取材のあと、記者全員とツーショット撮影を行うサービスも行った井上真央。
選挙活動のような地道さ。

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吉田松陰(伊勢谷友介)、高杉晋作(高良健吾)、久坂玄瑞(東出昌大)・・・と幕末を彩る激烈な男たちの存在感のなかで、彼らを見つめ支える健気なポジションを守ってきた文(井上真央)が、美和と改名し、毛利家の大奥に入り、いよいよ主役の本領発揮となりそうな大河ドラマ「花燃ゆ」(NHK 日曜夜8時〜)。

幕末男子の世界から一転、幕末女子たちの世界へと様変わり。キレイな着物姿の美和は、これまでのマスコット的な役割とは印象がかなり違ってきた。

今後、陰謀渦巻く女社会のなかで、美和が持ち前の知恵を生かして立ち回り、めきめき出世していく痛快な物語になっていくにあたり、8月2日(日)放送の31話の先行試写と、井上真央がドラマの見どころやいまの心境を語るプレスミーティングが行われた。

史実なんです


女性記者ばかりを集めた異例のプレスミーティング(場所はNHKの貴賓室!)に集まった30人強の女性陣を見た小松昌代プロデューサーは「女性専用車両みたいですね」。
井上真央は「ケーキがあればよかったですね」と笑い(ペットボトルのお茶が配られました)、リラックスした空気のなかで取材開始。

「派手にしようとして大奥を描いているわけではなく、史実なんです」と小松Pの前置きがあり、実際、美和が文時代、長らく地味に耐え忍んできた意味が大奥で生きてくる。

兄・吉田松陰、夫・久坂玄瑞・・・愛するひとたちが次々と志半ばにして亡くなっていく姿を目の当たりにしてきた美和。
井上は「みんなが命をかけたものを、亡くなったみんなの代わりに見なくてはいけないという使命感をもって生きてゆくことになります。みんなの代わりに、新しい日本と日本人をつくっていくという、彼女の志がどんどん大きくなっていくんです」と語る。
27話「妻とのたたかい」では、井上いわく「自分の無力を思い知らされ、過去の自分を捨て、大奥に入った」美和。椋梨藤太(内藤剛志)になじられて、雨に濡れた地面をバンバン叩いたのは、感情が昂った井上が思わずやってしまったアクションだったそう。

心理戦がスリリング


そして、31話「命がけの伝言」。
にっくき椋梨による粛正が続き、小田村伊之助(大沢たかお)の処刑が決まる。大奥の先輩(江口のりこ)から、椋梨に毒を盛るようにもちかけられたとき、美和はどうする? 
クセ者だらけの宴の場での心理戦がスリリングだ。

美和がいろいろ考えを巡らせながら決断し行動に出る姿を、井上がじつに鮮やかに演じている。きれいに張った額と大きな瞳が聡明な印象な井上の美和には説得力がある。
やっぱり井上がどんどん前に出ていったほうが面白い。
取材でも井上は、空調がきつくないですか? とか、時間切れで質問できなかった記者に気遣って、質問してくださいと促すなど気配りを見せていた。

高良・高杉がじつにいい


31話の美和は、最後に残った小田村を救おうと必死。ついに小田村への思いを口にする場面もあって、井上もそこには「言えない〜」と悩んだとか。小田村への思いは美和の原点でもあり、久坂亡きあと、いよいよ小田村との運命の糸がくっきりしてくるところも今後の見どころ。

おっと、まだ高杉晋作も踏ん張っている。
美和の活躍と平行して、高杉の行動も描かれる31話。ここのところの高良・高杉がじつにいい。狂気と正気が紙一重のような己を信じきった燃え盛る瞳の強さ。時代や国を動かそうとする人間はこれくらいの気を溢れさせていてほしい。

美和の井上真央、高杉の高良健吾、このふたりの凛々しさや才気が「花燃ゆ」を牽引していく。
このふたり、朝ドラ「おひさま」(11年)で夫婦役を演じていて、そのときのプロデューサーが「花燃ゆ」の小松P。志を同じくする者たちは、明治維新まで駆け抜けようと血気盛んだ。
(木俣冬)