駄目男にはトイレが似合う「まれ」59話
週の後半になるとたいてい盛り上がる「まれ」。５９話は、池畑大悟（小日向文世）の欠点（あがり症）と過去（最愛のひとー前妻を亡くしている）と葛藤（店を潰していいのか）と覚悟（テレビに出る）が、テレビ対決本番１時間半前から２分前の間にギュギュッと濃密に描かれました。
トイレに引きこもった大悟を、台に乗って上からのぞきこみながら励ます希（土屋太鳳）。２９話で、破門されてしょげる圭太（山崎賢人／大は立）を奮い立たせた希節再びです。この画はもともと小柄な希を大きく見せ、トイレのなかの大悟は小さく見せて効果的です。こういう分かりやすさはいいなあ。
一連のトイレシーン、やるな、と感じたのは、小日向さんの頭部を真俯瞰で撮っていること。彼の額の広さから頭頂部は・・・髪の毛が黒々していて安堵しましたが、上から撮る！？ というドキドキがたまりませんでした。
能登の徹（大泉洋）のターンといい、今回といい、「まれ」ではトイレシーンがよく出てきます。どっちも駄目父が葛藤する場所として。何か意図があるのか、気になります。トイレって表に出て来る存在ではないけれどないと困るすごく大事な場所ではありますよね。
勝手に、今日の名言
「シーラカンス」「とっくに滅びた恐竜」「アトランティス」「もう使われん昔のお金」「ネッシー」「マヤ文明」「化石」「ローマ帝国」「遺跡」「雪男」「こけおどし」「トイレの詰まりを直すスッポン・・・」
大悟の怒りに火をつけるため、もはや省みられない昔のものを思いつく限りあげていく希たち。
ネッシーを「いるかいないかわからないはったりだけの生き物」という輪子（りょう）がおかしい。
輪子、なかなかいいキャラ。覚悟ができない大悟に「店 潰していいよ。全部なくなっちゃったらさ 私の占いで食ってけばいいんだから。守らないとね 彼女のためにも」なんて懐の大きさを見せます。
彼女とは大悟の先妻。マ・シェリ・シュ・シュの店名の元になったひとらしいですが、これは夫婦が互いのことを「すっごく愛しい人」と思ってた意味かなあという気も。大悟のことでもあるのかなあと。そういう大事なひとの喪失が「何かを得たいなら 何かを捨てろ。」 48話という考えに至らせたのかもしれないですね。
台詞で描かれない部分を考えさせる場面が今日はあってよかった。
（木俣冬）
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いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい（54話までを総括））
