前回のエントリーでは、「オファーを受けた選手の処し方」について主に述べました。続いては、広島側について述べます。
 
 まず僕は、森脇良太の移籍はあり得るのではないかと思っています。ここは勘違いしてほしくないのですが、「移籍してほしい」なんてこれっぽっちも思っていません。彼は名古屋戦の「パスシュート」、やはり名古屋戦のロスタイムゴール、もちろん劇場や各メディアにおけるさまざまな広島愛を炸裂させる発言で、広島の魂だと思っています。
 
 ただ、幾つかの要素が重なっており、彼が決断すれば広島には円満に送り出す環境が整っているのでは、と思います。
 


 ■1)チームと森脇の評価に開きがある
 ■2)DFに多くの選手が加入した
 ■3)年齢的な問題がある


■1)チームと森脇の評価に開きがある


 昨年の時点で、森脇が契約更改で揉めたことは記憶に新しいと思います。
 


 http://www.chugoku-np.co.jp/Sanfre/Sw201112280060.html
  J1広島のDF森脇良太(25)が27日、チームに残留することを表明した。今季で2年契約が満了するが、7日にあった1回目の交渉では態度を保留していた。クラブは2年契約を提示しており、代理人を通じて詳細を詰め近く正式契約を結ぶ。
 


 こちらでは2年契約を提示とありますが、森脇が結んだのはおそらく1年契約だと思います。だから今、彼がターゲットになっている。浦和には移籍金を払う余裕は無さそうですから、森脇クラスの選手(代表では当落線上より少し下)を移籍金積んで獲得することはない、移籍金が発生しないから獲得に動いている、という推測です。


 重要なのは、なぜ森脇は昨年態度を保留したかというところです。これが「ミシャ体制の終えん後、チームのビジョンに不安を感じた」からなのか、「待遇面で希望額と開きがあった」からなのか、両方なのか、それはわかりません。しかし1年契約であろうことを考えると、いずれにせよ森脇自身とチームの評価に乖離があり、その差は昨年末では埋まりきらなかったということが考えられます。


 そういう条件を踏まえて、ここで浦和が広島以上の年俸を提示したら? もちろん広島も今年の活躍を踏まえてそれなりの条件提示をするでしょうが、浦和と競る財力はないですし、サポカンなどでたびたび織田強化部長が発言しているようにチームを去ると決めた選手を強く引き止めることはないのではと思います。


■2)DFに多くの選手が加入した


 より大きな競技的問題は、こちらです。2012年11月3日で、広島はすでに右CBとして塩谷司を水戸から「シーズン途中で」完全移籍によって獲得し、来季の戦力としてDFパク・ヒョンジンを獲得しています。今季のJ1に出場した選手と、来季に加入する選手を並べて見るとよくわかりますが、
 

 
 
 


 マルでかこったところを見ると、森脇・ソッコ・塩谷と3人の候補者に加え、来季加入するパク・ヒョンジンも水本裕貴が存在する以上はここのポジションに顔を出す可能性もあります。左サイドの選手ということですが、ボランチもできるという特性があり、もし左利きなのであれば(公式サイトに記載なし)右CBとしてカットインを求められる可能性もあります。
 
 つまり、チームにとって森脇のポジションはだぶつき気味なのです。もし森脇が移籍するなら、痛いですし悲しいことではありますが、「壊滅的な打撃を受ける」状態ではありません。
 
 さらにいえば、冒頭にカギカッコつきで書いた通り、塩谷司を「シーズン途中で」完全移籍させたことは何を意味するのか? 通常、即戦力ではない選手(出場したものの基本的に彼は森脇の控えです)をシーズン途中で加入させることは、広島の補強ポリシーとしてはほとんどありえません。森脇がチームを離脱することを想定し、来シーズンの主軸として考えていた塩谷を前倒しで獲得し、チームに馴染ませたい意図があった、という推測はそれほどおかしなものではないと思います。
 
 いずれにせよ、森脇を来季以降の主軸と考えているならば、これほどまでにポジションがかぶる選手を保有するわけがないと思います。今シーズンは存在感が薄いですが、横竹翔だっているわけですしね。
 


■3)年齢的な問題がある


 1)とかぶるようでかぶらない話ですが、代表としてアジアカップを経験した森脇も26歳です。いつまでも若くはいられませんし、これから選手として円熟期に入るうえで、待遇という部分は徐々にウエイトを増してきます。
 
 広島というチームはそもそも、あまりお金を積めるチームではありません。佐藤寿人の推定年俸は4700万円という報道があり、しかもそれは一昨年から800万減です。だいたい5000万円前後が出せる最高年俸であり、森脇が寿人と同じぐらいの位置に来ることが仮にあるとしても、この水準以上はありえません。
 
 サッカー選手の寿命は短いです。例えば柏木陽介は現在浦和で6000万円前後をもらっているという話ですし、鈴木啓太は8000万円程度だという話を聞きます(完全に正確ではないかもしれませんが)。いずれにせよ、広島の1.5倍〜2倍の年俸を出せる余裕があるチームだと思います。
 
 この先、ケガでプレーできない時期があるかもしれませんし、早期の引退を強いられる可能性もあります。プロ選手なら誰だってあります。26歳という年齢は微妙で、海外移籍をするなら押しも押されない主力として臨まないといけないし、先ごろ書いたエントリーどおりドメスティックな選手であると割りきって生きていくのも手であると思います(自分はそうあってほしくないですが)。
 
 
 以上のことをもう一度おさらいすると、「チームとの評価に開きがあり」「自分のポジションに多くの選手がおり」「年齢的にも年俸アップが望ましい」状態に置かれた森脇が、ミシャが監督を務め槙野・柏木といった元同僚が所属する浦和を新天地に求めてもまったく不思議ではないと思っています。
 
 僕個人としては、もちろん移籍してほしくありません。彼のような実力とキャラクターを兼ね備え、かつダメキャラとしてサポーターからいじられる選手なんてそう多くありません。しかし、「どうしても移籍したい」と仮に思ったとするなら、その選手に無理を言って残ってほしいとも思いません。 これまでの功績に感謝し、移籍金を残さないなら痛烈になじり(笑)、送り出したいとおもいます。


※なお、国内に移籍することについて僕の感想はこちらですでに述べています