究極に効率的な「攻めの睡眠」をスマホで実現「快眠生活。」制作の秘密1
「実況パワフルプロ野球」など数々の人気ゲームでおなじみのコナミグループ。その中でもフィットネスクラブ「コナミスポーツクラブ」の運営をはじめ、健康サービス全般を手がけるのがコナミスポーツ&ライフです。その同社が昨秋から3本の健康アプリをリリースしました。中でも「快眠生活。」はスマホで一日の生活リズムを提案するという優れモノ。開発意図についてインタビューしました。
快眠生活。
ダイエットサポートアプリ「カロリサイズ」、ウォーキングアプリ「Dr.Walk」に続き、5月12日から配信が開始された生活リズム提案アプリ。体内時計をつかさどる「サーカディアンリズム」にもとづき、良質な睡眠を導くための生活リズムを提案する。スマホのセンサーを利用し、睡眠状況の記録や可視化もできる。
───みなさん、簡単に自己紹介をお願いします。
滝澤 コナミスポーツ&ライフの商品開発部でプロデューサーをしている滝澤慶です。もともとゲーム開発を手がけるコナミデジタルエンタテインメントで、携帯電話ゲームの運営などを手がけていました。その後、コナミの経営企画部を経由して、1年半前に弊社に移動してきました。ヘルスケアのトレンドがデジタルに移行しつつある中、コナミグループはデジタルとヘルスで両方のノウハウを持っているので、ぜひ挑戦するべきだろうと。
蛭田 同じくプロデューサーの蛭田雄一です。コナミデジタルエンタテインメントで「実況パワフルプロ野球」シリーズなどの開発にプログラマーとして参加した後、ガラケーやスマホのモバイルゲームやソーシャルゲームのディレクターを担当し、弊社に移動してきました。社内で開発チームを強化したいということで、呼ばれました。
白戸 プログラム開発・クオリティ部で統括プロデューサーをしている白戸拓也です。僕はもともと施設のマネージャから始まって、インストラクター向け研修プログラムなどを作成するようになりました。そこから本社に移り、ダイエットやダンス、格闘技などのプログラムを開発したり、指導者を養成する仕事をした後、3年前から今の仕事をしています。最近は脳科学の研究者と認知能力を向上させる方法論の研究などもしています。
滝澤 自分たちは開発はできますが、ヘルスケアに関する知見がありません。そのため白戸さんと一緒になって開発しています。もともと白戸さんの方で、スマホやアプリを活用したヘルスケアの新規ビジネスを立ち上げたいと提案されていて、そこに僕らが参加した流れですね。
───まさに両方の知見があわさったわけですね。ちなみに失礼ですが年齢は・・・
滝澤:僕は34歳です。
蛭田:僕は31歳ですね。
白戸:僕は52歳です。
───おおー、20歳近く違うのですね。
滝澤:実際、白戸さんは業界でもめずらしい存在だと思います。52歳で最新のデジタルヘルスケアの知見をお持ちで、アプリ開発にも参加してもらっているわけですからね。余談ですが以前、格闘ゲームの開発で「キャラクターの中の人」として、モーションアクターの経験もあると伺いました。
白戸:僕、格闘ゲームが大好きで、昔はけっこうハマって遊んでたんです。
───開発はどのようにスタートしたんですか?
滝澤:もともと健康な生活を送るには「食事」「運動」「休養」の3要素があり、これらをデジタル化・可視化して、多くの人に提供したいという考えがありました。これをスマホのアプリにすれば、我々のサービスがより外に広げられるだろうと。これがそのまま「カロリサイズ」「Dr.Walk」「快眠生活。」につながりました。
───ものすごい王道ですね。
滝澤:なにしろテーマが健康ですからね。そのうえで、あまりゲームっぽくしないように、ツール的なアプリを作ることにしました。ゲーム的にしすぎると逆に説得力が薄まったり、お客様を限定しかねないと考えたからです。もちろん、継続して使ってもらうための工夫など、ゲーム的なノウハウは随所に入れています。
───アプリの開発はどのように進んだのですか?
蛭田 一度に3本を作ることはできないので、「カロリサイズ」「Dr.Walk」「快眠生活。」と、順々に作っていった感じです。実際の開発では、まず白戸さんの方から問題提起やアプリのイメージをいただいて、開発側もアイディアを出し合い、お互いに企画をつめていきました。「こういうことをやりたいです」「だったら、こういう仕掛けが必要になります」「こんな画面デザインになります」という感じですね。
───専門家の知見がガッツリ入るという、珍しいやり方ですね。
蛭田 もちろん、技術的な問題などで実現できなかった部分もあります。全体的なバランスをとりつつ、具体的な仕様に落とし込んでいく感じですね。実装はゲームを中心にアプリ開発を手広く手がけている、外部の協力会社にお願いしました。
───「快眠生活。」でいえば、どんなアプリにしたかったのですか?
白戸 ひとことでいうと、「睡眠を軸とした生活リズムのコンサルタントアプリ」でしょうか。そもそも論で言うと、この数十年で社会の睡眠に対する認識が変わってきました。「休息のために眠る」から「健康のために眠る」、そして「パフォーマンスを上げるために眠る」といった具合です。そして、そのためには日中の生活が重要であることが、わかってきたんです。
───昼と夜がリンクしているのですね。
白戸 実際、ここ数年で分子生物学の見知から、体内時計と健康の関係が徐々にわかってきました。それと関係して、日中で何時くらいにどんな行動をすると、良質な睡眠をとりやすくなるというメソッドがわかってきたんです。それをアプリにしたいと考えて、お二人と相談した結果、このような形になりました。
───「快眠生活。」でも睡眠状態をチェックする機能と、昼食や軽い運動など、日常の生活スケジュールをプッシュしてくれたる機能があります。
白戸 そもそも、ふつう睡眠って時間しか気にしませんよね。「週末だから8時間寝よう」とか。でも睡眠の質が可視化できて、それが日常の生活と関係していることがわかれば、ちょっとライフサイクルが変わるんじゃないかなと。僕も昔は4時間半しか寝てなかったんですが、いつも午後2時くらいになると眠くなったり、体調が良くなかったりしていたんですよ。それが最近、睡眠を意識するようになって、ずいぶん健康的になりました。これをみんなに提供できたら良いなと。
───なるほど。
白戸 実際、インストラクターからマネジメント業務に移ったとき、「デスクワークに向いてないから眠くなるのかな」と思っていたんですが、全然違いましたね。単純に慢性的な睡眠不足だったという(笑)。
───とはいえ、スマホでどうやって睡眠の分析ができるのでしょうか? アプリを起動して枕もとにスマホをおくだけで良いというのが、すごく不思議です。
蛭田 今のスマホにはジャイロセンサーと傾きセンサーが内蔵されています。この二つのセンサーから本体の状態をチェックして、睡眠の状況を判別しています。そのため敷き布団の上に置いてもらうことが重要で、床などの上では見知できません。
───ええーっ? そんな微細な動きで睡眠の質がわかるのですか?
白戸 人間は睡眠中にレム睡眠とノンレム睡眠と呼ばれる状態を、約90分周期で繰り返しています。一晩で5回繰り返すと7時間半になり、だいたい平均的な睡眠時間になりますよね。
───たしか、レム睡眠が「浅い眠り」でノンレム睡眠が「深い眠り」ですよね。
白戸 そうですね。もう少し詳しく説明すると、レム睡眠は体のスイッチはオフですが、脳のスイッチはオンの状態です。人間はレム睡眠の時に夢を見ると言われていて、記憶にも関係していると言われています。逆にノンレム睡眠は脳のスイッチはオフで、体のスイッチはオンの状態です。たとえば、寝返りを打つのはノンレム睡眠の時だけで、一晩で平均5〜20回くらい寝返りがみられます。このレム睡眠とノンレム睡眠のパターンがハッキリしていることが、良質な睡眠には重要です。そのためスマホの傾きなどを計測していくと、睡眠状況が計測できるというわけです。
───なるほど〜。勉強になります。
蛭田 もちろんスマホで計測できるのは参考値にすぎません。ちゃんと計測しようとしたら、一回で数万円くらいのコストがかかってしまいます。でも手軽にチェックしてもらうにはいいかなと。
───ちなみに、僕の睡眠状態をチェックしてもらってもいいですか?
白戸 ノンレム睡眠がしっかり取れていませんよね。しかも深夜0時半から30分くらい覚醒されています。
───そうなんですよ。でも、全然覚えてなくて・・・。
白戸 いろんな可能性が考えられますが、一番大きいのは睡眠時無呼吸症候群です。いびきと10秒以上の呼吸停止状態が交互に起こる病気で、さまざまな合併症の原因にもなります。
蛭田 いびきは録音されていませんか? 「快眠生活。」にはいびきの周波数帯を見知して、自動的に録音する機能があります。人の会話などは録音しないようになっていて、マイクの感度も設定できます。
───いえ、いびきは一回も録音されていません。実はうちは猫を三匹飼っていて、深夜3時ごろに必ず餌をねだって人を起こすんですよね。うちは寝室が1Fでリビングが2Fなので、階段を上がって猫に餌をあげてから、ソファーに倒れ込む生活が続いています。もしかしたら、それが原因かも・・・。
蛭田 猫ちゃんが可愛そうですが、寝室のドアを閉めてみるのもいいですね。
───そうですね、さっそく試してみます。でも、病気につながるかもしれない、といったことが一目でわかるというのはスゴいですね。改めて驚きました。
後編に続く
(小野憲史)
快眠生活。
ダイエットサポートアプリ「カロリサイズ」、ウォーキングアプリ「Dr.Walk」に続き、5月12日から配信が開始された生活リズム提案アプリ。体内時計をつかさどる「サーカディアンリズム」にもとづき、良質な睡眠を導くための生活リズムを提案する。スマホのセンサーを利用し、睡眠状況の記録や可視化もできる。
業界でもめずらしい存在
───みなさん、簡単に自己紹介をお願いします。
滝澤 コナミスポーツ&ライフの商品開発部でプロデューサーをしている滝澤慶です。もともとゲーム開発を手がけるコナミデジタルエンタテインメントで、携帯電話ゲームの運営などを手がけていました。その後、コナミの経営企画部を経由して、1年半前に弊社に移動してきました。ヘルスケアのトレンドがデジタルに移行しつつある中、コナミグループはデジタルとヘルスで両方のノウハウを持っているので、ぜひ挑戦するべきだろうと。
蛭田 同じくプロデューサーの蛭田雄一です。コナミデジタルエンタテインメントで「実況パワフルプロ野球」シリーズなどの開発にプログラマーとして参加した後、ガラケーやスマホのモバイルゲームやソーシャルゲームのディレクターを担当し、弊社に移動してきました。社内で開発チームを強化したいということで、呼ばれました。
白戸 プログラム開発・クオリティ部で統括プロデューサーをしている白戸拓也です。僕はもともと施設のマネージャから始まって、インストラクター向け研修プログラムなどを作成するようになりました。そこから本社に移り、ダイエットやダンス、格闘技などのプログラムを開発したり、指導者を養成する仕事をした後、3年前から今の仕事をしています。最近は脳科学の研究者と認知能力を向上させる方法論の研究などもしています。
滝澤 自分たちは開発はできますが、ヘルスケアに関する知見がありません。そのため白戸さんと一緒になって開発しています。もともと白戸さんの方で、スマホやアプリを活用したヘルスケアの新規ビジネスを立ち上げたいと提案されていて、そこに僕らが参加した流れですね。
───まさに両方の知見があわさったわけですね。ちなみに失礼ですが年齢は・・・
滝澤:僕は34歳です。
蛭田:僕は31歳ですね。
白戸:僕は52歳です。
───おおー、20歳近く違うのですね。
滝澤:実際、白戸さんは業界でもめずらしい存在だと思います。52歳で最新のデジタルヘルスケアの知見をお持ちで、アプリ開発にも参加してもらっているわけですからね。余談ですが以前、格闘ゲームの開発で「キャラクターの中の人」として、モーションアクターの経験もあると伺いました。
白戸:僕、格闘ゲームが大好きで、昔はけっこうハマって遊んでたんです。
「寝ることで攻める」みたいなアプリにしたかった
───開発はどのようにスタートしたんですか?
滝澤:もともと健康な生活を送るには「食事」「運動」「休養」の3要素があり、これらをデジタル化・可視化して、多くの人に提供したいという考えがありました。これをスマホのアプリにすれば、我々のサービスがより外に広げられるだろうと。これがそのまま「カロリサイズ」「Dr.Walk」「快眠生活。」につながりました。
───ものすごい王道ですね。
滝澤:なにしろテーマが健康ですからね。そのうえで、あまりゲームっぽくしないように、ツール的なアプリを作ることにしました。ゲーム的にしすぎると逆に説得力が薄まったり、お客様を限定しかねないと考えたからです。もちろん、継続して使ってもらうための工夫など、ゲーム的なノウハウは随所に入れています。
───アプリの開発はどのように進んだのですか?
蛭田 一度に3本を作ることはできないので、「カロリサイズ」「Dr.Walk」「快眠生活。」と、順々に作っていった感じです。実際の開発では、まず白戸さんの方から問題提起やアプリのイメージをいただいて、開発側もアイディアを出し合い、お互いに企画をつめていきました。「こういうことをやりたいです」「だったら、こういう仕掛けが必要になります」「こんな画面デザインになります」という感じですね。
───専門家の知見がガッツリ入るという、珍しいやり方ですね。
蛭田 もちろん、技術的な問題などで実現できなかった部分もあります。全体的なバランスをとりつつ、具体的な仕様に落とし込んでいく感じですね。実装はゲームを中心にアプリ開発を手広く手がけている、外部の協力会社にお願いしました。
───「快眠生活。」でいえば、どんなアプリにしたかったのですか?
白戸 ひとことでいうと、「睡眠を軸とした生活リズムのコンサルタントアプリ」でしょうか。そもそも論で言うと、この数十年で社会の睡眠に対する認識が変わってきました。「休息のために眠る」から「健康のために眠る」、そして「パフォーマンスを上げるために眠る」といった具合です。そして、そのためには日中の生活が重要であることが、わかってきたんです。
───昼と夜がリンクしているのですね。
白戸 実際、ここ数年で分子生物学の見知から、体内時計と健康の関係が徐々にわかってきました。それと関係して、日中で何時くらいにどんな行動をすると、良質な睡眠をとりやすくなるというメソッドがわかってきたんです。それをアプリにしたいと考えて、お二人と相談した結果、このような形になりました。
───「快眠生活。」でも睡眠状態をチェックする機能と、昼食や軽い運動など、日常の生活スケジュールをプッシュしてくれたる機能があります。
白戸 そもそも、ふつう睡眠って時間しか気にしませんよね。「週末だから8時間寝よう」とか。でも睡眠の質が可視化できて、それが日常の生活と関係していることがわかれば、ちょっとライフサイクルが変わるんじゃないかなと。僕も昔は4時間半しか寝てなかったんですが、いつも午後2時くらいになると眠くなったり、体調が良くなかったりしていたんですよ。それが最近、睡眠を意識するようになって、ずいぶん健康的になりました。これをみんなに提供できたら良いなと。
───なるほど。
白戸 実際、インストラクターからマネジメント業務に移ったとき、「デスクワークに向いてないから眠くなるのかな」と思っていたんですが、全然違いましたね。単純に慢性的な睡眠不足だったという(笑)。
スマホの傾きで睡眠状態を検知
───とはいえ、スマホでどうやって睡眠の分析ができるのでしょうか? アプリを起動して枕もとにスマホをおくだけで良いというのが、すごく不思議です。
蛭田 今のスマホにはジャイロセンサーと傾きセンサーが内蔵されています。この二つのセンサーから本体の状態をチェックして、睡眠の状況を判別しています。そのため敷き布団の上に置いてもらうことが重要で、床などの上では見知できません。
───ええーっ? そんな微細な動きで睡眠の質がわかるのですか?
白戸 人間は睡眠中にレム睡眠とノンレム睡眠と呼ばれる状態を、約90分周期で繰り返しています。一晩で5回繰り返すと7時間半になり、だいたい平均的な睡眠時間になりますよね。
───たしか、レム睡眠が「浅い眠り」でノンレム睡眠が「深い眠り」ですよね。
白戸 そうですね。もう少し詳しく説明すると、レム睡眠は体のスイッチはオフですが、脳のスイッチはオンの状態です。人間はレム睡眠の時に夢を見ると言われていて、記憶にも関係していると言われています。逆にノンレム睡眠は脳のスイッチはオフで、体のスイッチはオンの状態です。たとえば、寝返りを打つのはノンレム睡眠の時だけで、一晩で平均5〜20回くらい寝返りがみられます。このレム睡眠とノンレム睡眠のパターンがハッキリしていることが、良質な睡眠には重要です。そのためスマホの傾きなどを計測していくと、睡眠状況が計測できるというわけです。
───なるほど〜。勉強になります。
蛭田 もちろんスマホで計測できるのは参考値にすぎません。ちゃんと計測しようとしたら、一回で数万円くらいのコストがかかってしまいます。でも手軽にチェックしてもらうにはいいかなと。
───ちなみに、僕の睡眠状態をチェックしてもらってもいいですか?
白戸 ノンレム睡眠がしっかり取れていませんよね。しかも深夜0時半から30分くらい覚醒されています。
───そうなんですよ。でも、全然覚えてなくて・・・。
白戸 いろんな可能性が考えられますが、一番大きいのは睡眠時無呼吸症候群です。いびきと10秒以上の呼吸停止状態が交互に起こる病気で、さまざまな合併症の原因にもなります。
蛭田 いびきは録音されていませんか? 「快眠生活。」にはいびきの周波数帯を見知して、自動的に録音する機能があります。人の会話などは録音しないようになっていて、マイクの感度も設定できます。
───いえ、いびきは一回も録音されていません。実はうちは猫を三匹飼っていて、深夜3時ごろに必ず餌をねだって人を起こすんですよね。うちは寝室が1Fでリビングが2Fなので、階段を上がって猫に餌をあげてから、ソファーに倒れ込む生活が続いています。もしかしたら、それが原因かも・・・。
蛭田 猫ちゃんが可愛そうですが、寝室のドアを閉めてみるのもいいですね。
───そうですね、さっそく試してみます。でも、病気につながるかもしれない、といったことが一目でわかるというのはスゴいですね。改めて驚きました。
後編に続く
(小野憲史)