福島、汚名返上の一撃・吹上

2点本塁打を放った福島 大雅(吹上)

 14年ぶりの本大会出場を果たした吹上が、粘りの逆転勝利で初戦突破した。

 2点を追いかける5回、吹上は先頭の5番・原 潤稀がライトオーバー三塁打を放ち、7番・中野 僚介のスクイズで1点を返し、反撃の口火を切る。6回に2点を奪われて3点差とされたが、3番・福島 大雅の2ランが流れを大きく引き戻した。

 6回の2失点では三塁手・福島のミスも絡んでいただけに「何としても取り返したかった」意気込みで打席に入った。力みはなく「無心だった」という。カウント2ボール1ストライクから内角低めの直球を振り抜くと、レフトスタンドに大きな放物線を描いて消える2ランとなった。

 風は逆風、168センチ、62キロと小柄だが「背筋力の強さで持っていった」(新開 剛監督)自身初のホームランだった。これで勢いづいた吹上は7回に同点に追いつき、8回は福島のセンター前の打球を一か八かダイビングキャッチを試みたるも後逸。三塁打となり勝ち越した。

 南薩地区予選では指宿商を相手に、逆転サヨナラ勝ちで14年ぶりの本戦出場を果たした。2年生も含めたチームでベンチ入りしている選手は少ないが「県大会に出られることが決まってから、この1カ月ぐらいでメキメキ力をつけてきた」と新開監督。前日には学校行事で山登りを含む28キロロードレースがあり、身体のコンディション的には「50%ぐらい」(福島)だが、新開監督は「相手の大島は離島からやってきても言い訳せずに戦っているんだぞ!」と檄を飛ばして、選手の闘争心をたきつけた。

 大島は序盤優位に進めながら逆転負け。塗木 哲哉監督は「あらゆる面で今一つ。勝たせてあげられなかったのが悔やまれる」と振り返った。

 立ち上がりから3回連続で先頭打者を出しながら得点ならず。4回に6番・有馬 壱成の三塁打で先制点を挙げ、中盤はようやくそつない攻めで得点を挙げることができたが、6回裏に2ランを浴びてから「流れを相手に持っていかれた」(塗木監督)。

 7回に守備が乱れて同点に追いつかれ、8回は2ランを浴びた3番・福島に勝ち越し打を打たれ、スクイズでダメ押された。相手を上回る11安打を放ちながら、好機に畳み掛けられなかったのが響いた。

「序盤は声もよく出ていて雰囲気も良かったけど、流れが悪くなってからは雰囲気が悪くなってしまった」と濱田 雄一郎主将。本来ならば、流れの悪い時こそ、全員で声を出して盛り上げていかなければならないところが、徹底できていなかった。濱田主将は「自分たちの悪いところが出た。冬場はそれらをしっかり見つめ直して、春につなげたい」と冬場の課題を挙げていた。

(文=政 純一郎)