもがな相性抜群。また、枝豆には体全体の水の巡りを良くしてくれるはたらきがあるので、むくみ対策におすすめです。お酒のアテとして枝豆が食べられているのは、利にかなっています」

「動物性食品を使わないので、ヴィーガンの方も食べていただけます。甘み付けには“飲む点滴”と呼ばれる甘酒を使うため、暑い夏に元気を与えてくれるデザートです。

お好みでバニラアイスクリームをそえたり、黒蜜をかけたりしてもおいしいですよ」

材料(2~3人分)

<豆乳ずんだ汁粉>
・枝豆(薄皮も剥いたもの)……正味100g ※さやに入った状態だと倍量くらい
・豆乳(成分無調整)……100cc
・麹の甘酒……100cc
・てんさい糖……20g ※甘さを見ながら調節
・塩……ひとつまみ
・枝豆……適宜(トッピング用)

<白玉団子>
・白玉粉……60g
・水……60cc

作り方

1. 枝豆、塩、麹の甘酒、豆乳をハンディブレンダー(またはジューサー)にかける。味を見て甘さが足りなければ、てんさい糖を加え混ぜあわせる

2. 冷蔵庫で30分~1時間以上しっかり冷やし、味をなじませる

3. ボウルに白玉粉を入れ、水を加えながら白玉粉を混ぜあわせる。耳たぶくらいのかたさの生地を作る

4. 沸騰した湯の入った鍋に、丸めた白玉粉を入れてゆでる。白玉粉が浮いてきたら、さらに1分程度ゆでて氷水に取って冷やす

5. 器に汁粉を入れて白玉を浮かべ、飾り用の枝豆をのせる

ワンポイント

「市販の甘酒は、商品によって甘みや水分量が異なります。甘酒のみで甘みを付ける場合は、水分量が増えてさらさらしすぎてしまうので、注意してくださいね。

甘みが足りなければ、仕上げにてんさい糖をふりかけて調整してください。シャリシャリとした砂糖の食感が加わっておいしいですよ」

ひんやり冷たいデザートで、猛暑を乗り切る

「お菓子を作るときは、簡単なものが理想的だけど、まずは“おいしく作る”ということを目指すのが大切。手間ひまをかけた分、ゴールにはとっておきのおいしいご褒美が待っている」と柳瀬さんは言います。

教わった3つのレシピは、焼き菓子に比べると比較的簡単に作ることができます。しかし、要所要所にはおいしく仕上げるための“ひと手間”が散りばめられていますよ。

皆さんも、今が旬の夏野菜でおいしく健康的なデザートを作ってはいかがでしょう。暑い夏を元気に過ごすために、ひと役買ってくれるはずですよ。

取材・文/猪狩明日奈
撮影/宮本信義