ミスをした部下には言い訳をさせろ! モチベーションを高める「叱り方」とは?
部下の育成は上司にとって一番の仕事だろう。しかし今、どのようにコミュニケーションを取ったらいいのか、どうすればモチベーションを高めることができるのか分からない、と部下とのコミュニケーションに悩む上司は多い。
特に問題なのが「叱り方」だ。一時代前の説教タイプの叱り方は「パワハラ」と受け取られてしまう可能性もあり、どのように部下に改善してもらうか悩ましいところだ。
そこで、『嫌われずに人を動かす すごい叱り方』(光文社刊)を著した人材育成コンサルタントの田辺晃氏にお話をうかがい、最新型の「叱り方」について話を聞いた。
今の「叱り方」は「ほめる」「認める」「言い訳を聞く」ことが大事だと語る田辺氏。目からウロコの部下のマネジメント方法とは?
(新刊JP編集部)
■ただ叱って反省を促すのではない、21世紀型の「叱り方」とは?
――『嫌われずに人を動かす すごい叱り方』は、「叱る」という行為のイメージを塗り替える一冊です。まず、田辺さんが本書のような「叱り方」に行き着いた経緯を教えていただけますか?
田辺:私自身、今ではセミナーでコーチングについてお話させていただいたりもしていますが、会社員時代はコミュニケーションが苦手で、部下との関わり方も自分本位でした。
その中で、あるきっかけでコーチングやNLP心理学を勉強するようになり、また縁あって当時勤務していたTOTOの人材育成部門に異動になりました。そこで自分のコミュニケーションがいかにダメだかを痛感しまして(苦笑)、学んだことを実際に研修や面談などで実践して行ったたんです。
――本書の「叱り方」はTOTO人事時代に原点があるとお聞きしましたが。
田辺:そうです。初級管理者向けの講習で、「部下の望ましくない行動を是正する対話」というロールプレイがあるのですが、それがこの本の叱り方の出発点です。
その後独立し、とある大阪の大手研修会社さんから「ほめ方、叱り方の研修をしてほしい」と頼まれまして、その研修を担当させて頂く中で、研究をしていた「叱り方」を4年間、お伝えさせて頂きました。
そのノウハウをまとめたのが前著の『叱らないで叱る技術!』だったのですが、少し内容が硬めだったため、今回はもっと分かりやすい「叱り方」の入門編を書いたということです。
――叱る立場にある人たちの共通の悩みの一つとして、「どう叱ればいいのか分からない」というものがあります。最近は、叱ったことでSNSを通して復讐され、炎上するというようなリスクまで考えないといけないように思うのですが、その点についてはいかがですか?
田辺:SNSでの炎上については、「SNSに投稿されるかもしれない」と心配しなければいけないような状況にしないということが必要でしょうね。
上司の役割の一つは基本的なルールや動き方を教えることです。新入社員に対しては特にそうですね。彼らは何も知らないと思った方がよくて、「これくらい常識でしょう」と考えて教えないのはNGです。
職場や会社についての情報はSNSにアップしてはいけないことは、社会人にとっては常識だと思いますが、それもしっかり伝えないといけません。ただ、「これは絶対に禁止だ!」と型に押し込めるのではなく、最低限のマナーとして伝えることが大切です。
私は型に押し込める指導の仕方はあまり良くないと考えています。そうではなく、部下の多様性や個性を尊重しつつ、ルールは守ってもらうという部分を普段から徹底する。そうすればSNSでの炎上を恐れるような事態にはならないと思います。
――本書では、これまでの「叱る」のイメージとは一線を画す「叱り方」を提唱されています。
田辺:私がこの本で伝えたいと思っている「叱り方」は、信頼関係を築き上げることを目的としたコミュニケーションです。世の中の「叱る」ということに対するイメージは「怒鳴って屈服させる」「説教をして言い聞かせる」というものだと思いますが、実際そうしてもあまり意味はありません。
――田辺さんのメソッドには「認める」「ほめる」ことも「叱る」の中に入っていますね。
田辺:そうです。その2つは必要不可欠ですね。あともう一つポイントがあって、部下に言い訳させることも重要です。
――言い訳させるのはなぜですか?
田辺:私の管理職向け研修のロールプレイの中でも、問題を起こした部下に対して「今回はこういうことがあったけれど、これは良くないよね。次からはこうしてほしい」と自分の考えだけ伝えて終わりというケースを見かけるんですね。
でも、こうすると、叱られる立場は納得している、していないに関わらず「はい、わかりました」としか言えません。つまり、一方的に伝える「説教」にしかならないんです。
部下には、部下自身の言い分や考えがあるはずです。それは言い訳に聞こえるかもしれません。しかしそれは、コップの中を満杯に満たした水のようなものです。その状態で、新しい水を注いでも、新しい水はコップには入りません。溜まっていた水をまずは吐き出させ、コップを空にして、そこに新しい水を注ぐ必要があるんです。これが相手に話させる、言い訳させるということです。
――なるほど。
田辺:部下の問題を是正するためには、相手の言い分もしっかり聞いて、状況を整理して分かってもらうことが大事です。ミスのほとんどのケースは意図せずに起きてしまうものですし、当事者にとってやむを得ない判断をしているものもあるでしょう。そこは汲み取らないといけません。
――ただ、「ほめる」「言い訳を聞く」というフローを噛ませると、部下は反省しないのではないかと考えてしまいそうです。
田辺:いや、そうならないと思いますよ。本書にも書いていますが、ミスをしたことや起きていることの客観的事実についてはちゃんと指摘します。
普段の業務をちゃんと頑張っているならば、それはどんどんほめるべきです。仮にそれで部下が調子に乗って周囲に迷惑をかけたりすることがあれば、「君がいてくれてとても助かっているけれど、こんな問題が起きているよね。僕には君がちょっと調子に乗ってしまっているように見えるのだけど、どうだい?」と指摘すればいいんです。ちゃんと伝えれば自分で考えてくれるはずですよ。
――今おっしゃられたように、客観的事実を抜き出してそれを指摘することは大事です。「叱る」と人格攻撃を混同している人も少なくないですよね。
田辺:そうですよね。「ダメな上司の叱り方」の章にも書いていますが、屈服させて従わせることを「叱る」と勘違いしている人も多いんです。ただ、それでは効果がないんです。
――働き方改革は生産性を上げることが一つの目的です。この叱り方のマネジメントは、部下のモチベーションを上げてチームの生産性を高める手法ですよね。相手を委縮させるとその目的とは真逆にいってしまう。
田辺:おっしゃる通り、何のための叱るのかという目的を定めて叱っている人は少ないですね。
(後編は5月7日に配信予定)
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今の「叱り方」は「ほめる」「認める」「言い訳を聞く」ことが大事だと語る田辺氏。目からウロコの部下のマネジメント方法とは?
(新刊JP編集部)
■ただ叱って反省を促すのではない、21世紀型の「叱り方」とは?
――『嫌われずに人を動かす すごい叱り方』は、「叱る」という行為のイメージを塗り替える一冊です。まず、田辺さんが本書のような「叱り方」に行き着いた経緯を教えていただけますか?
田辺:私自身、今ではセミナーでコーチングについてお話させていただいたりもしていますが、会社員時代はコミュニケーションが苦手で、部下との関わり方も自分本位でした。
その中で、あるきっかけでコーチングやNLP心理学を勉強するようになり、また縁あって当時勤務していたTOTOの人材育成部門に異動になりました。そこで自分のコミュニケーションがいかにダメだかを痛感しまして(苦笑)、学んだことを実際に研修や面談などで実践して行ったたんです。
――本書の「叱り方」はTOTO人事時代に原点があるとお聞きしましたが。
田辺:そうです。初級管理者向けの講習で、「部下の望ましくない行動を是正する対話」というロールプレイがあるのですが、それがこの本の叱り方の出発点です。
その後独立し、とある大阪の大手研修会社さんから「ほめ方、叱り方の研修をしてほしい」と頼まれまして、その研修を担当させて頂く中で、研究をしていた「叱り方」を4年間、お伝えさせて頂きました。
そのノウハウをまとめたのが前著の『叱らないで叱る技術!』だったのですが、少し内容が硬めだったため、今回はもっと分かりやすい「叱り方」の入門編を書いたということです。
――叱る立場にある人たちの共通の悩みの一つとして、「どう叱ればいいのか分からない」というものがあります。最近は、叱ったことでSNSを通して復讐され、炎上するというようなリスクまで考えないといけないように思うのですが、その点についてはいかがですか?
田辺:SNSでの炎上については、「SNSに投稿されるかもしれない」と心配しなければいけないような状況にしないということが必要でしょうね。
上司の役割の一つは基本的なルールや動き方を教えることです。新入社員に対しては特にそうですね。彼らは何も知らないと思った方がよくて、「これくらい常識でしょう」と考えて教えないのはNGです。
職場や会社についての情報はSNSにアップしてはいけないことは、社会人にとっては常識だと思いますが、それもしっかり伝えないといけません。ただ、「これは絶対に禁止だ!」と型に押し込めるのではなく、最低限のマナーとして伝えることが大切です。
私は型に押し込める指導の仕方はあまり良くないと考えています。そうではなく、部下の多様性や個性を尊重しつつ、ルールは守ってもらうという部分を普段から徹底する。そうすればSNSでの炎上を恐れるような事態にはならないと思います。
――本書では、これまでの「叱る」のイメージとは一線を画す「叱り方」を提唱されています。
田辺:私がこの本で伝えたいと思っている「叱り方」は、信頼関係を築き上げることを目的としたコミュニケーションです。世の中の「叱る」ということに対するイメージは「怒鳴って屈服させる」「説教をして言い聞かせる」というものだと思いますが、実際そうしてもあまり意味はありません。
――田辺さんのメソッドには「認める」「ほめる」ことも「叱る」の中に入っていますね。
田辺:そうです。その2つは必要不可欠ですね。あともう一つポイントがあって、部下に言い訳させることも重要です。
――言い訳させるのはなぜですか?
田辺:私の管理職向け研修のロールプレイの中でも、問題を起こした部下に対して「今回はこういうことがあったけれど、これは良くないよね。次からはこうしてほしい」と自分の考えだけ伝えて終わりというケースを見かけるんですね。
でも、こうすると、叱られる立場は納得している、していないに関わらず「はい、わかりました」としか言えません。つまり、一方的に伝える「説教」にしかならないんです。
部下には、部下自身の言い分や考えがあるはずです。それは言い訳に聞こえるかもしれません。しかしそれは、コップの中を満杯に満たした水のようなものです。その状態で、新しい水を注いでも、新しい水はコップには入りません。溜まっていた水をまずは吐き出させ、コップを空にして、そこに新しい水を注ぐ必要があるんです。これが相手に話させる、言い訳させるということです。
――なるほど。
田辺:部下の問題を是正するためには、相手の言い分もしっかり聞いて、状況を整理して分かってもらうことが大事です。ミスのほとんどのケースは意図せずに起きてしまうものですし、当事者にとってやむを得ない判断をしているものもあるでしょう。そこは汲み取らないといけません。
――ただ、「ほめる」「言い訳を聞く」というフローを噛ませると、部下は反省しないのではないかと考えてしまいそうです。
田辺:いや、そうならないと思いますよ。本書にも書いていますが、ミスをしたことや起きていることの客観的事実についてはちゃんと指摘します。
普段の業務をちゃんと頑張っているならば、それはどんどんほめるべきです。仮にそれで部下が調子に乗って周囲に迷惑をかけたりすることがあれば、「君がいてくれてとても助かっているけれど、こんな問題が起きているよね。僕には君がちょっと調子に乗ってしまっているように見えるのだけど、どうだい?」と指摘すればいいんです。ちゃんと伝えれば自分で考えてくれるはずですよ。
――今おっしゃられたように、客観的事実を抜き出してそれを指摘することは大事です。「叱る」と人格攻撃を混同している人も少なくないですよね。
田辺:そうですよね。「ダメな上司の叱り方」の章にも書いていますが、屈服させて従わせることを「叱る」と勘違いしている人も多いんです。ただ、それでは効果がないんです。
――働き方改革は生産性を上げることが一つの目的です。この叱り方のマネジメントは、部下のモチベーションを上げてチームの生産性を高める手法ですよね。相手を委縮させるとその目的とは真逆にいってしまう。
田辺:おっしゃる通り、何のための叱るのかという目的を定めて叱っている人は少ないですね。
(後編は5月7日に配信予定)
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