気づいた時にはもう遅い「求人詐欺」が就活・転職を台無しにする

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求人詐欺というのがある。知らないうちに被害にあっている人も多い。

「求人詐欺」やり放題の国・日本


就活や転職の時におなじみの「求人票」。業務内容や勤務地、給与など、さまざまな条件が書かれていて、これを基準にして仕事を探すはずだ。

だが日本では、求人票に「ウソ書き放題」な状況が続いてしまっている。高い給与などの待遇で優秀な人を集めることができないから、ウソで釣るのだ。もちろん違法だが、野放しになっている。

こうした状況について書かれているのが『求人詐欺 内定後の落とし穴』という本だ。


優秀な人間を激安で買い、使いつぶす詐欺企業



わかりやすい例をあげると、「月給25万」などと書いておきながら、いざ入社してみると「残業代込みだった」みたいな感じ。気付いた時には遅く、「就活シーズンが終わってしまっていて、もう別の会社を探す時間がない」とか、「転職のためにもう辞表を出してしまっていて無収入状態」といった弱みを狙ってくる。

勤め始めたらとんでもないブラックで、「こんなことなら月給18万でもちゃんと残業代が出る会社のほうが断然収入もよかった」なんてことも多い。ブラックな会社ほど、だまさないと人が集まらないし、「なんとか手当」とか謎な概念を駆使して「社畜なんて納得させて諦めさせれば勝ち」ぐらいに思っていたりする。

さらに最悪な場合、「使いつぶすことを前提に、人間を大量に釣る」会社もある。過労死を起こすような仕事を強いたりする事例も。

求人詐欺への必勝法


本書は「ウソ」や「脅し」で被害にあったケースを紹介したり、その特徴などをたっぷり書いているが、恐ろしい事例をただ並べて「不安をあおる」のが目的ではない。

むしろ逆で、「こんなに酷い事例の数々でも、きちんとしたステップを踏めば必ず勝てる」というスタンスなのだ。

どんな邪悪な求人票があるのか、どうやって見分けるのか、だまされてしまったらどう戦うのか、だまされる確率を減らすにはどうするのか。それらが章ごとに書かれている。

企業との対立は「特別なこと」ではない


なんとなく、「企業に立ち向かう」というのはとても大変なことに思えるし、強くて賢くないと無理な気もする。だけど法律は、労働者の立場の弱さを考慮して作られている。意外と勝てるのだ。

志望のきっかけとなった求人票や契約書を写真にとっておいたり、面接を録音する(何も悪いことではない)。勤務時間をメモでもいいから記録しておく。そういったことを、途中からでもいいから集めておけば、辞職するときに一気に残業代を取り戻せたりするという。そしてそのお金で、人生を取り戻す。そのための手段や事例が紹介されている。みんな勝っている。

現状では、やはり自衛が必要


日本では、特に残業代に対する違法行為が多いため、「ハローワークの求人180のうち、139が違法な内容であった」なんて状況(2014年「ブラック企業対策プロジェクト」調査)だ。

しかし求人情報を載せるサイトや雑誌は、立場上「求人詐欺な求人票」を取り締まることが難しい(掲載枠が収入源である上、万が一「やっぱり違法じゃなかった」なんてなってしまえば訴えられたりしてしまう)。状況が良くなっていくとしても、求人詐欺に対する自衛が必要な状況は続くだろう。

起業や投資、家や自動車など「大きな買い物」も上手くやる必要があるが、就業もなかなか「大きな取引」だ。あなたは人生の一部を売ろうとしているのに、それを何百万も何千万もごまかして買い叩こうとする求人詐欺。真面目に求人票を作る良質企業が損をするし、優秀な人材をつぶすし、自由競争を妨害して日本全体に悪影響ばかり与えている。

事実として横行してしまっているこの犯罪の被害にあわないために、あなたやあなたの周囲の人にぜひ知ってもらいたい。


今野晴貴著『求人詐欺 内定後の落とし穴』は幻冬舎より発売。(香山哲)
(香山哲)