『連続テレビ小説 まれ Part1』NHK出版

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朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)6月4日(木)放送 第10週「逆転一発パンケーキ」第58話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出:一木正恵

「何なの? 『クビになったくせに諦めません。潰れそうならお手つだいします。いや だけど 取材で悪口言われたらキレちゃいます』? 正しすぎて気持ち悪い。」と陶子(柊子)が言えば、
「夢に向かって前向きにGOみたいなひとって 何か うさんくさいし。」と美南(中村ゆりか)まで。
これは視聴者の代弁でしょうか。
でも、それを受けた希(土屋太鳳)は、はじめて言われたとびっくり。「ずっと夢をっちゃ諦めてきたさけ もう諦めとないげんよ。」と返答します。
すると、すぐに寝返る美南。まだ希派になれない陶子。
夢を見ることは決して悪いことではないけれど、夢を見ると、「正しすぎる」とか「うさんくさい」とかになってしまう世の中のやっかいさをさりげなく描いているこの部分、見逃せません。
ほどよく夢とつきあおうなんて甘くて、他人にどう言われても貫く覚悟がないと夢は叶わないってことなんでしょうか。
都会はこのように厳しいですが、能登ではみんなが希の夢を応援していて、テレビ対決をみんなで見ようと集まっています。
お母さん・藍子(常盤貴子)は、弥太郎(中村敦夫)の漆工房でバイトをはじめ、べっぴんさんが来たと周囲のひとたちに歓迎されて、いい感じ。徹(大泉洋)にある種依存して、ずっと家庭にこもっていた藍子が土地に根っこをはりたいという自分の夢に目覚め、家庭の外に自分を開いていくことがはじまったようです。
皆が夢に向き合っているなか、テレビ対決がはじまって・・・でも大悟(小日向文世)に問題発生で・・・ どうなるんでしょうか。

今日の小姑ツッコミ


テレビ対決のお題・ゆずを使ったケーキのアイデアに悩み苦しむ大悟。大げさに音を立てたり、厨房をウロウロしたり、頭の後ろで手を組んだり、なんだか悩んでいるひとの紋切り型演技のオンパレード。なぜ、名優・小日向さんがそんなことを!
その一方で、テレビ対決前夜、朝方までメレンゲつくっている希を、天中殺の外から見てる大悟。彼も朝までマ・シェリ・シュ・シュで試作に励んでいたってことなんでしょうか。
15分の短い間に、このように、察してね的な部分と、前述の単純化された部分とが混在していることが多い「まれ」。これも視聴者を離してしまう要因のひとつではないでしょうか。
天中殺の厨房に貼ってある「八方来財」とは八方から財運に恵まれるという中国の熟語ですが、八方に気を配り過ぎているのではと老婆心。輪子は西から幸運が来るって言ってるんだし、それこそ覚悟を決めて、方向性をびし!と定めたほうがいいのでは。
(木俣冬)

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いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))