16日、都内でメルシャンのキリングループ入りに合意して握手するキリンの加藤社長(左)とメルシャンの岡部社長(撮影:東雲吾衣)

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キリンビール<2503>の加藤壹康社長とメルシャン<2536>の岡部有治社長は16日、東京都千代田区の東京會舘で共同記者会見を開き、キリンがメルシャンの発行済み株式総数の過半数を取得して連結子会社化し、総合酒類グループの形成を目指すことで合意したと発表した。

 キリンは17日から12月18日までの32日間でメルシャン株の公開買い付け(TOB)を実施する。発行済み株式の50.12%と過半数の取得を目標とし、それを超える応募があった場合でもその一部や全株は買い付けず、メルシャンの東京証券取引所への上場は維持する考え。1株あたりの買い付け価格は、15日までの過去3カ月間の平均終値より28%高い370円で、取得額は247億9000万円になる。TOB成立後、キリンビールは、メルシャンをキリンビバレッジと同等のグループ子会社として位置づけ、07年3月末のメルシャン株主総会後に取締役2人、監査役1人を派遣する。07年7月にキリンが持ち株会社化された後は、「キリンホールディングス」の傘下に入る。

 また、ビールシェア2位、発泡酒・第3のビール・チューハイで首位のキリンに、ワインで業界2位、焼酎(甲種)・チューハイで5位のメルシャンが加わったことで、「国内最強」(両社)の酒類グループが誕生することになる。キリンによると、ワインでは2社の出荷金額(05年推計)を合算すると382億円(キリン87億円+メルシャン382億円)になり、400億円で首位を独走するサントリーに肉薄、チューハイでは圧倒的な首位を確保する。

 TOBが成立すれば、焼酎・チューハイ事業をキリン、ワイン事業をメルシャンにそれぞれ生産から販売までの資源を一元化し、今後の市場拡大が望まれる両事業で競争力を強化。キリンの売り場展開力やマーケティング力、メルシャンが有する大手量販店への影響力や40を超える豊富なワイン商品など両社の強みを掛け合わせ、さらなる収益向上を目指すとしている。

 キリンの加藤社長は、TOBに踏み切った理由について「70年に及んで築き上げられた事業、従業員、有力なブランドをキリングループとしても後押しすることができる」と説明し、両社の強みを今後も共存させる考えを強調した。

 一方の岡部・メルシャン社長は、キリン傘下入りについて「これまで(筆頭株主の)味の素<2802>とはシナジーを出せる場面がなかった。酒類事業のメルシャンの将来を考えると、キリンとの提携がベストと考えた」と歓迎し、買収防衛策との見方を否定した。

 今回の提携は、ビール販売の年間首位奪取を目前に控え、事業の選択・集中を進めて酒類業界での地位を確かなものにしたいキリンと、チューハイ事業で激化する値下げ競争に出遅れ、お家芸のワインに集中したいメルシャンの思惑が一致したもの。加藤社長によると、今年春ごろに両社長が同席した際、提携の可能性が話題になり、7月には検討チームを組織して協議入り。9月に提携が固まった後、メルシャン首脳は、筆頭株主の味の素を訪ね、その意向を伝えた。

 メルシャンはキリングループ入り後も、岡部社長を中心とする経営体制を維持し、社名も変更しない方針だ。【了】

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