キリン一人勝ちを支える「本麒麟」の死角
■ビール大手各社のなかで唯一、前年同期比プラス
キリンビールの国内販売が好調だ。牽引力になったのは2018年3月に市場に投入された第3のビール「本麒麟」である。発売当初の年間販売目標510万ケース(大瓶20本換算)を18年6月には790万ケースに上方修正。それも18年9月中に8割強を達成しており、1−9月の出荷量ではビール大手各社のなかで唯一、前年同期比プラスを確保した。
好調の理由はキリンのマーケティングの変化だろう。これまでは総花的に行っていた販促を18年から主要なブランドに絞り込んだことが奏功したようだ。
結果、キリンにとって「本麒麟」は過去10年で最もヒットした新商品となり、第3のビールのトップブランド「のどごし」を含めたシェアは40%近く、キリンが一人勝ちといっていい。
とはいえ「本麒麟」は、まだ市場へ投入して1年を経過していないので、真価が問われるのは19年になる。他社も巻き返しに出て、第3のビールは競争が激化してくる。19年10月には消費増税があり、買いだめも予想される。
■ビール類は26年までに段階的に税額が一本化
それだけに勝負は前半の1−6月になる。キリンビールには発泡酒でも売り上げトップの「淡麗」があり、この2分野は磐石だ。キリンビールが制する可能性が高い。
さらに2020年には酒税改正がひかえている。ビール類は26年までに段階的に税額が一本化され、ビールは減税、発泡酒と第3のビールは増税となる。そうなれば、需要はビールへ回帰するが、これは「スーパードライ」によって約5割のシェアを持つアサヒビールへの追い風となるのは間違いない。
長期的には、若者のアルコール離れという課題もある。いま飲酒人口のコアは50代男性。20代男性の摂取量は、その4割程度で、国内市場は縮小する。しかも、消費者の嗜好はビールよりもチューハイなどにシフトしていて、ビール各社には市場活性化の企業努力が求められる。
(野村証券 アナリスト 藤原 悟史 構成=岡村繁雄 写真=iStock.com)