オダギリジョーは阪本順治監督の「一番大切な俳優」
俳優のオダギリジョーと阪本順治監督が30日、有楽町朝日ホールにて、第20回東京フィルメックスの特集上映『この世の外へ クラブ進駐軍』Q&Aトークショーに出席。阪本監督は、本作をはじめ『人類資金』や『エルネスト』で一緒に仕事をしたオダギリに対して「一番大切な俳優です」と最大級の賛辞を贈った。
映画『この世の外へ クラブ進駐軍』は、敗戦国となった日本がアメリカ文化を受け入れながら再生していく姿を、5人の若きジャズメンの姿を通して描いた物語。オダギリは、ジャズバンド「ラッキーストライカーズ」でドラマー志望の池島昌三を演じている。
2004年に公開されて以来、ほぼ15年ぶりに作品を鑑賞したというオダギリは「昨日のことも忘れてしまう人間なので、ほぼ初めてという感覚で映画を観ることができました」と語ると「良くできた映画ですよね。すごいなと思いました」と出来を称賛する。阪本監督は「僕らの世代の人間が戦後のこの時代を描くことはとても度胸のいること」とかなりの覚悟で臨んだことを明かすと、「藤山寛美さんが『敗戦処理をしていたときが一番平和だった。防空壕に入ることなく、逃げ回ることもなかったから』と話していたのが印象に残っていて、平和じゃないけれど、次のステップにいく時期なんだという思いを込めてやらせてもらっていました」と撮影当時を振り返った。
阪本監督とオダギリはこれまで何度もタッグを組んでいる。中でも阪本監督は『エルネスト』での撮影が印象に残っているようで「マネージャーも同行せず、キューバで少人数の撮影を行いました。かなり過酷な撮影でしたが、しっかりと映画をやり切ってくれた。僕にとって一番大切な俳優です」と賛辞を贈る。しかし、すぐに「そんなことを言うと佐藤浩市が怒りそうだな」と、同じく阪本作品に数多く出演している佐藤を引き合いに出して観客を笑わせた。
阪本監督の言葉に照れ笑いを浮かべていたオダギリだが、今年9月に公開された『ある船頭の話』では長編映画監督デビューを果たした。阪本監督について「役者として思うところと、映画監督として見る思いが二つあります」とオダギリは話し始めると「とにかく自分に厳しい方。自分が映画を撮っているときも、常に阪本監督の妥協しない姿勢が脳裏から離れませんでした。初心を思い出させてくれる存在です」と敬意を表していた。
さらなるタッグを期待する声に、阪本監督は「オダギリくんとやるなら、一瞬たりともスキを見せられないものがいい。またどこか(撮影が)困難な国に行くんじゃないですかね」と予言すると、「オダギリくんの映画で助監督をやりますよ」と発言。オダギリは恐縮しつつ「僕が映画を撮っているときも、撮影現場に遊びに来てくれたんですよね」と親交の深さを明かしていた。(磯部正和)