1995年以降に生まれたZ世代が社会に出始め、職場で接する機会が増えてきました。また今後の消費の中心になる世代でもあります。彼らの価値観はそのひとつ前のゆとり世代とどのような違いがあるのでしょうか。若者研究の第一人者であり、マーケティングアナリストの原田曜平さんに教えてもらいます。

※本稿は、原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

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■「ゆとり世代」と「Z世代」の大きな違いとは

「失われた20年」と呼ばれ、バブル崩壊の暗いムードが長引く中、「ゆとり世代」は「第一次就職氷河期」の余韻が残る時代を生き、一部は「第二次就職氷河期世代」とも呼ばれました。

一方、Z世代は、アベノミクス景気や超人手不足の中、超売り手市場で「バブル期超え」や「ダイヤモンドの卵」と呼ばれました(少なくともコロナ禍前までは)。

※出所:原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)

このように、「ゆとり世代」とZ世代は、連続した世代でありながら、生きた時代背景が大きく違います。

「平成不況」によって「消費離れ」を起こした「ゆとり世代」に対し、Z世代は、アベノミクス景気と長く続く少子化、加えてそもそも同世代人口が少ない(「ゆとり世代」の初期の人たちが1学年で120万人いたのに対し、「Z世代」は110万人にまで減っている)ことによる「超人手不足」によって、進学、バイト、就活、転職と、「ゆとり世代」と比べると、不安や競争の少ない安心・安定した生活を送ってきました。

■競争のなさを象徴する、「逆求人」サイトの誕生

私もこの数年、Z世代から、彼らの恵まれたバイトの就業状況の話を散々聞いてきました。

「バイトの時給が、年々上がっていく実感があります。時給を高くしないとバイトの応募がこなかったり、バイトがすぐに辞めちゃうみたいで」
「居酒屋など若者に不人気な肉体労働的なバイトは、単に時給が高いだけでは人が集まらなくなっており、数カ月に一度、皆で飲み会をやったりBBQをやったりして、バイトメンバー同士の仲を良くさせて、少しでも辞めにくい状況を作っているところが多いです。もちろん、こうした懇親会の費用は全てお店持ちです」

就職活動でも、この数年で、いわゆる「逆求人サイト」が盛り上がってきており、これも「Z世代」の恵まれた採用・就業状況を表しています。

「逆求人」とは、求人に対して学生が応募する従来型の就活スタイルとは異なり、学生がそのサイトに自分の強みや学生時代にやってきたことなどのプロフィールを載せ、それを見て魅力を感じた企業側からその学生にアプローチをするというスタイルの採用サイトです。

アベノミクス以降、2012年あたりから続く超売り手市場の中、従来の求人サイトで募集をかけても、学生からの応募が十分に得られない企業(主に知名度の低い企業、不人気の企業、中小企業)が増えていることがこうした逆求人サイトの誕生や普及の背景にあります。

逆求人サイトとして有名なものとして、OfferBox、キミスカ、doda キャンパスなどがあります。

■企業側が学生を接待することも

逆求人サイトの中でも大変ユニークなものとして、ビズリーチが運営する「ニクリーチ」というものがありました。

これは「就活生と企業をお肉で繋ぐサービス」というコンセプトで、スカウトがきた就活生は企業から焼肉を奢ってもらえ、企業の人事担当者と交流できるというものです(ただし、2015年に始まったこのサービスは、コロナ禍の2020年7月30日に終了)。

就活生が焼肉をご馳走になりながらその企業の話を聞くことができる--まるでバブル期を彷彿とさせる、いや、それ以上のダイヤモンドの卵っぷりと言えます。

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同世代の人口が多いので競争も激しく、加えてバブル崩壊によって景気も悪く、就職やバイトの状況が恵まれていなかった「ポスト団塊ジュニア」(1975〜82年生まれ)の私は、いつもZ世代の話を聞いて、羨ましく思ってしまいます。

ただし、新型コロナの感染が広まってから急に、「バイトの面接って、どんなバイトでも基本的には落ちることはないものだと思っていましたが、コロナになってから周りで落ちる友達が増え、本当に驚きました」といった発言をZ世代の学生たちからたくさん聞くようになっています。また、前述したように、新型コロナによって第三次就職氷河期が生じる可能性もあるので、今後、少し状況が変わっていく可能性がある点は留意しなくてはいけません。

■「ガラケー第一世代」と「スマホ第一世代」の違い

「ゆとり世代」の特徴の一つとして、思春期から携帯電話を持ち始めた最初の世代であり、それによって「同調圧力」が強くなった、というものがありますした。

ここで重要なのは、「ゆとり世代」は確かに「携帯電話第一世代」ですが、もっと厳密に言うと「ガラケー第一世代」である、という点です。

一方、Z世代は、1台目からスマホを持っている「スマホ第一世代」です。

思春期から携帯電話を持ち始めた、という点でこの二つの世代は共通していますが、実はこの思春期から「ガラケー」か「スマホ」かの違いこそ、この二つの世代を似て非なるものに特徴づけているのです。

■強すぎる「自己承認欲求」「発信欲求」

SNSの先駆けであるmixiを使いこなしていた若い頃の「ゆとり世代」は、「新村社会」や「mixi八分」というキーワードが示すように、SNSに大変翻弄されていました。

原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)

しかしZ世代は、LINEに「ブロック機能」(つながった人を遮断し連絡が取れないようにする機能)があったり、ツイッターやインスタグラムに「鍵機能」(承認した人しか自分のページを見られないようにする機能)があったり、インスタグラムに「親しい友達機能」(自分が投稿したものを親しい友達にしか見せないようにする機能)があったりして、嫌な人と極力関わらなくて済んだり、自分の伝えたい人だけに伝えたい情報を伝えられるようになりました。

そのため、「ゆとり世代」のように、大して親しくない人や嫌いな人とも関わり、出る杭にならないように、陰口や噂話を流されないようにと「新村社会」の過剰な「同調圧力」に押し潰されるケースは減ってきています。

もちろん、たくさんの人とSNSでつながっている状況自体は「ゆとり世代」の時と変わらないので、新村社会が全くなくなったわけではありませんが、周りの顔色をうかがって怯えるというより、自己ブランディングのために何を発信するか、ということに頭を割くようになった、という点が大きな違いです。

SNS上で叩かれたくないという「同調圧力」と「防御意識」が強かった思春期時代の「ゆとり世代」と、周りからの心象が悪くならない範囲で、SNS上で周りと同程度に自己アピールしたいという「同調志向」と「発信意識」が強いZ世代――。このように説明すると、この2世代の似て非なる特徴の違いが示せるかもしれません。

■離職も就職もバイトも「連れション」するZ世代

日々、Z世代の高校生や大学生と接している中で、私も彼らの同調志向を感じることがたくさんあります。

例えば、私の仕事を手伝ってくれている学生たちとのLINEグループの中で、私が「皆に質問! 今年のハロウィンはどんなコスプレが流行ると思う?」と書き込んでも、多くの場合、誰からも返信がありません。きっと面倒くさかったり、最初の一人になるのが嫌だったりするのだと思います。ところが、一人が返信すると、雪崩を打ったように多くの子が返信を始めるのです。

一人の若手社員が辞めると、他の若手社員もそれに触発されて辞める……こういった「連れション離職」も、全国の企業で増えているという話をたくさん聞きます。逆に「連れション就職」や「連れションバイト」も増えているようです。

最近私は、彼らの同調志向を利用し、一人のサクラの学生にLINEグループへの返信をお願いすることで、他の学生の返信意欲を刺激するようにしていますが(笑)、学校や企業サイドの方も、この同調志向を利用して彼らを動かすのがよいと思います。

TikTok For Business Japan の「Z世代白書2020」(24歳までをZ世代と定義)によると、「動画を見て気になることがあったらコメントを見てしまう」(Z世代56.1%、25歳以上37.2%)、「動画や投稿を見たらとりあえずコメントを確認してしまう」(Z世代61.4%、25歳以上27.0%)などの項目でZ世代の数値が高く、彼らが他の人が書き込むコメントをかなり気にしており、上の世代より同調志向が強いであろうことが想像できます。

※出所:原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)

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原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平)