幅2メートル近くあるゾウの顔は大迫力! 撮影/山田智絵

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「これ、本当にダンボール!?」

【写真】動物から人間の顔まで! リアル&ド迫力のダンボール作品

 初めて見る人はみな驚き、そして足を止める──。ライオン、ゾウ、カメ……など、今にも動き出しそうなほどリアルで、何か言いたげな表情を浮かべる動物たち。これらすべてダンボールで作られているというから驚きだ。

「骨組みから肉づけ、皮膚などすべてダンボールでできています。ダンボールで作ったものは劣化していくから、生きていて呼吸しているようでいいなと。生と死という流れのある動物や植物を作ったら面白いのではと思ったんです」

 そう話すのは、「新たな再生」をテーマに古紙ダンボールを生命の形に甦(よみがえ)らせる、造形作家の玉田多紀さん。普通ならゴミとなってしまうダンボールも、彼女の手にかかれば魂が吹き込まれ、“生きもの”となって再び命が宿される。

「面白いのは1度作ったものをバラバラに解体して、またイチから別の生きものを作れること。作品の一部を、ほかの作品に生かすこともあります。例えば、ゲソが恐竜のツノとして使われたり(笑)。ダンボールを作品として再生させ、さらに別の作品へと再生していく。それがこのアートの面白いところだと思います」

もらってきたダンボールじゃないとこの感じは出せない

 作り方は、ダンボールを柔らかくするところから。こねて柔らかくしたもので各パーツを作り、さらに水に浸して剥がしたダンボール紙に接着を加え、揉んで肉づけし、表面にも貼って皮膚感を出していく。制作には膨大な量のダンボールが必要となるが、

「最初は処分するものをあちこちからもらっていました。買いそろえてもいいんですが、ダンボールの茶色って実は色とりどり。もらってきたダンボールじゃないとこの感じは出せないんだなと。集めていくうちに、この時間にコンビニに行けばあのダンボールが手に入るなとか、詳しくなりました(笑)」

 今では、自然と周りから集まってくるように。

「“これいる?”と声をかけてもらえることが増えて。集めるにしても、もらうにしても、ダンボールは人を介さないと手に入らない。“ダンボールコミュニケーション”が生まれるんです(笑)」 

 ワークショップも積極的に行っており、そこでも人とかかわることを意識しているそう。

「作家って、ひとりでこもって作業しているイメージがあると思うんですが、私はどんどん周りを巻き込んでいきたいんです。形にするのは作家の手が必要だけど、ダンボールを柔らかくする作業は子どもにもできるので、“やりたい人がいたらどうぞ”って。みんなにかかわってもらうことで、作品を共有していきたいです」

 いつかは海外でもワークショップを開いてみたいと夢を語る。

「せっかくなら、言葉がまったく通じない国がいいですね。国によって手に入るダンボールも違えば、そこにいる人たちも全然違う。そこでどんな“ダンボールコミュニケーション”が生まれるのか。考えるだけで、ワクワクします」

なぜ、ダンボール?

 ダンボール造形を始めて、今年で12年目。もともとは画家になるため美大に通っていたが、在学中に自身の画風を探していたところでダンボールという素材に出会ったそう。

「やってみたら難しくてハマりました(笑)。木彫りにも見えるし、粘土のように使って塑造みたいなものも作れる。突きつめれば、これは可能性があるなと。気づけばこの素材に夢中になっていたんです」

たまだ・たき◎1983年生まれ。2007年、多摩美術大学造形表現学部造形学科卒業。ダンボール造形作家として、国内外で展覧会やワークショップを開き精力的に活動中。「新たな再生」をテーマとした作品は、テレビや雑誌などメディアでも話題に。

▼ここで見られます!
「蓮太郎 ─成長・記憶・再生─」
2月16日(土)〜3月17日(日)
ギャラリー キドプレス(東京都千代田区)
詳しくはキドプレスHPへ http://www.kidopress.com/