徹底的にあさはかに描かれる主人公「まれ」76話
朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)6月25日(木)放送 第13週「運命カカオ64%」第76話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出: 川上剛
6月22日に発表された2015年度版「少子化社会対策白書」に合わせて内閣府が発表した20〜39歳の男女の意識調査(14年度)によると、未婚の男女で「恋人が欲しくない」と思うひとの割合は約4割。
恋愛が絶対視されていないのを感じるなかで、「まれ」13週では恋愛話が主として描かれ、しかもそれが複雑な二股愛的で、女友達のド修羅展開を迎えます。
そういえば、週タイトルの「カカオ64%」とは、上記の調査結果による「恋人がほしいひとは約6割」と偶然近い数字です。
輪島塗とケーキのコラボ企画のためにコンビを組んでいる希(土屋太鳳)と
圭太(山崎賢人/崎の大は立)がいい感じになっていると、半年間外国に行っていた大輔(柳楽優弥)が帰ってきます。
帰ってきたら交際の返事をする約束だった希はイエスの返事をして、ついにふたりは正式につきあいはじめることに。
大輔のまえで穏やかに微笑んでいる土屋さんですが、ほんの一瞬、微妙な顔になり、大輔に連れられて階段を降りていくところでも一瞬、足が止まります。
じつは圭太のことを割り切れてなくて、でも圭太と一子(清水富美加)のことを考えて身を引いたのに、横浜にやって来た一子から、圭太とは終わったと宣言されてしまうという間の悪さ。
さらに、それを聞いていた美南(中村ゆりか)に「最低」と責められる始末。
それにしても、女子同士が簡単に味方になったり敵になったりする様を、篠崎脚本は小気味よく描きますね。
希は、人生経験、恋愛経験の未熟さから、多くのひとを振り回し、傷つけ、結局、自分が泣くはめになるわけです。
恋愛ドラマのてっぱん・三角関係ではありますが、主人公が徹底的にあさはかに描かれ、周囲の女たちに責められる朝ドラ「まれ」。いまの日本で、恋愛至上主義がなりを潜め、未婚、少子化が進行するなかで、主人公が恋する相手に目移りして、それによって人間関係がぎくしゃくする恋愛下手の物語はじつはピッタリなのかもしれません。
いつものパターンですと、今週中にこの話がさっくり解決しちゃいそうですが、このまま女がふたりの男を愛するという生き方に切り込んでいってくれると面白い気がします。
朝ドラの近作だと、「カーネーション」では、妻のいる男性と主人公の恋が描かれ、「花子とアン」では、準ヒロインともいえる女性が夫を捨てて駆け落ちする姿が描かれ、それが多くの支持を受けたのだから、「まれ」では、フランス菓子→フランスの音楽という流れからフランス映画に繋げて、フランス映画によくある女ひとりに男ふたりの三角関係ものを追求していくことも、女性の生き方がテーマである朝ドラとしては、まんでありやと思います(方言つかってみました)。
75話では、圭太がかませ犬かと思っていたのですが、76話では、圭太が天中殺の前の通りの灯りで、瞳キラキラしているアップは、こっちが本命かと思わせる魅力にあふれていました。無敵そうだった大輔が、希の返事を聞く前に、余談を語りだし、このひとも意外と気が小さいとこあるのかもなんて思わせる面を見せて、もしや、大輔のほうがかませ犬? と、まんまと恋愛ドラマの仕掛けにハマっております。
藍子(常盤貴子)が天中殺に能登の食材をたくさん送ってくるエピソード。見ると生ものではなく加工したものが多いです。そりゃ生ものを大量には送れませんので当然だと思いますが、文(田中裕子)が、干し柿を旬(新鮮な)にとれる食べ物と言っています。素材をそのまま生かしている意味なのはわかるのですが、そうすると、能登では旬のものが美味しいという話とはずれてきます。干鱈も干し柿も日持ちしない食品を長持ちさせる生活の知恵からできていて、シンプルに見えても手間や時間がかかっているので、文いわく「こねくり回す」作り方であるフランス菓子との比較対象に使うにはなかなか難しい要素なのかなと思いました。フランスにも保存食はいっぱいあるし、食に精通しているであろう大悟(小日向文世)が干鱈の存在と食べ方にそこまで感動するとは思えないんですよね。逆に狭い世界に暮らしている文が、能登と共通するフランス菓子の奥深さに気づくエピソードがあれば解決ですけれど。私は、「まれ」って、単純に、能登のお国自慢を紹介するドラマではなくて、それらにこめられた、長い時間のなかで熟成される生活の尊さを描いていると思って見ているのですが、違うのかな。
(木俣冬)
エキレビ!にて月〜土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから
いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))
6月22日に発表された2015年度版「少子化社会対策白書」に合わせて内閣府が発表した20〜39歳の男女の意識調査(14年度)によると、未婚の男女で「恋人が欲しくない」と思うひとの割合は約4割。
恋愛が絶対視されていないのを感じるなかで、「まれ」13週では恋愛話が主として描かれ、しかもそれが複雑な二股愛的で、女友達のド修羅展開を迎えます。
そういえば、週タイトルの「カカオ64%」とは、上記の調査結果による「恋人がほしいひとは約6割」と偶然近い数字です。
女子同士が簡単に味方になったり敵になったり
輪島塗とケーキのコラボ企画のためにコンビを組んでいる希(土屋太鳳)と
圭太(山崎賢人/崎の大は立)がいい感じになっていると、半年間外国に行っていた大輔(柳楽優弥)が帰ってきます。
帰ってきたら交際の返事をする約束だった希はイエスの返事をして、ついにふたりは正式につきあいはじめることに。
大輔のまえで穏やかに微笑んでいる土屋さんですが、ほんの一瞬、微妙な顔になり、大輔に連れられて階段を降りていくところでも一瞬、足が止まります。
じつは圭太のことを割り切れてなくて、でも圭太と一子(清水富美加)のことを考えて身を引いたのに、横浜にやって来た一子から、圭太とは終わったと宣言されてしまうという間の悪さ。
さらに、それを聞いていた美南(中村ゆりか)に「最低」と責められる始末。
それにしても、女子同士が簡単に味方になったり敵になったりする様を、篠崎脚本は小気味よく描きますね。
希は、人生経験、恋愛経験の未熟さから、多くのひとを振り回し、傷つけ、結局、自分が泣くはめになるわけです。
恋愛ドラマのてっぱん・三角関係ではありますが、主人公が徹底的にあさはかに描かれ、周囲の女たちに責められる朝ドラ「まれ」。いまの日本で、恋愛至上主義がなりを潜め、未婚、少子化が進行するなかで、主人公が恋する相手に目移りして、それによって人間関係がぎくしゃくする恋愛下手の物語はじつはピッタリなのかもしれません。
いつものパターンですと、今週中にこの話がさっくり解決しちゃいそうですが、このまま女がふたりの男を愛するという生き方に切り込んでいってくれると面白い気がします。
朝ドラの近作だと、「カーネーション」では、妻のいる男性と主人公の恋が描かれ、「花子とアン」では、準ヒロインともいえる女性が夫を捨てて駆け落ちする姿が描かれ、それが多くの支持を受けたのだから、「まれ」では、フランス菓子→フランスの音楽という流れからフランス映画に繋げて、フランス映画によくある女ひとりに男ふたりの三角関係ものを追求していくことも、女性の生き方がテーマである朝ドラとしては、まんでありやと思います(方言つかってみました)。
今日の、気になる恋のゆくえ
75話では、圭太がかませ犬かと思っていたのですが、76話では、圭太が天中殺の前の通りの灯りで、瞳キラキラしているアップは、こっちが本命かと思わせる魅力にあふれていました。無敵そうだった大輔が、希の返事を聞く前に、余談を語りだし、このひとも意外と気が小さいとこあるのかもなんて思わせる面を見せて、もしや、大輔のほうがかませ犬? と、まんまと恋愛ドラマの仕掛けにハマっております。
今日の、小姑ツッコミ
藍子(常盤貴子)が天中殺に能登の食材をたくさん送ってくるエピソード。見ると生ものではなく加工したものが多いです。そりゃ生ものを大量には送れませんので当然だと思いますが、文(田中裕子)が、干し柿を旬(新鮮な)にとれる食べ物と言っています。素材をそのまま生かしている意味なのはわかるのですが、そうすると、能登では旬のものが美味しいという話とはずれてきます。干鱈も干し柿も日持ちしない食品を長持ちさせる生活の知恵からできていて、シンプルに見えても手間や時間がかかっているので、文いわく「こねくり回す」作り方であるフランス菓子との比較対象に使うにはなかなか難しい要素なのかなと思いました。フランスにも保存食はいっぱいあるし、食に精通しているであろう大悟(小日向文世)が干鱈の存在と食べ方にそこまで感動するとは思えないんですよね。逆に狭い世界に暮らしている文が、能登と共通するフランス菓子の奥深さに気づくエピソードがあれば解決ですけれど。私は、「まれ」って、単純に、能登のお国自慢を紹介するドラマではなくて、それらにこめられた、長い時間のなかで熟成される生活の尊さを描いていると思って見ているのですが、違うのかな。
(木俣冬)
エキレビ!にて月〜土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから
いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))