星野vs坂戸西
星野ベンチ
女子ソフトボールの強豪校として知られる星野（旧校名＝星野女子）が共学校となって、野球部を創部して5年。高知県の強豪で甲子園常連校の明徳義塾でコーチ経験のある飯野 勝監督を招聘して強化してきたが、その成果が徐々に示されつつあるようだ。その、飯野監督に日体大では2年先輩にあたるのが坂戸西の野中 祐之監督である。そういう意味では、お互いにある程度はどんなチームなのかということは十分に知っている相手ということではあるが、実は試合で当たるのは初めてだという。どんな試合になるのかというのは、見る側としても楽しみだった。
野球はよく、ミスのゲームだとも言われる。ミスをどう防ぐのかということも大事だが、ミスが起きたらどう対処するのか、あるいは相手のミスに対してどうつけ込んでいくのか。その巧拙が勝敗を分けるといっても過言ではないくらいだ。まして、毎年チームの入れ替わる高校野球で新チームのできたすぐの秋季大会。その要素はより大きくなっていくだろう。この日の星野の戦いは、そんなミスに対しての対処がシャープだった。それが、勝負を決したといってもいいくらいだった。
星野は2回、四球とバント、内野安打で一三塁としたが、後藤君はひっかけるような打撃で併殺となり好機をつぶした。その後の守りでも送球ミスが出た。しかし、大事には至らなかった。
そして3回、一死から星野の先頭打者1番星野君が三遊間を破ると、風間君の飛球を野手が落球。さらに暴投もあって坂戸西にミスが重なった。ここで星野はしぶとく、3番の飯野君が三遊間を破って先制打となる。さらに続く櫻井君は右越三塁打して2点を追加。その後も内野ゴロ野選があって、微妙な判定でもあったが、そこは坂戸西がよく踏ん張った。坂戸西としては、さらに一死二三塁という場面だっただけに、この踏ん張りは試合を壊さなかった。
しかし、星野は4回にも相手失策に乗じて、チャンスを広げて一死満塁からまたしても飯野君のタイムリーで追加点を挙げた。飯野君はこれまでは下位を打っていたのだが、「あれは、元気があって声もよく出しているし、ムードメーカーになれる要素があるんですよ」という父親でもある飯野監督の起用に十分にこたえる活躍だった。もっとも、坂戸西もギリギリのところでこらえており、続く3回にタイムリー長打を放った櫻井君を併殺で切って取った。
坂戸西・赤池君
ただ、坂戸西は安打が出ないまま5回を終えた。星野の左腕湯澤君のカーブに対してほとんど対処できない形だった。野中監督は、「投手がいいのはわかっていましたから、最初の一巡はノーヒットでもしょうがないと思っていました。ただ、展開としては、5回までは0対0で行きたかったですね」というのが本音だった。
坂戸西の初安打は6回に二死走者なしから1番畠山君が放った。続く赤池君も安打したがそこまで。そして、初めて走者を三塁を進めたのは7回、一死から突如制球が乱れた湯澤君が3連続四球で一死満塁。しかし、ここから湯澤君も気迫を見せて連続三振。 8回は、坂戸西に失策が出たが併殺で切り抜けるなど、お互いにミスが出ながらも何とか処理していく展開で試合そのものも引き締まった。
坂戸西は9回に二死二塁から7番小高君が右越三塁打を放って、1点を返して一矢を報いたものの最後まで湯澤君を攻略しきれなかった。湯澤君は12三振を奪う力投だった。
夏のチームからは湯澤君と4番の櫻井君が残った星野。飯野監督は、「だいぶ自分たちがやらなくてはいけないこと、集中力を持ってやっていくことが浸透してきましたけれども…、まだまだです」と厳しい。それでも、感触としては新チームに対してもいい手ごたえを得ているようだった。
先発メンバーは6人が1年生と下級生が多く、県大会進出を逃した坂戸西。「まずは、夏の大会後からのここまでの集大成と言うつもりで挑んだ試合でしたけれども…残念です」と野中監督は悔いた。それでも、1年生バッテリーがある程度成長したことと、「核になる2年生が精神的にも成長してきています」と、主将の赤池君やチーム初安打を放った畠山君らの意識が高くなっていることに期待している。そして、「本当に打てるようになるのは、一冬超えないとわかりませんね。そのために、これからまた、いろいろやっていきます」と、早くも来春を見据えての構想を描いていた。
（文＝手束 仁）
