「下町ロケット」今夜8話「なんだかなあ」に阿部寛の思いを感じた
「ガウディ編」に突入してから八方塞がりの状況が続く『下町ロケット』。第8話もまだまだ佃製作所にとっては苦しい展開だ。
桜田(石倉三郎)からこのままではガウディ計画の資金援助が打ち切られると告げられた佃(阿部寛)。しかし佃は資金のあてもないまま、ガウディのための人工弁開発を進めることを決意する。いっぽうで収益の柱であるロケットエンジンバルブのコンペも迫っていた。ライバルのサヤマ製作所は共同開発を提案し、帝国重工の悲願である内製化を実現させることでコンペを有利に運ぶという戦略があった。厳しい状況のなか、山崎(安田顕)は先を見据えてバルブに混入する異物を粉砕する「シュレッダー」の試作品をつくっていた。財前(吉川晃司)にシュレッダーの共同開発と、その条件としてガウディ計画の支援を持ちかけた。バルブの燃焼試験は高いレベルで合格したものの、共同開発が決め手になりサヤマ製作所が選ばれることにーー。
第8話で何よりうれしかったのは、「ロケット編」で接近した財前と佃、二人の友情が続いているさまがしっかりと描かれていたことだ。佃製作所の技術を信頼し、ギリギリのところで戦う財前。財前を信用し、バルブが選ばれなかった悔しさをぶつけ、それでも前向きに「また一緒にロケットを飛ばしましょう」と伝える佃。取引先という関係をこえた二人の交流がこの物語により味わいを持たせている。ちなみに、阿部寛が亡くなった阿藤快さんの「なんだかなあ」をセリフに入れ込んだのは、佃が財前に悔しさを吐露する場面。「なんだかなあ……悔しいですよ。クソッ!」という佃のセリフはそのまま、突然阿藤さんがいなくなってしまったことに対して発せられたかのようだ。
今回も佃製作所は苦境に立たされる。ガウディ計画の資金のめどがつかない。頼みの綱のロケットエンジンバルブ納入はサヤマ製作所に奪われる。しかし、それでも立ち向かう(そりゃ立ち向かわなければドラマにならないのだが)。どんな困難な状況でもやる気を出す彼らのスイッチはどこにあるのだろう?
たとえば第8話で登場したスイッチのひとつは、同僚の頑張る姿。バルブのコンペ結果が出る前、江原(和田聰宏)と迫田(今野浩喜)が「俺たちに勝ち目はないかもな」と話し合っていた。しかし研究チームが夜遅くまで真剣にガウディの開発を進める姿を見て「あいつらマジだ」「ロケットもガウディも絶対にやり遂げような」と話す。
もうひとつのスイッチはお嬢様のお言葉。サヤマ製作所のせいで一方的にコンペ日程が1週間前倒しになったことに対して不満の声をもらす面々。そこに佃の娘、利菜(土屋太鳳)がちょうどやってきて「祖母の手作りおにぎりです」と差し入れをする。ここでの利菜の立ち居振る舞いはみごと。「父がいつもわがままいって本当にすみません」とまず最初に謝り、「でもみなさんに感謝しています」と感謝を伝え、「就職活動ちょっとうまく行かなくて悩んでたんですけど」「私もがんばります」と自分の悩みを打ち明けながら前向きな宣言をする。そして「だからみなさんも」「力を貸してやってください」と父の代わりに頭を下げて頼む。それによって社員たちは改めて仕事に打ち込むのだ。現実ではそううまく人々の不満を解消できるわけでもないだろうが、それでもこの話法、なんだかビジネスに応用できそうだ。
しかしいちばんのスイッチは何と言っても佃社長の熱い言葉だろう。夢に向かってブレることなく突き進む佃の言葉にいつも社員たちは奮い立つ。ただ、第8話での佃は冒頭から資金問題で謝り、バルブのコンペで負けて謝り、なかなか気持ちのいい演説が聞けていない。だからこそ、その代わりの役割を上記のように社員や娘が担ったとも言える。さて、今夜の第9話ではそろそろ佃の言葉が結果につながるだろうか?
(釣木文恵)
桜田(石倉三郎)からこのままではガウディ計画の資金援助が打ち切られると告げられた佃(阿部寛)。しかし佃は資金のあてもないまま、ガウディのための人工弁開発を進めることを決意する。いっぽうで収益の柱であるロケットエンジンバルブのコンペも迫っていた。ライバルのサヤマ製作所は共同開発を提案し、帝国重工の悲願である内製化を実現させることでコンペを有利に運ぶという戦略があった。厳しい状況のなか、山崎(安田顕)は先を見据えてバルブに混入する異物を粉砕する「シュレッダー」の試作品をつくっていた。財前(吉川晃司)にシュレッダーの共同開発と、その条件としてガウディ計画の支援を持ちかけた。バルブの燃焼試験は高いレベルで合格したものの、共同開発が決め手になりサヤマ製作所が選ばれることにーー。
続いていた! 財前と佃の友情
第8話で何よりうれしかったのは、「ロケット編」で接近した財前と佃、二人の友情が続いているさまがしっかりと描かれていたことだ。佃製作所の技術を信頼し、ギリギリのところで戦う財前。財前を信用し、バルブが選ばれなかった悔しさをぶつけ、それでも前向きに「また一緒にロケットを飛ばしましょう」と伝える佃。取引先という関係をこえた二人の交流がこの物語により味わいを持たせている。ちなみに、阿部寛が亡くなった阿藤快さんの「なんだかなあ」をセリフに入れ込んだのは、佃が財前に悔しさを吐露する場面。「なんだかなあ……悔しいですよ。クソッ!」という佃のセリフはそのまま、突然阿藤さんがいなくなってしまったことに対して発せられたかのようだ。
佃製作所のやる気スイッチ
今回も佃製作所は苦境に立たされる。ガウディ計画の資金のめどがつかない。頼みの綱のロケットエンジンバルブ納入はサヤマ製作所に奪われる。しかし、それでも立ち向かう(そりゃ立ち向かわなければドラマにならないのだが)。どんな困難な状況でもやる気を出す彼らのスイッチはどこにあるのだろう?
たとえば第8話で登場したスイッチのひとつは、同僚の頑張る姿。バルブのコンペ結果が出る前、江原(和田聰宏)と迫田(今野浩喜)が「俺たちに勝ち目はないかもな」と話し合っていた。しかし研究チームが夜遅くまで真剣にガウディの開発を進める姿を見て「あいつらマジだ」「ロケットもガウディも絶対にやり遂げような」と話す。
もうひとつのスイッチはお嬢様のお言葉。サヤマ製作所のせいで一方的にコンペ日程が1週間前倒しになったことに対して不満の声をもらす面々。そこに佃の娘、利菜(土屋太鳳)がちょうどやってきて「祖母の手作りおにぎりです」と差し入れをする。ここでの利菜の立ち居振る舞いはみごと。「父がいつもわがままいって本当にすみません」とまず最初に謝り、「でもみなさんに感謝しています」と感謝を伝え、「就職活動ちょっとうまく行かなくて悩んでたんですけど」「私もがんばります」と自分の悩みを打ち明けながら前向きな宣言をする。そして「だからみなさんも」「力を貸してやってください」と父の代わりに頭を下げて頼む。それによって社員たちは改めて仕事に打ち込むのだ。現実ではそううまく人々の不満を解消できるわけでもないだろうが、それでもこの話法、なんだかビジネスに応用できそうだ。
しかしいちばんのスイッチは何と言っても佃社長の熱い言葉だろう。夢に向かってブレることなく突き進む佃の言葉にいつも社員たちは奮い立つ。ただ、第8話での佃は冒頭から資金問題で謝り、バルブのコンペで負けて謝り、なかなか気持ちのいい演説が聞けていない。だからこそ、その代わりの役割を上記のように社員や娘が担ったとも言える。さて、今夜の第9話ではそろそろ佃の言葉が結果につながるだろうか?
(釣木文恵)