「忘れること」「ブレないこと」資産運用で最後に勝つためのアドバイス
「老後のお金」について不安を持ったことがない人は今やほとんどいないはず。
会社を定年退職してから年金受給年齢までをどうやりくりするかという問題もあれば、そもそも暮らしていけるだけの年金がもらえるのかという問題もある。
だからこそ、今のうちに将来のお金の「仕込み」をしておきたい。『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版刊)の著者、太田創氏はそのための確実な手法として「米国株を対象にした積み立て型投資信託」を提唱している。
その太田さんに、なぜ今「米国株」なのか、そして氏が「米国一本に投資を」と呼びかける理由は何なのかを聞くインタビューの後編は、長期投資での資産運用で注意すべきポイントについてお話をうかがった。
(インタビュー前編を読む)
■今買うべき投資信託の条件は…
――投資信託でいえば手堅く資金を増やすなら日本株、ハイリスクを承知でリターンを追うなら新興国というイメージがあり、米国株は盲点になっている気がします。
太田:そうかもしれません。テーマ型で米国株式市場で運用する商品はありますが、米国株式のみに投資する投資信託自体、実は日本では少ないですしね。
今は「積み立てNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」など、非課税のサービスもありますから、積み立て投資を始める環境としては最高です。投資を始めるとわかることですが、非課税をエンジョイできるというのはものすごく大きなことなんです。
――同じように米国の株式に投資するにしても、個別銘柄ではなく投資信託にすべし、とされていました。個別銘柄を精査したうえで購入し、長期に保持するという手法はあまりお勧めではないのでしょうか。
太田:米国の企業の個別銘柄を買うというのはかなりハードルが高いと思っています。一般の人はフェイスブックやアップルなど本当に有名な企業は知っていても、それ以外となるとほとんど知らないはずですし、基本的に情報収集は英語です。
米国株の個別銘柄自体は日本でもネット証券で買えるのですが、手数料を取られますし、外国有価証券の口座を作らないといけませんし、取引時間は日本の夜だし、何かと面倒なんです。
取引時間については指値をしておけば、指定の金額で取引できるのですが、そこまでやる人はもう「マニア」でしょう(笑)。
――米国株式の投資信託にも種類があり、どういう商品に投資すればいいのかは悩みどころです。どんな視点で商品を選んでいけばいいのでしょうか。
太田:まずは「米国株に投資する投資信託」。さらに運用コストが安いというのが条件になります。具体的には手数料はゼロで、信託報酬は0.3%以下。モーニングスターなどの専門サイトに行ってこの条件で検索をかければすぐ出てきます。
その中でも現時点で一番有利なのが、本にも書いた「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」という銘柄です。信託報酬率(運用コスト)が年率0.1728%(税抜 年率0.160%)以内で30年間運用可能なのが強みで、つみたてNISAなどの非課税口座ならなお良しですね。
――私は投資未経験者なのですが、本書で推薦されているファンドを買う時に窓口で何と言えばいいのでしょうか?
太田:今はオンライン証券で買えてしまうのですが、もし金融機関の窓口で買うのであれば、例えば「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はここで積み立てで買えますか?」と聞いてみるのがいいと思います。
ただ、銀行ではほとんど勧めていないと思います。販売手数料や信託報酬が低いから、彼らは売りたがらないんです。だからオンラインで購入する方が確実です。窓口だと「もっといいものがありますよ」といって別の商品を勧められてしまうこともあるでしょうし。
――資産運用全般についてのアドバイスもいただきたいのですが、今のお話を踏まえるとまずは窓口で勧められる商品は買うなと。
太田:それでいいと思います。業界関係者には怒られてしまうかもしれませんが、窓口担当者を凌駕する投資知識を持っている人以外は、よほどのものじゃない限り窓口で勧められる金融商品は買わない方がいい。厳しいようですが、金融商品を購入する方は必ず自分で調べる習慣をつけていただきたいです。
知識が十分ないままに窓口で勧められたら人は弱いです。少なくとも窓口に行くということは、窓口担当者が推奨する金融商品を買わされる可能性が高いわけですから。これは電化製品など一般消費財をお店で買う時と一緒で、最低限必要な情報は調べますよね。例えば、掃除機を買う場合、吸引力が強いのか弱いのか、うるさいのかうるさくないのか、など。
――他にアドバイスはありますか?
太田:今回の本で取り上げている4本の投資信託についても言えますが、積み立て投資を始めたら、まずは投資信託の値段である「基準価額」を見ないことですね。自分の持っている投資信託が今いくらになったのか気になるところではありますが、あえて見ない。そんなものないかのように毎日を過ごして、淡々と毎月3万円、30年間積み立てるのが一番大事なことです。
あとはブレないこと。仮想通貨やシェアハウス投資等もそうでしたが、金融とか投資の世界はトレンドになるものが次々に出てくるものです。そういうものには興味を示さない。きちんと積み立ていればそれで充分ですし、儲け話に飛びつくよりも仕事をがんばって給料を増やす方が長い目で見れば有益で、家族みんなハッピーです。
――最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
太田:若い方にはまだ時間はたくさんあります。その時間を味方につけて堅実な資産形成をしていただきたい。この本はそのための一つの考え方について書いています。一方でシニアの方も、人生100年と言われる時代ですし、今からでも決して遅くはありません。せっかくNISAやiDeCoといった非課税サービスがあるわけですし、ぜひ上手に活用していただきたいと思います。あと、隠しメッセージとしては「金融機関関係者は絶対読めよ」と(笑)。結局、まともな商売しか残らないよ、と言いたいですね。
(新刊JP編集部)
(インタビュー前編を読む)
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だからこそ、今のうちに将来のお金の「仕込み」をしておきたい。『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版刊)の著者、太田創氏はそのための確実な手法として「米国株を対象にした積み立て型投資信託」を提唱している。
(インタビュー前編を読む)
■今買うべき投資信託の条件は…
――投資信託でいえば手堅く資金を増やすなら日本株、ハイリスクを承知でリターンを追うなら新興国というイメージがあり、米国株は盲点になっている気がします。
太田:そうかもしれません。テーマ型で米国株式市場で運用する商品はありますが、米国株式のみに投資する投資信託自体、実は日本では少ないですしね。
今は「積み立てNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」など、非課税のサービスもありますから、積み立て投資を始める環境としては最高です。投資を始めるとわかることですが、非課税をエンジョイできるというのはものすごく大きなことなんです。
――同じように米国の株式に投資するにしても、個別銘柄ではなく投資信託にすべし、とされていました。個別銘柄を精査したうえで購入し、長期に保持するという手法はあまりお勧めではないのでしょうか。
太田:米国の企業の個別銘柄を買うというのはかなりハードルが高いと思っています。一般の人はフェイスブックやアップルなど本当に有名な企業は知っていても、それ以外となるとほとんど知らないはずですし、基本的に情報収集は英語です。
米国株の個別銘柄自体は日本でもネット証券で買えるのですが、手数料を取られますし、外国有価証券の口座を作らないといけませんし、取引時間は日本の夜だし、何かと面倒なんです。
取引時間については指値をしておけば、指定の金額で取引できるのですが、そこまでやる人はもう「マニア」でしょう(笑)。
――米国株式の投資信託にも種類があり、どういう商品に投資すればいいのかは悩みどころです。どんな視点で商品を選んでいけばいいのでしょうか。
太田:まずは「米国株に投資する投資信託」。さらに運用コストが安いというのが条件になります。具体的には手数料はゼロで、信託報酬は0.3%以下。モーニングスターなどの専門サイトに行ってこの条件で検索をかければすぐ出てきます。
その中でも現時点で一番有利なのが、本にも書いた「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」という銘柄です。信託報酬率(運用コスト)が年率0.1728%(税抜 年率0.160%)以内で30年間運用可能なのが強みで、つみたてNISAなどの非課税口座ならなお良しですね。
――私は投資未経験者なのですが、本書で推薦されているファンドを買う時に窓口で何と言えばいいのでしょうか?
太田:今はオンライン証券で買えてしまうのですが、もし金融機関の窓口で買うのであれば、例えば「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はここで積み立てで買えますか?」と聞いてみるのがいいと思います。
ただ、銀行ではほとんど勧めていないと思います。販売手数料や信託報酬が低いから、彼らは売りたがらないんです。だからオンラインで購入する方が確実です。窓口だと「もっといいものがありますよ」といって別の商品を勧められてしまうこともあるでしょうし。
――資産運用全般についてのアドバイスもいただきたいのですが、今のお話を踏まえるとまずは窓口で勧められる商品は買うなと。
太田:それでいいと思います。業界関係者には怒られてしまうかもしれませんが、窓口担当者を凌駕する投資知識を持っている人以外は、よほどのものじゃない限り窓口で勧められる金融商品は買わない方がいい。厳しいようですが、金融商品を購入する方は必ず自分で調べる習慣をつけていただきたいです。
知識が十分ないままに窓口で勧められたら人は弱いです。少なくとも窓口に行くということは、窓口担当者が推奨する金融商品を買わされる可能性が高いわけですから。これは電化製品など一般消費財をお店で買う時と一緒で、最低限必要な情報は調べますよね。例えば、掃除機を買う場合、吸引力が強いのか弱いのか、うるさいのかうるさくないのか、など。
――他にアドバイスはありますか?
太田:今回の本で取り上げている4本の投資信託についても言えますが、積み立て投資を始めたら、まずは投資信託の値段である「基準価額」を見ないことですね。自分の持っている投資信託が今いくらになったのか気になるところではありますが、あえて見ない。そんなものないかのように毎日を過ごして、淡々と毎月3万円、30年間積み立てるのが一番大事なことです。
あとはブレないこと。仮想通貨やシェアハウス投資等もそうでしたが、金融とか投資の世界はトレンドになるものが次々に出てくるものです。そういうものには興味を示さない。きちんと積み立ていればそれで充分ですし、儲け話に飛びつくよりも仕事をがんばって給料を増やす方が長い目で見れば有益で、家族みんなハッピーです。
――最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
太田:若い方にはまだ時間はたくさんあります。その時間を味方につけて堅実な資産形成をしていただきたい。この本はそのための一つの考え方について書いています。一方でシニアの方も、人生100年と言われる時代ですし、今からでも決して遅くはありません。せっかくNISAやiDeCoといった非課税サービスがあるわけですし、ぜひ上手に活用していただきたいと思います。あと、隠しメッセージとしては「金融機関関係者は絶対読めよ」と(笑)。結局、まともな商売しか残らないよ、と言いたいですね。
(新刊JP編集部)
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