内覧会のときの注意点とは何でしょうか(写真:gyro/iStock)

春は引っ越しのシーズンだが、住宅業界からみれば「物件引き渡しのシーズン」であり、この時期に懸念されるのが「工期の遅れ」だ。折からの職人不足などの理由で、多くの新築工事現場で工期の遅れが目立っている。

一方契約上の引き渡し日は決まっているため、工期に間に合わせようと、勢い、雑な工事やうっかりミスと思える工事が増加している。加えて現場監督の担当現場数が多く、すべてをくまなく見切れないといった実情もある。

かつて2006〜2007年の住宅市場プチバブルの際には、やはり工期が間に合わないケースが続出、現場では雑な工事や、そもそも工期に間に合わないケースが多発した。しかし契約者にとってみれば一生に何度とない大きな買い物。きちんと工事され、欠陥のないマイホームを、期日どおりに引き渡してもらいたいもの。ここで重要になるのが、引き渡し前の「内覧会」である。

内覧会にどう臨むか

新築マンション・一戸建ては建物完成前に販売され、いわゆる「青田売り」が一般的なため、購入者はモデルルームやパンフレットを見て契約をする。

実際に建物を見ることができるのは、建物工事が終了した時点で行われる「内覧会」で、建物の引き渡し数週間前〜1カ月前に行われる。この内覧会は非常に重要だ。内覧会にどう臨むかで、入居後の安心感や満足感に大きな差が出るからだ。それはなぜか。

この内覧会には、大きく2つの意味合いがある。1つは「完成お披露目会」ということ。購入者は内覧会で初めて、自分が契約した物件を確認できる。内覧会のもう1つの重要な意味、それは「購入者による建物検査」ということだ。工事の仕上がりは、売り主の不動産会社もチェックしているものの、最終的には購入者のチェックが必要になる。

購入者が内覧会で「物件の仕上がりを確認しました」という書類に記名・押印すると、それで納得したということを意味する。もちろん、何か不都合があればアフターメンテナンスの期間に無償で補修してもらったり、普通であれば気がつかない欠陥(「隠れた瑕疵(かし)」)なら法的な請求をしたりもできるが、時間がかかったり、責任の所在が曖昧で、もめることもある。

新築の場合は通常、「アフターメンテナンス」や「アフターサービス」がある。しかし、入居後に大掛かりな補修や改修工事を行うのは、日常生活に支障が出たり、時間的な制約が生じたりする。また売り主側も、引き渡し後は対応が遅くなりがちな実情もある。

さくら事務所ではホームインスペクター(住宅診断士)が、多いときは月に数百件の内覧会に立ち会い同行するが、その経験からいうと内覧会時の品質・仕上がりには大きくバラつきがあるのが現状だ。このバラつきは、売り主や施工会社の大手・中小など、会社の規模には関係がない。

職人の技量や意識に左右される

自動車やPCなどの工業製品と違い、1つ1つが手づくりである住宅は、現場監督や職人の技量、意識に左右される部分がことのほか大きい。同じ分譲地、同じマンションであっても、1号棟はきちんと施工されているのに5号棟は精度が悪い、といったケースも。これは住宅がつくられる背景を考えればわかる。

実際に工事を行うのは現場の職人であり、彼らは大小さまざまな建設会社の協力業者として工事を担当している。さらに、建設現場を統括する現場所長の考え方、工事期間や予算の問題など、建物の出来を左右する要素は無数にある。単純に、会社単位では判断できない。

内覧会に際してはまず、売り主の不動産会社から内覧会の日程についてお知らせが来る。当日、現地へ出かけ受付を済ませると、工事を行った工事担当者が住戸へ案内してくれ、簡単に説明してくれる。その後、購入者のみなさんは自分たちで住戸内をチェックし、気づいた点はあらかじめ渡された用紙に記入。終わったら工事担当者と指摘箇所について補修方法などを確認する。

第三者に同行を依頼する場合、室内のチェックは分担して行うほうが合理的だ。購入者は内装の仕上げなどを中心にチェックし、プロには床下、天井裏など見えにくいところ、わかりにくいところを見てもらうといい。表面的なキズや汚れがあっても、補修が容易なものや住宅の機能には直接関係しないものがほとんど。機能面の不具合とは分けて考えよう。

キズや汚れにあまり神経質になるのではなく、注意してほしいのはシャワーヘッドやシャワーホース、収納扉のノブといった標準仕様品が設置されているかどうかだ。ドアや窓を自分が日常的に行っているやり方で開け閉めしたり、廊下を歩いたり、トイレの便器に腰かけてみたり、普段の生活の動きをなぞってみることもチェックになる。

また、キッチンや洗面、浴室では、きちんと水が出るかどうか、水を流してみたら水漏れが生じていないか、換気扇などは正常に動くかなど、住んでから発見すると生活に支障をきたしそうな不具合がないか確認することが大事だ。

不具合トップ5

マンションの場合、エントランスホール、廊下などの共用部分は引き渡しまで売り主・施工会社の責任で検査が行われ、購入者が検査することはできない。共用部分については、専門家にアフターサービスの期間内(おおむね2年が多い)に点検を依頼し、保証内容に該当する不具合があれば売り主に補修請求するといいだろう。

現場立ち会い・同行経験から、新築マンションの「不具合トップ5」をご紹介しよう。

5位:床の凸凹

ホームインスペクター(住宅診断士)は スリッパを履かずに靴下で診断を行う。踏みしめて、凸凹がないかチェック。直床の場合は、フローリング直下にコンクリート面があり、すり足で凸凹をチェックできる。

4位:壁・クロス下地の凸凹

下地に凸凹があると、表面のクロスにシワやヨレが生じる。また、クロスの端部やつなぎ部分にすき間がないかも確認しよう。引っ越して家具を配置してからの修繕は大変だ。

3位:浴室換気ダクトの排気漏れ

浴室の天井についている浴室点検口を確認。換気ユニットとダクトの接続部分から排気が漏れていることがある。そのまま換気扇を作動させると、浴室内の湿気を含んだ空気が天井裏に排気されてしまい、天井裏に湿気がたまりカビや腐食の原因となる。

2位:壁や床の傾き

施工誤差について、一般的に3/1000mm以上の傾きがあると、家具や物を置いた場合、グラつく可能性がある。ホームセンターなどで市販されている水平器などを用意すればセルフチェックできる。

1位:建具・扉のガタつき

住戸内には、ドアだけでなく引き戸や襖など、たくさんの建具がある。すべての扉を開閉し、ガタつきがあったら調整してもらおう。開閉の向きや傾きも確認。不具合があると何かにぶつかったり、床がこすれてしまう可能性がある。

新築マンション・一戸建ての内覧会はあなた自身の「施主検査」。内覧会では家具の配置など入居後の生活を想像するだけでなく、今後の生活のためにも、しっかりとチェックを行おう。