コロナ貧困、さらに追い詰められる非正規労働者たち

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 新型コロナの影響が、過去に例のないスピードで拡大している。自粛、休業、感染リスク……今は全国民が何かしらの影響を受けている状況だが、なかでも大きな被害を受けているのが、以前からギリギリの暮らしを続けていた生活困窮者たちだ。元から脆弱だった生活基盤が、一気に崩壊しかけている。

◆追い詰められる生活困窮者たち

 生活困窮者支援を長く続けてきた自立生活サポートセンター「もやい」理事長の大西連氏が話す。

「支援現場ではさまざまな問題が噴出している状況で、連日、相談が後を絶ちません。特に日雇いで食いつないでいた人やフリーランス、自営業者からの相談が多く、新型コロナの影響で仕事や住居、生活が失われて『明日生きるためのお金すらない』という人が、急速に路上に追いやられています」

 新型コロナによる景気悪化では、飲食業をはじめサービス業やイベント関係の業種が軒並み大打撃を受けた。それはつまり、日雇いバイトなどこれまで生活に困る人がすがっていた仕事が、ほぼ消滅したことを意味する。

「日雇いバイトなどは完全になくならずとも、大幅に減っているので競争倍率が相当高くなっています。上流から人材が流れてきている状態なので、年齢や職歴など、弱い立場の人から“ところてん式”で押し出されてしまう。そうして仕事にあぶれた人たちは貯金もなく、今までのように“つなぎの生活費”を稼ぐこともできないので、生活が一気に苦しくなってしまう」

 さらに追い打ちをかけたのが、緊急事態宣言と、それに伴う自治体による休業要請だ。ネットカフェやサウナなどを寝床にしていた人たちがあぶり出され、「東京都だけで約4000人のネットカフェ難民が行き場を失う」と、大問題になった。東京都も対応すべく借り上げホテルなどを用意すると発表したが、実際には「無料低額宿泊所」と呼ばれる大人数で劣悪な相部屋に泊まる施設に案内されるケースが頻発。福祉団体からの要請もあり、個室を用意すると方針を変える事態になった。

「一番の問題は、今後の見通しがまったく立たないこと。一時しのぎの宿や生活費を得たとしても、新型コロナの終息が見えないので、いつ前の仕事や生活に戻れるかわからない。結局は生活保護にたどり着くしかなく、今後は申請数がどんどん増えていくはずです」

◆正社員はそのままで非正規だけが全員解雇

 また、労働環境に関する問題も急増している。労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」では、新型コロナ関連の相談が直近1か月で1000件を超えたという。代表の今野晴貴氏が語る。

「やはり多いのは非正規労働者からの相談で、約8割を占めます。内容は『休業補償や補助金』に関する相談が最も多く、次いで『雇い止め』や『感染リスクが高い職場での労働』が続く。最近では、コールセンターで働く人などから“3密環境”で出勤を強要されているといった相談も増えています」

 新型コロナは日本が抱える正規/非正規の格差という問題を、改めて浮き彫りにしたと言える。

「相談内容のなかには『正社員だけが休業補償の対象で、非正規は欠勤扱いで減給される』や『非正規社員だけが全員解雇になった』というものもありました。結局、急激な景気悪化のしわ寄せが弱い立場の人にいっている形です」

 では、今後はどのようなシナリオが予想されるのだろうか。

「直近の問題としては、5月から休業補償のトラブルが増加すると思います。4月の休業分は5月の給料に反映されますが、正規/非正規を問わず、『休業手当がどの程度給料に反映されるのか』をわからずに休んでいる人たちが多い。多くは6割補償だと思いますが、体力がない企業ではゼロというケースも出てくるでしょう。すると、6月以降になって急に生活が破たんする人が出てきてしまう」

 また、「大量解雇も加速しそうだ」と続ける。

「もともとコロナショック以前から『45歳以上が対象の早期退職募集』が増えていました。社内の年齢構造を調整したい企業が今回の景気悪化を利用して、リストラを加速させる……というのは容易に想像できるシナリオです」

 コロナショックが生む貧困は非正規だけの話ではなく、正社員にも他人事ではない。明日は我が身と、真剣に受け止めてもらいたい。

【「もやい」理事長・大西 連氏】
新宿ごはんプラス共同代表。日本国内の貧困問題や、生活困窮者への相談支援活動などに取り組む。著書に『絶望しないための貧困学』(ポプラ社)など

【「POSSE」代表・今野晴貴氏】
年間3000件以上の労働や生活相談に関わり、福祉政策についても提言している。著書に『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(集英社新書)など

<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!4月28日発売号の特集「[緊急ルポ]コロナ貧困の絶望」より

―[コロナ貧困の絶望]―