Photo by zhenghu feng via flickr

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 やまもといちろうです。そういえば、1年以上マクドナルドに足を向けていません。

 労働行政を見ていると、いろんな左翼系言論を見て状況の「座標軸」を確認するという定点動作があるのですが、最近、井上伸さんという微妙な感じの人の議論がお気に入りで、ちょいちょい目を通しています。

 もちろん「言われてみればそうだね」と納得できるものもあれば「この人、いったい何を書いているの」と怪訝に思う内容もあるのは、言論を人で追ったとき起きる共通の現象ではあるわけですが、このところの雇用と賃金についての議論はとても興味深く読めたわけです。

 例えば、アベノミクスで非正規雇用が過去最大とかいう議論を引っ張ってきて、その枕に別のエントリーで彼が書いたことに対する大量の罵倒コメントに対する反応までしており、ある種のコミュニティ化している状況が見て取れます。

 もちろん、長期でアベノミクスを見たときに、でかい博打が外れれば、日本経済全体がオケラ街道まっしぐらになる懸念は大きいので、経済政策がミスったときどうしようもなくなる可能性があるよね、というのは同意です。

 ただそれは、どのような経済政策でも狙いがあり、それを達成するための政策があって、それが外れれば国として面倒なことになるのは同じですから、アベノミクスだけを言ってもしょうがないんじゃないのと思うわけです。

 また、アベノミクスで非正規雇用が過去最大といっても、不破雷蔵さんが指摘するとおり非正規雇用の増大はむしろ65歳以上が際立って増加しております。要するに、井上さんのいう「非正規雇用は過去最大」といっても、それは単純にアベノミクスによって経済がそれなりに好況になって、人手不足が背景により定年退職した65歳以上がシルバー雇用として嘱託で各職場に再雇用されているというわけであります。

 雇用情勢についてはこれが実態であり、「アベノミクスが貧困を拡大した」という議論も、元を正せば1980年代後半のバブル崩壊以降、一貫して格差は拡大しているともいえます。一方で、世界的に見れば日本は貧困が少ないほうで、相対的貧困率がOECDの中で日本は高いといっても、日本の場合は中央値が高いので相対的貧困率で見ると高く見えてしまうというだけであったりもします。

 同じ統計を見ても、立場や意見によっては見え方が大きく異なり、主義主張を裏付けるためにいろんなことを言うのは右翼も左翼も変わらないわけですから、やはり読む側のリテラシーというのはいかに大事なのか、またネット上ででもリアル社会でもきちんとした反論というものの機能の大事さは良く理解できるところでありますね。

 みなさま素敵なゴールデンウィークをお過ごしください。

著者プロフィール

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

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