絶滅寸前のテレクラに、本誌記者が10年ぶりに出撃してみると…

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見ず知らずの男女が出会いを求めて一本の電話でつながる――90年代に流行し、一時代を築いたテレクラが今、絶滅の危機に瀕(ひん)している。

かつては男のロマンにあふれていたテレクラは今、どうなっているのか? 前編に続き、レポートする!

■“神様”と呼ばれた早取りの天才

ヤる・ヤラないのボーダーラインをたゆたいながら、男たちはテレクラで人生に必要なものを学び、大人の男へ成長していった。

「会社に入ったばかりの新人時代、営業の“研修”と称して強制的に行かされたのがテレクラでした。話を聞くのはセールスマンの基本。聞きながら自分の要望をのんでもらうというトークの技術を学ばせてもらいました」(50代・営業部長)

「上京したばかりで、誰も友達がいなかった頃。テレクラで出会った50代のおばさんが、死んだ母親にどことなく面影が似ていたんです。肉体関係はなかったですが、よく、ご飯を食べさせてもらってました。今でも東京の母として年賀状のやりとりをしています」(40代・会社員)

やがて、各地方ごとに“達人”と呼ばれるスゴ腕のプレイヤーが登場し、半ば都市伝説化することも。

「関西に“神様”と呼ばれる早取りの天才がいました。彼は、“感覚でコールが来るのがわかる”らしく、音が鳴る直前に受話器を上げるので、彼と一緒だと誰もかなわない。ある種の超能力者だと、周囲から敬われていましたね」(風俗ライター)

「当時はいろんな町に“コールを取れば100%やれる”という“伝説のヤリマン”が必ずいました。私の地元にも○ミという持田真樹風の美少女がいて、待ち合わせ場所は決まって同じラブホテルの前。即アポ即ハメが当たり前で、セックスもひと晩中ねちっこく攻められる。ただ、一度寝た男とは寝ないという信念を持っているらしく、テレクラで1千人斬りを達成して引退したらしいです」(風俗ライター・K氏)

「当時はエロ本で活躍するテレクラライターの方もたくさんいましたが、なかでも高名なのは、寝たきりの母親を抱えながら亡くなってしまったSさん。彼の死後、テレクラで出会った女性が彼の母親の介護を続けたとか。氏の人柄と共に、業界の伝説になっています」(元M出版編集者)

■10年ぶりにテレクラに出撃してみた

そんなテレクラも90年代中盤から「援助交際」がブームになると、客層が大きく変貌。風俗求人誌には堂々とサクラの募集が載り、これを職業とする女性も増えつつあった。

「サクラやワリキリ(援助交際)が急激に増えてから、テレクラの質自体が大きく変わっていきました。玄人男性たちは、サクラ相手でも必死に話を盛り上げて、実際に会ったり、ヤったりもしていましたが、テレクラの醍醐味みたいなものが薄れていってしまったことは否定できませんね」(風俗ライター・ブラボー川上氏)

同じような意見は女性からも聞こえてくる。

「声やトークの内容から相手を想像してドキドキするのが面白かったのに、いつからか、電話をかけても第一声で『いくら希望?』って聞いてくるツマラナイ男ばかりになった感じがします。この後、出会い系サイトや、マッチングアプリに人が流れてしまったのも必然といえるかもしれません」(30年前に女子高生だったカスミさん[40代・社長秘書])

かつてこの国に燦然(さんぜん)と輝いたテレクラの灯。もはやその火種は完全に消えてしまったのだろうか。そこでテレクラの現状を探るべく、10月某日、記者は都内のテレクラに約10年ぶりに足を運んだ。

週末の夜8時から3時間コースで入室。閑古鳥が鳴いているのかと思いきや、部屋は意外にも満室だった。店舗が減った分、プレイヤーが集結しているのだろうか。

肝心のコールは早くて5分、遅くとも10分に1度はコンスタントに入った。このコールの多さは正直、意外だった。だが、その内訳はといえば8割がワリキリ。残りの2割は暴言を吐かれたり、会話が成立しない宇宙人ばかり。

記者が驚いたのは、23時になると、規制の一環で部屋に店員がやって来て、電話機ごと取り外して持っていってしまうのだ。かつてのテレクラといえば終電間際がゴールデンタイムだったのだが、これも時代なのだろうか。

終了間際になって、開口一番「外で会える?」と言ってきた自称29歳某一流商社のOLと接触できた。声の感じは悪くない。約束を取りつけ、テレクラ近くの路地で彼女と落ち合ったのだが、そこにいたのは「アルフィー高見沢似の旧日本兵」だった…。

病的にガリガリ、服はヨレヨレ、髪はゴワゴワ。「私はヘンタイ、セックスがしたい…」と強引にホテルに連れ込まれる。その後、裸になった旧日本兵は、耳元で世迷い事をささやくが、当然、記者はピクリとも反応せず…。だが、帰ろうとすると「オイコラ、金払え!」と脅され、逃げるように退散した…。

とはいえ、テレクラにはこうした失敗があるからこそ、夢がある。その最後の灯が消える前に、もう一度、あの受話器を取りに行ってみては。

(取材・文/金町三郎 イラスト/西アズナブル)