スカイツリー大盛況の影で地元住民は当惑

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スカイツリーが予想を上回る入場者


いまが旬の女優・武井咲が出演し、BGMを斉藤和義が担当する贅沢なCMがある。東京メトロのCMである。その「空中散歩篇」には、半蔵門線の押上駅と東京スカイツリーが紹介される。5月22日に開業したツリーには、商業施設「東京ソラマチ」に来た人を含めると、この1か月で580万人以上が訪れているという(讀賣新聞、2012年6月22日付)。



そのうち、ツリーの展望台に登った人は約40万人。7月10日までは完全予約制だが、7月11日からは当日券も発売されるようだ。東武鉄道は、ツリーおよびソラマチの1年目の来場者を3200万人と見込んでいた。だが、ふたを開けてみたら、約1か月で来場者がその2割弱に達するほどの人気だったのである。



筆者の自宅は浅草なので、部屋からツリーがよく見えるし、自転車で15分くらい走るとツリーに到着する。それでも、まだツリーにもソラマチにも行っていない。行った人たちから「とにかく混んでいて、ツリーもソラマチもゆっくり見られない」と聴くからだ。それも、「平日が空いている」という噂が出回っていたせいか、土日だけでなく平日もかなり混んでいる。


突然の変貌に下町の住民たちは戸惑いも


ところで、ツリーの最寄り駅は、東武スカイツリーラインの「とうきょうスカイツリー駅」と成田スカイアクセス京成線の「押上駅」。その周辺には、東京都墨田区押上や向島、吾妻橋、業平といった地域が含まれる。いわゆる「昔ながらの下町」と呼ばれる町である。そして、ツリーができてから、この「下町」環境が激変しているのである。



6月22日付の東京新聞によると、ツリー周辺は「未明まで喧騒に包まれる眠らない町に変貌」し、「住民は戸惑っている」そうだ。記事では、夜のツリー周辺を記者が歩いた様子がルポされている。ライトアップが消える午前0時には、「『グワン、グワン』と耳をつんざく爆音。若者2人がオートバイで」敷地沿いの道路を走り回る。



午前0時半。「笑い声と口笛。屋外広場で若者4人が、塔を背に記念撮影」。午前1時になると、「車が断続的にやってきて、道端に止ま」り、「塔を見上げて『すご〜い』という歓声がこだまする」。午前2時半には、ソラマチの飲食店から出てきた酔客の「がなり声」。寝静まった住宅街の夜には、たいへん迷惑な状況となっているのであった。



日中のツリー周辺では、ゴミのポイ捨てが増え、自転車の違法駐輪も増加している。世界が注目するような建築物が存在する地域なのだから、人がたくさん来るのは仕方がない。来場者が増えれば、シャッター商店街の一歩手前であったツリー周辺の商業も盛り上がることであろう。とはいえ、訪れる人々は、ツリー周辺には普通に人が住んでいることを忘れてはならない。



周辺の住民にしてみれば、東武鉄道が主体となり、墨田区も協力した上で、いきなりツリーやら商業施設やらができたという話なのである。その結果、マナーの悪い人々が撒き散らす騒音やゴミ、放置自転車などにより、地域住民が嫌な思いをしている。当たり前のことだが、来場する人は最低限のマナーを守り、マナーを守れない輩については東武鉄道や墨田区がしっかりとチェックする仕組みが、いま必要とされている。





(谷川 茂)