常総学院vs横浜

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常総学院が投打で横浜を圧倒!名門対決を制し、ベスト8進出!

先発・鈴木昭汰(常総学院)

 この試合の注目はプロ注目の好投手と投げ合いだろう。横浜・藤平 尚真、常総学院・鈴木 昭汰(2年)。お互い侍ジャパンU-15代表経験者。仲も良い選手で、できれば初戦で当たるのは避けたいと考えていたが、実現したこの試合。勝負は「この試合に人生をかけていたので」と語る鈴木に軍配が上がった。

 鈴木は実に巧みな左腕だった。間合いが一定ではなく、早く投げたり、じっくりと投げたりと、どちらかというとじっくり投げることが多いが、その間が実に嫌らしい。受け身で投げず自分の間合いで投げようとしているのだ。打者からすればこんな嫌な投手はいない。

 投球内容もハイクオリティだった。上半身と下半身のバランスの取れた投球フォームから繰り出す速球は常時130キロ前半(最速136キロ)ほどだが、両サイド自在にコントロールできるのが素晴らしい。スライダー、カーブ、シュート、チェンジアップのキレも高校生としてハイレベル。この日、鈴木は「ストレートのキレも良く、変化球の切れも良く、どれも意図通りに投げることができました」とまさに絶好調の出来だったようだ。

 強打の横浜に対して、右打者には膝元に決まるスライダー、外角にはチェンジアップを投げ込み、左打者には内角に食い込むシュート、外角に逃げるスライダーで狙い球を絞らないピッチング。どれも自信に持っていた中で、最も自信にしていたのはスライダー。「スライダーを振らせるために勢いあるストレートを見せたり、シュートを見せたりと、コンビネーションを意識しました」ただ投げるだけではなく、決め球のスライダーを振らせるために、考え尽くして配球をしていた。その結果、3回まで7奪三振。四死球3つ、被安打2本打たれながらも要所を締めるピッチングでゲームメイクを展開していた。また横浜の打者で最も打たれたくないと思っていたのは藤平である。U-15代表ではチームメイト同士だった2人。鈴木は、「最も警戒していた打者でした。打つ技術もあるし、またあいつを打たせて乗せたら怖いので」第1打席は空振り三振に打ち取ってガッツポーズを挙げた鈴木。一人ひとりの打者に対して考え尽くした配球をしながらも要所で、闘志あふれる投球を見せていた。

3番宮里豊汰(常総学院)

  常総学院の打撃陣は関東大会出場を決めてから約1か月間。打撃練習の時間を増やした。午前中は打ちっぱなしをしたりと徹底的に打撃強化を行った。またマシン打撃も、145キロに設定し、速球に慣れる準備をしてきた。その取り組みはしっかりと現れた。

 いきなり1回表、二死から3番宮里 豊汰(1年)が139キロのストレートを捉え、フェンス直撃の二塁打でチャンスを作る。2回表にも、7番中村 迅(2年)が二塁打を打ち、少しずつ藤平を追い詰めていた。 しかし横浜は4回裏、一死三塁のチャンスを作り、1番戸堀敦矢(2年)の左犠飛で1点を先制。そして5回表、藤平が一死から1番鈴木をこの日、最速139キロのストレートを内角へズバリと決まり、見逃し三振。この三振に藤平も吠えて、やや力が入った投球。このままいけば、藤平がさらに調子を上げるかもしれない。そんなときだった。2番有村恒太(2年)がスライダーを捉え中前安打で出塁すると、ここで第1打席で二塁打を放っている宮里が打席に立つ。

 宮里は「先ほどの打者に対しては変化球で勝負をしていたので、直球が来るかなと思っていました」 その狙い通りの直球が高めに来た。この日、最速139キロのストレートを振り抜いた打球は左中間に飛び込む逆転2ランに。なんと公式戦初本塁打だという。1年生とは思えない豪快なスイングができており、楽しみなスラッガー候補だ。さらに4番花輪直輝(2年)の安打で藤平は降板。見事に藤平の攻略に成功したのだ。二死一、二塁としたところで投手交代。ここで陶山の適時打を浴びて、常総学院が3対1に突き放す。「関東大会は145キロ級の速球投手を攻略しなければならない」1か月前から想定してた取り組みが実を結ぶ形となった。

5回途中で降板した藤平尚真(横浜)

 だが横浜の2番手左腕・石川 達也は6回以降が非常に良かった。右足をバランス良く上げて、勢いよく踏み出すフォームから繰り出す直球は、常時130キロ前半(最速133キロ)ほどだが、球速表示以上に勢いを感じさせる球質で非常に見応えがあった。スライダー、カーブのキレも良く、投手としての潜在能力は決して鈴木に負けていない。とにかく振れる常総学院打線を封じ、反撃のチャンスを作る。

 だが鈴木はだんだん調子を上げていき、ストレート、チェンジアップ、シュート、スライダーのキレは依然として衰える様子はなく、打たれる気配を感じさせない。8回表には連続三振を奪って、二桁奪三振。9回表は直球中心の投球で抑えて1失点完投勝利。勝利の瞬間、雄叫びを挙げた。鈴木は、「勝ててうれしいというよりも、泣き崩れていた藤平の分まで勝たないといけないと責任感が出てきました。準々決勝は何としてでも勝ちます」と決意を新たにしていた。

 そして敗戦投手となった藤平。この日は最速139キロといつもほどのスピードは出ていない。東海大相模戦と比べるとストレートの調子は良くなかったかもしれない。が、気になったのは投球面の繊細さがなかったこと。藤平は打者に応じて緩急を使い分けることができる投手だ。あの本塁打の場面、ストレートに強い宮里なので、変化球から入ったり、外すことの重要性をバッテリー、首脳陣も理解できていた。が、徹底できなかった。その差が試合を分けることになったが、ただ悔いしか残らないだろう。

 持っているモノは全国トップクラス。チーム力は非常に高い。この夏、東海大相模も、センバツを逃した悔しさから全国制覇につなげただけに敗戦のショックから立ち直り、再び強い横浜を見せてほしい。

(文=河嶋 宗一)

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