KAERUくん「ヤクザなんてだいきらいだ。」

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公開中の映画「極道大戦争」。エキレビ!では、日活の宣伝プロデューサー・小沼賢宜にインタビューして、宣伝秘話についてうかがった。
前編はこちら→「極道大戦争」宣伝プロデューサーの仕事「噛まれたら、みんなヤクザ。」誕生秘話

インパクト勝負「ヤクザなんてだいきらいだ」


──「噛まれたら、みんなヤクザ。」については、前編でおうかがいしました。ほかのフレーズを使っているポスターは、どのように生まれたんですか?

小沼 「極道大戦争」って、ものすごくタイトルが強い。もちろんヤクザ映画の要素も入ってるんですけど、普通のヤクザ映画ではない。「これまでにない極道映画をお届けしますよ」と伝えたかった。そこで出てきたのが「ヤクザなんてだいきらいだ。By KAERUくん。」というフレーズです。

──ヤクザ映画っぽいタイトルなのに、よくわからないカエルの着ぐるみが前面に出ている……。

小沼 KAERUくんはヤクザの天敵という設定ですが、このポスターにはヤクザはが絵の中に存在していない。しかも「ヤクザなんてだいきらいだ」と宣言をしています。ほかの極道映画、ヤクザ映画では絶対にありえないですよね。

──そもそもほかのヤクザ映画にはカエルが登場しないですし、カエル姿でアクションはしないですからね。

小沼 宣伝期間のなかで、ずっと同じことを言い続けていると飽きられてしまうように思うんです。見せるものを段階的に変える必要があります。インパクト勝負ができるのは一番最初だけ。なので、果敢にKAERUくんでチャレンジしました。いろいろな意見を聞いて、「だいきらい」は柔らかい感じにしたくてひらがなにしました。こだわりのひらがなです!

「ツッコミどころ満載」と言いたくてしょうがない


──「噛まれたら、みんなヤクザ。」のポスターは、一見シリアス。でもどこかで見たことのある字体で「YAKUZA WARS」と書いてあったりして、やっぱりツッコミどころがいっぱいありますよね。

小沼 みんな、「ツッコミどころ満載」って言いたくてしょうがない気がしていて。だからこれを見て、そう言ってくれたら嬉しいなと……(笑)。

──い、言わされてしまった!

小沼 奇をてらいたいというわけではないんです。ただ、その人が持っている先入観の中からちょっとだけはみ出してるもの、ちょっとだけズレてるものは、記憶に残るし反応してくれる気がしています。予定調和の枠にはまってしまうと「ただ触れただけ」になってしまうのかなと思います。

──「よくあるよね、こういうの」と思ってしまうことはあります。

小沼 それだとつまらないですよね。相手が想像している範囲のことを少し超えて、驚きを感じてほしいなと。「極道大戦争」というゴリゴリのタイトルに、ふりがなを振ってみたのもそういう想いがありました。

──妙にカジュアル。

小沼 「極道大戦争」というタイトルに触れたとき、「極道映画か、わかるわかる」となるのではなく、カジュアルに表現されることで、気持ち悪いズレを感じて、この映画の自由でオリジナルな魅力を感じて欲しいなと思ったんです。「この映画は面白いよ」と言っても、伝わらない。だから「面白い」とか「やりたい放題」という言葉を使わずに、見ている人に「面白そう」「やりたい放題だな」と思わせたいです。

静から動へ


──公開が近くなって、こちらのビジュアルになりました。

小沼 ポスターはセットで考えています。三池監督のこれまでの作品のポスターを参考にさせていただいて、「静」から「動」への変化をつけたいなと思っていました。一番初めからどーんと動きのあるものを出してしまうと、息切れしてしまいますし、それにあんまり映画の中身を出す出し過ぎてしまってもと「ああ、こういうものが見られるんだな」と消化して、終わってしまう。「中身は乞うご期待」というワクワク感を作りたかったんです。

──焦らし期間が必要なんですね。

小沼 初めは佇んだ感じで焦らし、公開が近くなったところで「いよいよ公開です!」というメッセージを込めて、映画の中身が見えるような、激しい感じのポスターになり、キャッチコピーは「熱く、美しく」。と新しいものを加えました。

──明朝体の雰囲気とポスターの感じに「ズレ」を感じます。

小沼 化粧品のコピーみたいですよね(笑)。作品の入り口としては「楽しめる」「笑える」という部分が強いので、それこそ「おっぱじめようぜ!」みたいな元気のいいコピーを入れようかと考えたり、けっこう悩みました。とはいえ「極道大戦争」はヤクザの生き様をかっこよく描いている作品でもあります。

──おもしろおかしいだけではない、ということをコピーで示している?

小沼 はい。飛躍した世界観の映画ではありますが、武士道的なアツい部分もある。その部分もメッセージとして伝えたいと思って、このコピーを選びました。

若い人に見てもらいたい


──映画が公開されて、観客の反応はいかがでしょうか。

小沼 マスコミ試写という試写があったり、メディアの方々の感想を伺うことが多いのですが、印象をまとめると……「普通」と言われない。「ものすごく好き」という人と、「ちょっとおいてかれちゃったな……」という人、極端に分かれているように思います。でも、公開が近づくにつれてだんだん「面白かった」と言ってくれる人の数が大きくなってきた感じはします。

──「極道大戦争」はどういう層に見てもらいたいと思っていますか?

小沼 極道映画が好きな方にも当然見て頂きたいと思いますが、いちばんは若い人に見てもらいたいです。「ヤクザ映画は見たことがないや」という中学生、高校生から20代くらいの人が見に来て、「すげー面白いじゃん!」となってくれたら嬉しいです。高校生の男子四人組、デートしてるカップル、映画毎年100本見てるような人、ヤクザ映画が大好きな人……いろんな人たちに映画館に来てもらいたいです。それから、「あの噛まれたらヤクザになっちゃう映画、ちょっと面白そうだよね」とたとえタイトルを覚えてなくても、キャッチコピーを覚えてくれて、映画を見ようと思ってもらえたら「やった!」と思いますね。

小沼賢宜プロデューサープロフィール


日活宣伝部所属。
宣伝担当作品は「凶悪」「TOKYO TRIBE」「極道大戦争」「Mr.Children REFLECTION」などがある。

映画『極道大戦争』  
監督/ 三池崇史
脚本/ 山口義高
配給・宣伝/日活
(C) 2015「極道大戦争」製作委員会
予告編(YouTube)

(青柳美帆子)