襲名会見で遊びよりも稽古が好きと答えた優等生な勸玄くん

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「“えー、できなーい”みたいなことをさっきまで言っているんですけど、いざ緞帳が上がりまして、堂々とやっている姿を見ると放っておいてもいいのかなと」

【写真】勸玄くんをセレブ託児所に通わせる麻央さん('14 年9月)

 1月14日、歌舞伎座で、'20年5月に十三代目市川團十郎を襲名することを発表した市川海老蔵。同時に八代目市川新之助を襲名する長男・勸玄くんの魅力を問われると、笑顔でこう話した。

「襲名公演は来年5月から歌舞伎座で3か月間行われます。その後、福岡の博多座など地方公演が行われ、それが翌年まで続くのです。会見では7年ぶりに復活する大名跡である“團十郎”の話題が中心でしたが、勸玄くんのハキハキとした受け答えや可愛らしさに、報道陣はメロメロでしたね」(全国紙記者)

 そんな勸玄くんは、新橋演舞場で行われている『初春歌舞伎公演』に出演中。海老蔵とともに、昼と夜の公演に出ている。

「1月3日の初日には、小林麻耶さんが旦那さんと一緒に見に来ていました。舞台の最後に役者さんが全員で出て、観客へ手ぬぐいをまくのですが、勸玄くんと麗禾ちゃんも登場したんです。2人は客席の5列目くらいにいた伯母である麻耶さんを見つけると、うれしそうに彼女に向けて手ぬぐいを投げていました。麻耶さんも子どもたちに笑顔で手を振っていましたね」(居合わせた観客)

 2人の母である小林麻央さんが乳がんで亡くなったのは、'17年6月のこと。闘病中から姉である麻耶は、妹の負担を減らすために、幼稚園の送り迎えなどを手伝っていた。

「一部週刊誌が海老蔵さんと麻耶さんが再婚するのではなどと書いたため、彼女が海老蔵さんの家へ行くことを遠慮することもありました。

 また、彼女自身も結婚して生活が大きく変わりましたね。ですが、甥っ子たちを思う気持ちに変わりなく、運動会などの節目には必ず会っていますよ。また、母を失った勸玄くんや麗禾ちゃんにとっても、彼女の存在が精神的な支えになっているのは間違いないでしょうね」(成田屋に近しい人)

なぜこのタイミングでの襲名だったのか

 麻央さんの死は、成田屋に暗い影を落とした。それは團十郎襲名にも影響を及ぼしていたという。

「'13年に先代の團十郎さんが亡くなってから、勧進元の松竹は襲名の時期を模索していました。しかし、麻央さんが病に侵されてしまったため、それどころではなくなってしまったのです。一周忌が終わっていることもあり、このタイミングでの発表となったのでしょう」(松竹OBで芸能レポーターの石川敏男氏)

 だが、この時期の襲名発表は、あの世界的イベントの存在も大きいという。

「'20年に行われる東京オリンピックの委員になっている海老蔵さんは、開会式への出演は決定的といわれています。

 それには、歌舞伎界でナンバーワンの名跡である團十郎でなくてはならないのです。成田屋の襲名となれば、全国にいるご贔屓筋への挨拶や準備などに1年はかかる。そこから逆算すると、あの日の発表となったのでしょうね」(スポーツ紙記者)

 開会式は'20年7月24日に行われるが、歌舞伎座での襲名興行は7月20日に終わる予定。オリンピック出演へ抜かりない日程がすでに組まれている。

「総合演出に狂言師の野村萬斎さんが就任しましたが、それは2人の特別ゲストを出演させるためといわれています。ひとりは同じ古典芸能の市川團十郎さん。そしてもうひとりが、萬斎さんが演じた『陰陽師』を舞って、2大会連続金メダリストとなった羽生結弦選手なんです。開会式の目玉はこの2人の共演となるでしょうね」(同・スポーツ紙記者)

 さらに、この時期の襲名発表は成田屋の事情も見え隠れする。

「麻央さんが亡くなったことで、勸玄くんなどの子どもたちの生活面のフォローは麻央さんのお母さんがしています。

 ご贔屓筋への対応などの歌舞伎面を支えるのは、海老蔵さんの母親である堀越希実子さんが担当することになったのです。

 襲名興行となれば当然、彼女の負担は大きなものとなる。ならば、彼女が元気なうちに襲名興行をしたいと考えるのは当然でしょうね」(梨園関係者)

 そして、もっとも大きいのは、勧進元である松竹が弾いた“ソロバン”だ。歌舞伎は襲名で儲けるといわれるが、今回はケタ違いの大金が動くのだ。

「先代が行った『團十郎襲名興行』は30億円ともいわれるお金が動きましたが、今回の襲名では100億円のお金が動きますよ。その大きな要因のひとつが勸玄くん。彼はもうスターですよ。

 出て来ただけで輝きがあり、微笑むだけで温かい空気が流れますからね。もしかすると、今回の襲名興行は、新之助のほうに注目が集まってしまうかもしれません。海老蔵さん自身も勸玄くんの人気には舌を巻いているんじゃないですか」(歌舞伎研究家の喜熨斗勝氏)

 現在行われている『初春歌舞伎』は、チケット売り出しと同時にほぼ完売。それは海老蔵だけでなく、共演する勸玄くんや麗禾ちゃんの存在も大きい。

「麻央さんは、成田屋の跡継ぎである勸玄くんに英才教育をしてくれるセレブ託児所に1歳から預けていました。

 保育料は月に24万円以上するのですが、麻央さんはお受験対策というより、歌舞伎役者として舞台に上がっても臆することがないよう、早くから親離れさせることが目的だったようです。ですので、姉の麗禾ちゃんはここに通わせていませんでしたからね」(成田屋ご贔屓筋)

歌舞伎ファンの女性は「母」目線

 大勢の報道陣を前にしても勸玄くんが堂々と襲名の口上ができたのは、麻央さんの教育によるところが大きい。そして、彼も母親の期待に見事に応えている。

「今、歌舞伎ファンである女性の多くは、勸玄くんを母のような温かい視線で見守っています。それは、麻央さんがブログなどで自らの病や子どもたちのことを包み隠さず綴ったことで、多くの人たちの胸を打ったからです。

 遺していく勸玄くんをみなさんで支えてほしいという母親の想いが、5歳にして勸玄くんを“千両役者”にしたといっても過言ではないでしょう」(別の梨園関係者)

 彼の人気が、これからの歌舞伎界を変えていくかもしれない。そして、麻央さんは海老蔵の背中をも、そっと押していた。

「1月の舞台で海老蔵さんは初めて『平家女護島 俊寛』を演じました。これは、島流しになっていた俊寛が罪を許され都に戻ろうとするのですが、妻はすでに亡くなっていることを知って絶望し、ひとりだけ島に残るという悲しい話なんです。

 松本白鸚さんに教えを請い、必死に稽古したそうです。襲名発表と同じ月にこの役にチャレンジしたのは、間違いなく俊寛と自分の心境を重ねたからでしょう」(同・梨園関係者)

 海老蔵の熱演を見て、多くの観客が涙を流していた。

 麻央さんの想いを受け継いだ團十郎と新之助が、新たな歌舞伎界を切り開いていくに違いない─。