ブランド女・コンビニ男、ケチと倹約の境目に苦しむ男女の価値観
ブランド品が好きで散財する人、無駄なものには一切お金を使わない人など、お金の使い方には、人間性が出ますよね。
婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『どうお金を使うのが正解か』お金の使い方について考えてみました。
ブランド生活にこだわる37歳、貯金額は0円
会員の牧野清貴さん(42歳、仮名)が、別の相談室の女性、戸田麻実さん(37歳、仮名)から、お見合いを申し込まれました。
麻美さんはお写真で拝見する限りでは、洗練された瑞々しい美人でした。清貴さんは、お見合いにとても乗り気で、お会いするのを楽しみにしていました。
申し込みが成立すると、いつどこでお見合いするか相談室同士で連絡を取り合い、日時と場所をセッティングします。
清貴さんが出してきた候補日3つを先方にお知らせし、新宿の「○○ホテルの1Fカフェでいかがでしょうか」と、麻実さんの相談室に私が提案しました。
すると、麻実さんの相談室の回答は、こうでした。
「日程は、戸田に確認しますが、場所は違うところでお願いします」
そこで、新宿という場所がいけなかったのかと思い、今度は新橋にあるホテルのカフェを指定しました。すると、また、こんな返信がきたのです。
「場所ですが、他でお願いします。できたら、もっと権威と格式のあるホテルにしていただきたいのです」
なので、「では、そちら様で場所はご指定いただけますか? 当会員をそこに伺わせますので」と、返しました。
私が提案したのは、いずれもお席の予約が取れるホテルのカフェでした。土日のホテルのラウンジやカフェは、とても混雑をしていて、予約が取れるところでないと、20分30分平気で待つことになるからです。
すると、麻実さんの相談室が指定してきたのは、あのトランプ大統領が日本に来た時に泊まった、超一流ホテルの1階にあるラウンジでした。
「急な話で申し訳ないのですが、明日の19時でお願いできないでしょうか?」
指定されたのは、土日ではなくウィークデー、仕事を終えてのお見合いでした。あまりにも突然でしたが、清貴さんに連絡すると、「明日の夜なら大丈夫です」とのことでしたので、急遽その時間でお見合いが決まりました。
翌日、お見合いを終えた清貴さんから、連絡がきました。
「楽しくお見合いできたので、交際希望でお願いします」
お相手からも“交際希望”がきて、2人の交際がスタートしました。
ところが、2回目のデートを終えた後、清貴さんから「麻実さんとの交際は終了にしてください」と連絡が入りました。
終了理由が、こうでした。
「金銭感覚があまりにも違いすぎます。『指輪を買うなら、カルティエ、ブルガリ、ハリーウィンストンのいずれかのブランド、住むなら東京23区、結婚したら年に2回は海外旅行をしたい』と言うんです。
僕は、一般的なサラリーマンですし、まったくブランドには興味がない。住む場所や年2回の海外旅行など、僕の給料では彼女の希望を叶えてあげられません」
ブランドにこだわるのは個人の自由です。
ですが、彼女にそうしたブランド生活を手に入れる経済力があるかといえば、彼女はごく普通のOLさん。
さらに大学を卒業してから一度も一人暮らしをしたことなく、自宅から仕事に通い、14年間も働いてきたというのに、貯金が全くないというのです。
清貴さんの年収は700万円。同年代の男性と比べたら良いほうです。また貯金も堅実にしています。それでも女性側にこれだけの条件を出されてしまうと、腰が引けてしまう。
自分の力では買えない。ならば、男性に買ってもらう。最初からそんな依存心の強い結婚を望んでも、それを受け止めてくれる男性はいない気がするのです。
しかも女性は、もうじき38歳です。その年の女性が貯金0円というのもいかがなものでしょうか。
趣味の食べ歩きは、楽しくコンビニ巡り
さて、いっぽうでこんな男性もいました。
会員の久保田照美さん(36歳、仮名)が、お見合いの場所でる、新宿のホテルのティーラウンジに行くと、入口付近にお見合い相手の大曽根賢治さん(40歳、仮名)が、立って待っていました。
賢治さんは、照美さんを見つけるとこう言いました。
「今お店の人に聞いたら、5人待ちだそうです。20分くらいは待つかもしれないので、場所を変えませんか?」
そこでホテルを出て、近くの比較的空いていた喫茶店に入りました。席に案内され、着席し、メニューを見た大曽根さんがボソリと言いました。
「コーヒー1杯が800円か。新宿っていう場所代だろうなぁ」
その言葉を聞いて、照美さんは“さっきのホテルのコーヒ-は、1杯1500円。その金額を出すのがいやで、もしかしたらラウンジが混んでいたことを理由に、場所を移動したのかしら”と思ったそうです。
そんなことが頭をかすめつつもお見合いは始まり、 “食”の話題になりました。
照美さんは、賢治さんの身上書の趣味の欄に“食べ歩き”と書いてあったことを思い出し、こんな質問をしました。
「食べ歩きって、どんなところに行かれることが多いんですか?」
すると、賢治さんが楽しそうに言いました。
「今、コンビニスイーツって充実してますよね。季節によってイチゴや栗を使った新作が出るし。あと最近のコンビニは、イートインコーナーを店の一角に設けているところが多いでしょう? 私は、コンビニ巡りが好きなんですよ」
食べ歩きが、コンビニ巡り? びっくりしている照美さんに、トドメの一言がきました。
「コンビニのコーヒーは、一杯100円。この喫茶店の800円のコーヒーより、ずっと美味しいですよ」
さらに話をしていくうちに、賢治さんの趣味は貯金だということもわかりました。
「ただ、私は使うところには使いますよ。年に1回は海外旅行に行きますしね。海外に行っても、スーパーやコンビニ巡りが好きで。
土産物屋は、観光客相手だからなんでも高いけれど、地元の人が使うスーパーやコンビニは地場価格。日本では見かけないような、その土地の珍しいものが売っていて面白いですよね」
このお見合いを終え、照美さんは賢治さんに、“交際不成立”を出しました。そして、私にはこんなことを言ってきました。
「ケチと倹約の境目って、どこなんでしょうか? コンビニスイーツは確かに美味しいです。でも、食べ歩きをコンビニのイートイン巡りだと堂々と言ってしまう感覚が私とは合わないと気がしました。
私はそんなに高いお給料をもらっているわけではないけれど、たまには贅沢して話題になっているお店のインスタ映えするような人気スイーツも食べてみたい。海外旅行に出かけたら奮発して、ちょっと高いレストランにも行きたいです」
お金をどう使うか。
カップル間における金銭感覚の違いは、いつも問題となるところです。結婚を前提とした“真剣交際”に入った時に、金銭感覚が合わず “交際終了”になってしまうカップルもいるくらいです。
お金は“身の丈”を考えて使いながらも、倹約と贅沢のメリハリをきかせることが大事ではないでしょうか。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『あいかつハウス』http://aikatsuhouse.grupo.jp/