ヤクザと在日と北朝鮮
先日、暴力団情勢に詳しい取材仲間たちと雑談をしていたときのことだ。
筆者はそちら方面にはまったくうといので、「へえ〜、色んなことがあるんだな」という感じで聞き役に徹していたところ、話題は山口組分裂の現状と今後へと及び、その中で神戸山口組のある最高幹部の名前が挙がった。
「北の連中とつながりたい」
すると突然、仲間のひとりが筆者の方を向き、「その最高幹部は確か、何年か前に高さんに電話をかけてきたんですよね?」などと言う。いきなりのことで、最初は「えぇっ、えぇ〜!?」と面食らってしまったが、よくよく思い出してみれば、確かにそんなこともあった。
正確に言うなら、その最高幹部は筆者ではなく、ある月刊誌の編集部に電話をかけてきたのだ。その少し前、筆者は同誌に「実録 北朝鮮ヤクザ」をテーマにした原稿を書いていた。それを読み、「面白いじゃないか。ここに書かれている連中とつながりを持つためには、どうしたらいいんだ?」と、山口組の有力2次団体の組長が直接、編集部に電話をかけたのだ。その人物が、今では神戸山口組の最高幹部になっているのである。
(参考記事:【実録 北朝鮮ヤクザの世界(上)】28歳で頂点に立った伝説の男)
結局、その最高幹部から筆者のもとに、連絡がくることはなかった。ただ、「さすが出世したヤクザともなると、フットワークが軽いものだな」と感じたことを覚えている。
「在日の親分比率」の高さ
ちなみに、在日韓国人ジャーナリストの李策氏から聞いて知ったのだが、その最高幹部は在日韓国人であり、経済ヤクザとしての実力はトップクラスであるという。
在日とヤクザの関係については一部に「日本のヤクザの3割は在日」などとするデタラメな言説がある。元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏が何ら根拠もなく、ほとんどノリだけで語った言葉が電脳空間をさまよっているものだ。これが本当なら筆者の周りには何十人もの在日ヤクザがいるはずだが、実際のところ、そのような人物はひとりもいない。
しかし一方で、前述した李策氏が面白いことを書いている。日本の総人口に占める在日の比率に対し「親分にまで上り詰めた在日ヤクザの比率」は明らかに高いというのだ。
(参考記事:「ヤクザと在日」の語られざる真実…武闘派の隆盛とバブル紳士の台頭)
どうしてそのようになったのか。李氏の分析は多岐にわたっているが、日本経済がある時点で、在日ヤクザの「スキル」を求めたからというのが理由のひとつのようだ。
現在は反社会勢力として、完全に主流社会から疎外されつつあるヤクザだが、かつては互いに利用しあっていた時期もあったのだ。
そして、それと同じことは北朝鮮にも言えるのだが、その点については機会を改めて述べてみたい。