「県道223(ふじさん)号」という語呂合わせを付した静岡県道があります。しかし、富士山の近辺は通らず、そもそも県道なのに全線が海の上だといいます。

静岡市と伊豆半島をショートカット?

 富士山を擁する静岡県に、「県道223(ふじさん)号」という語呂合わせを付した県道があります。

静岡県道223号の標識には、フェリーが描かれている(画像:pixta)。

 静岡県道223号「清水港土肥線」は、静岡市清水区の清水港と、西伊豆の伊豆市土肥(とい)を結ぶ路線です。同区間は陸路であれば、東名高速、伊豆縦貫道(国道136号)経由でおよそ100kmの距離がありますが、これをショートカットするような形で、駿河湾を横断するフェリーが運航されおり、このフェリーが結んでいるおよそ30kmの区間が静岡県道223号で、全線が「海上」にあるとされています。

 なぜこのような県道が誕生したのか、静岡県道路保全課に話を聞きました。

――まずこの「223」という語呂合わせ、出来すぎのような気もしますが……。

 以前は別に県道223号がありましたが、路線の統廃合によって欠番になっていました。そこで、2013年4月に清水港と土肥港を結ぶフェリーが航行する海上区間を、県道223号としました(編注:欠番になる以前の県道223号は、大井川鐵道の沿線を通る「千頭停車場寸又峡線」)。

――そもそも県道とはどういうものなのでしょうか。

 都道府県が当該区域内の道路について認定し、おもに県が管理する路線です。この県道223号は、静岡市と伊豆半島を結ぶ観光上重要なルートであることから認定しました。

海の上も「道路」 認められる?

――海路なのに道路扱いできるものなのでしょうか。

 全国的には、フェリーなど渡船が運行されていることによって国道と指定されている「海上区間」が存在し、県道でも5つほど例があります。静岡県道223号はこうした海上の都道府県道としては日本最長です。認定に際しては、フェリーで結ばれている区間を県道として認め得るかということを国に確認し、「認め得る」との回答を得ています。

――国道の海上区間は、「未供用区間」という扱いのようですが、この県道223号では?

 路線としては認定しましたが、おっしゃるとおり「未供用区間」という位置づけです。

――念のため確認しますが、海上に道路の開通予定は?

 道路の開通予定はありませんが、一方でこの県道223号も国道と一体となった道路網を形成する視点から、国道に一体化させた方がよいのでは、という議論もあります。路線のありかた自体を将来的に考えていく必要があるかもしれません。

――やはりこの県道223号上を航行するフェリーから見る富士山が一番きれいなのでしょうか。

 富士山を近くから見るのか、遠くから見るのかは好みが分かれるかもしれませんが、さえぎるものがなく、天候がよければ山容の全体を眺めることができます。

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 ちなみにこの県道223号上を通る「駿河湾フェリー」(エスパルスドリームフェリー)は1日4往復の運航で、清水港と土肥港を65分で結んでいます。夕方の便に乗船すれば、季節によっては海に沈む夕陽と、それに照らされた「赤富士」を一望することもできるそうです。

【地図】静岡県道223号のルート概念図

静岡市清水区の清水港と、伊豆市土肥を結ぶ。静岡市と伊豆半島を周遊するルートの一部となっている(国土地理院の地図を加工)。