海外メディアが見た東京マラソンとは【写真:荒川祐史】

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新型コロナウイルスの影響で規模縮小、米紙は観戦自粛促す看板の画像を公開

 残り1枠の東京五輪代表切符を争う東京マラソンが1日に行われ、日本記録保持者・大迫傑(ナイキ)が自らの日本記録を21秒更新する2時間5分29秒の4位でフィニッシュした。東京五輪代表に大きく前進。好記録が多く盛況に終わったが、新型コロナウイルスが蔓延する中で開催された。沿道の応援も自粛を要請された異例のレースに、海外メディアが注目し「不気味」と報じている。

東京マラソンを見に行く時のあいさつ『観戦はお控えください』」

 こう記し、ツイッターに1枚の画像を投稿したのは米紙「ウォールストリートジャーナル」で日本編集委員を務めるアラスター・ゲイル氏だった。画像では、駅の構内らしきところで青色の上着をまとった大会スタッフが「観戦はお控えください」と書かれた看板を掲げている。投稿のコメントには「最近見た中で最も不気味なものだった……」と海外ファンの声がつづられている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、一般ランナーの参加を取りやめてエリートの部約200人の参加という措置をとって行われた大会。応援自粛の要請があったが、雷門前などマスク姿で声援を送る人が多く集まった。例年100万人規模の人が集結する国内最高峰レース。主催財団の集計では例年の10分の1以下となる7万2000人のファンがいたという。

 レース中も東京駅近辺で観戦自粛を促す看板と立て、沿道でもスタッフが自粛を呼び掛けるように声掛けしていた。異例の状況で開催され、同紙は「日本がコロナウイルスから五輪を守る孤独なマラソンを走った」の見出しで記事を掲載。「スタッフが『観戦はお控えください』と書かれたサインをコース沿いで持っていた。アスリートは閑散とした通りを走った」と紹介している。さらにこう続けられている。

「五輪へ向けた重要な準備の一部になるはずだった。しかし、必要最低限に抑えられた東京マラソンは日本が直面しているコロナウイルスの流行から2020年の夏季五輪を救う挑戦を示した」

豪メディアは沿道ファンの言葉を報道「東京五輪だったら悲しい風景だ」

 出場ランナーだけでなく、ボランティアスタッフの数も最小限にして行われた。米FOXニュースは「東京マラソンはコロナウイルスへの恐怖の中で、閑散とした通り、『観戦自粛』を求めるサインが大きく取り上げられた」と紹介。英紙「デイリー・メール」でも「コロナウイルスの恐怖の中で、東京マラソンはエリートランナーのみで開催された」と記して注目している。

 豪メディア「news.com.au」は「会場が制限された不気味な現場とファンが自宅に留まるよう呼びかけられた東京マラソン」の見出しを打った。「東京マラソンはコロナウイルスへの恐怖の中、観客と一般ランナーに自宅に留まるよう呼びかけられ、閑散とした通りで行われた」と記している。そして、沿道のファンの声を伝えている。

「毎年、大道芸や文化ベントとともにレースはお祭り気分で行われていた。しかし、数が劇的に減り、ほとんどがマスクをつけた観衆が見守る中、不気味な静けさに包まれたレースには、今年は170人のランナーと30人の車いすランナーが参加したのみだった。『もしも五輪がこんなだったら、悲しい風景だ』と68歳の靴職人ヒロシ・エノモトは語った。彼は浅草の沿道からランナーに声援を送る一握りの観衆の一人だった」

 レース後の会見で主催財団の大森文秋事務局長は「エリートの部は必要な感染症対策を講じた上で開催可能と判断した」と説明していた。異例のレースは海外でも珍しいようだった。(THE ANSWER編集部)