マルチプレイヤーでバトルロイヤルを楽しむパーティーゲーム「Fall Guys: Ultimate Knockout Game」には、小学校の運動会や、近所の仲間と遊ぶ旗取りゲームのようなところがある。大騒ぎする楽しさはあるが、どこか悔しさがにじむのだ。

「最大60人で対戦する「Fall Guys」は、ゆるい雰囲気ながら真剣勝負のバトルロイヤルだ:ゲームレヴュー」の写真・リンク付きの記事はこちら

誰もが参加賞をもらえるゲームを勝ち抜いた真の勝者はアイスキャンディを舐めながら、こんな気分にさせられるのだ。自分が勝ったのは大した勝負じゃなかった…と。

このほどSteam版とPlayStation 4版でリリースされた「Fall Guys」は、60人のプレイヤーが数々のミニゲームを戦うゲームだ。ミニゲームで競ううちにプレイヤーが次々に脱落していき、最後まで残った1人が勝者となる。

丸っこくてかわいい小さなアヴァターたちが、「SASUKE」風の障害物コースで味方チームのゴールにタマゴを集めたり、危なっかしいシーソーから落ちないようにバランスをとったり、スライムに追いつかれないよう逃げたりといった、誰でも遊べる20種類以上のミニゲームをプレイする。そして最終ステージを目指して競い合うのだ。負けると次のステージには進めない。

バックグラウンドでは、にぎやかな感じの音楽が鳴り響く。ミニゲームごとにレヴェルアップに必要な「名声」というポイントや、「Kudos」と呼ばれる通貨がもらえる。この通貨で、パイナップルのスーツや渦巻状のストライプ模様のスキンなどを購入できる。優勝すると「クラウン」を獲得できるので、それをもっと魅力的な着せ替えアイテムと交換することも可能だ。

激しい真剣勝負のゲーム

見方によっては、激しい真剣勝負のゲームだとも言えるだろう。どのミニゲームも、息をするのを忘れてしまいそうな緊迫感がある。ジャンプのタイミングが悪かったり、回転する巨大ビームを避けられずお腹に当たったりすると、すぐにマップから放り出されてしまうのだ。自分は傾いたシーソーから滑り落ちてしまったのに、ほかのプレイヤーがフィニッシュラインを通過するのを見ると、イライラしてしまうかもしれない。

空間認識能力、反射神経、戦術。この3つすべてが必要であることは間違いない。ゲームの見た目がキュートなこともあって、負けたら自分が相当にダメな人間のように思えてしまう。ところが、3ラウンド、4ラウンドと生き延びると、アスリートのような気分になってくる。とはいえ、見た目は海賊の衣装を着た丸っこい生き物である。

そこまで必死になって遊びたいわけではないなら、「大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ」の8人同時プレイに全アイテムを使いながら参加している10歳になった気分で遊ぶといい。

人気ストリーマーも夢中に

ゲームの世界では、この4年ほどでバトルロイヤル系シューティングゲームのリリースが相次ぎ、サヴァイヴァルゲームを愛するゲーマーたちの間にも倦怠感が広がり始めていた。例えば、「PlayerUnknown’s Battlegrounds」や「フォートナイト」、ユービーアイソフトの最新作「ハイパースケープ」といった具合だ。

拡張クイックドローマガジンやフィールド・アップグレードといったアイテムが定期的に出てくるようなシリアスすぎるゲームがひしめくなかで、脱線したようなばかばかしい感じのサヴァイヴァル&バトルロイヤルゲームである「Fall Guys」は、喜んで迎えられた。勝つためには明白なスキルが必要な点もいい。そして勝者が見せびらかすのは「すごい点数」ではなく、完璧にくだらない感じのコスチュームなのだ。

それが、このゲームがTwitchで爆発的な人気を博した理由のひとつだろう。「Fall Guys」は現時点でTwitchで最も多く視聴されたゲームとなっており、一時は同時視聴者数が42万7,000人を超えたこともあった。

この流れには、「Lirik」ことサキブ・ザヒードなどのハードコアなシューティングゲームで経験を積んできたストリーマー(配信者)たちも乗り、スライムの海に落ちて夢中で声を上げたりしている。「xQc」ことフェリックス・レンジェルなども、発売日の午後には勝利した回数(18回)や連勝回数(1回)を掲げていた(人気の理由としてはもうひとつ、期間限定でベータ版のゲームキーを配布するというデヴェロッパーの戦略も功を奏したと、ゲームメディアの「Kotaku」は報じている)。

ゲームをストリーミングしたザヒードは、アナウンサー風の声でこう語っていた。「こちらの集中力、スピード、柔軟性が試されるゲームですね! こちらとしては、相手のメンタルや思考を試しますよ」「さて、わたしたちはサンドイッチみたいに行きましょう。二重の長方形のなかを進みながら、傷だらけの宇宙飛行士と闘い、苦痛のドーナツに入り込むんです」

いまの時代に合ったゲーム

恐らく、サヴァイヴァルゲームで最も物を言うのは根性だろう。何度も繰り返し挑戦し、連発される障害物やほかのプレイヤーが生み出すカオスにまみれても、平静を保つ能力だ。根性は、しばしばスキルよりも簡単に身に付けやすいものだが、Fall Guysのばかばかしいチャレンジにおいてはスキルと同じくらい役に立つ。

つまりFall Guysでは、チャレンジは何度か失敗すればコツがつかめてくるものの、ほかのプレイヤーたちも一緒にコツをつかんでくるので、クリアするのがどんどん難しくなってしまうのだ。風船みたいな物体やキャンディーみたいなハンマーに押し戻されても、前進あるのみ。それは「敵の頭を撃つ」なんて目標よりもずっと平等主義的だし、シリアスでもない。

Fall Guysは人気のあまり、発売当日にサーヴァーに深刻な問題が発生してしまい、PS4版でのアカウント作成とPC版でのマッチメイキングを無効にする事態に陥ってしまった。バトルロイヤルゲームのなかでも、プレイヤーに特に歯がゆい思いをさせる特性を幅広く取り込んだ本作は、いまの時代に合ったゲームとしてしばらく人気を博しそうだ。

※『WIRED』によるゲームのレヴュー記事はこちら。