By Slilin

イギリス南部に紀元前2500年から紀元前2000年ごろに円陣上に並べられた巨大な岩石からなる先史時代の遺跡が「ストーンヘンジ」です。世界遺産に登録されるほど有名でありながら、当時の技術でどうやって巨石を運搬したのか、なぜ作られたのかなどの詳細が明らかになっていない謎の遺跡とされています。そんなストーンヘンジ周辺で、ストーンヘンジ建設以前の住居や巨石群が見つかるなど、複数の新発見により当時の様子が少しずつ明らかになりつつあります。

Stonehenge Begins to Yield Its Secrets - The New York Times

http://www.nytimes.com/2015/11/10/science/stonehenge-begins-to-yield-its-secrets.html



2015年10月バッキンガム大学の考古学者デービッド・ジャック氏がストーンヘンジから約1.6km離れたブリックミードという場所を調査していたところ、泥を固めて構築した壁面と、わらや動物の皮をかぶせて屋根を作っていたと見られる柱が見つかりました。ジャック氏は「紀元前4300年ごろに作られたイギリス最古の住居のひとつ」と説明しており、内部からは火打ち石の塊や、矢尻のかけら・切断用の道具・顔料用の黄土のつぼなど、当時の生活状況を示す数々が発見されました。この「ブリックミード・ハウス」には狩猟民族が生活していた形跡があり、それから1世紀以上後にストーンヘンジを作り上げた集団の祖先にあたるとのことです。

9月にはレーダー技術を用いて調査を行っていたチームが、「ダーリントン・ウォール」と呼ばれる場所で約90個にのぼる最大で全長15フィート(約4.5メートル)もの巨石が立った状態で埋まっている巨石群を発見しており、もともとは200個以上という巨石が何らかの目的で設置されていたことがわかっています。これらの巨石群はストーンヘンジの1000年以上前に作られたと見られており、ダーリントン・ウォールの付近には、紀元前2600年から紀元前2400年ごろに木材を円陣上に打ち立てた「ウッドヘンジ」も存在します。



ここ10年間、ストーンヘンジ周辺では数々の新発見が報告されています。全長2マイル(約3.2km)・幅100ヤード(約91メートル)におよぶ巨大な溝「カーサス」が作られたのは紀元前3500年ごろと考えられており、紀元前2900年ごろにはストーンヘンジの「円形基礎溝」が材木を立てて作られたことがわかっています。紀元前2500年ごろにストーンヘンジが完成し、付近を流れるエイボン川周辺からは、ストーンヘンジ建設に携わった集団が生活したと見られる紀元前2600年ごろの住居も発見されています。



これらの発見物について、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのマイケル・パーカー・ピアソン博士は、2トンほどの青岩が「ブルーストーンヘンジ」やプレセリ山からストーンヘンジに運ばれたと予想しています。しかし、ストーンヘンジにある最大40トン級の巨石の運搬方法はわかっていないほか、当時は書記言語すら持たなかったブリトン人がなぜストーンヘンジを構築したかについては、はっきりとわかっていないとのこと。ピアソン博士は、「ダーリントン・ウォールは聖者の土地」、「ウッドヘンジはダーリトン・ウォールを象徴化した土地」、「ストーンヘンジは死者の土地」だったと予想しています。

初期のブリトン人がごちそうを食べるためにダーリトン・ウォールに集まるようになり、ストーンヘンジは先祖への崇拝を示す場所として、後年にはストーンヘンジが治療の場所として使われていた可能性もあるそうです。なお、ダーリトン・ウォールの地中から発見された岩石群の中には、レーダーを反射するチョークで固められた柱なども見つかっているため、2016年からはレーダーで発見できない物質が埋没している可能性を考え、実際に地中を掘り出して調査が行われる予定です。