反捕鯨団体を標榜(ひょうぼう)するシー・シェパード(SS)は7日に発表した声明文で、同団体のアディー・ギル号元船長のピーター・ベスーン被告に対して、「日本の裁判所は、だれも傷つけようとはしていなかったと認めた」と主張した。東京地方裁判所は同日言い渡した判決で、同被告が調査捕鯨の妨害活動で「(日本の)船員がけがをしてもかまわないとの『未必の故意』があった」と認定して、有罪判決を言いわたした。

 東京地方裁判所は7日、ベスーン被告に懲役2年・執行猶予5年の判決を言いわたした。『未必の故意』とは、「ある行為が、犯罪としての結果をもたらすと確信はしていなかったが、『犯罪になってもかまわない』と判断して行為を行い、実際に犯罪としての結果をもたらした」ことを意味する。日本では「故意があった」と判断される。

 東京地裁は、ベスーン被告が調査捕鯨船に酪酸が入ったびんを投じたことに、未必の故意があったと判断し、日本人乗組員に負傷者が出ていることから、「傷害罪」を適用した。シーシェパードは東京地裁の判断をねじまげて、「だれも傷つけようとはしていなかったと、日本の裁判所が認めた」と主張した。

 東京地裁がベスーン被告の行為を「主義主張のため」、「独善的犯行」と指摘した部分は、「日本の裁判所は、(ベスーン被告の行為は)違法な捕鯨から鯨を守る信念のもとに行った作戦だったと認めた」と主張した。

 ベスーン被告は執行猶予付きの刑を言いわたされ、検察も本人も控訴の意思がないため、実際には日本からの強制退去となり7月9日にニュージーランドに帰国する。シー・シェパードは、東京地裁の“温厚”な判決を逆手にとって、宣伝材料用に「加工」した。

 シー・シェパードの声明文には、「日本の裁判所はいつも有罪判決をくだす」と、事実と異なる部分もある。ベスーン被告が日本船に乗り込むという紳士的かつ勇気ある行動で、「刑務所に15年間も入れられる危機に直面した」、「シー・シェパードはベスーン船長の無罪を勝ち取るためでなく、刑を軽減するために、50万ドル(約4400万円)以上もつかった」などと主張した。(編集担当:如月隼人)



■最新記事
調査捕鯨:妨害で捕獲半減も資源回復確認、生態解明で成果−水産庁
シー・シェパード:逮捕の船長支援で「メールと寄付お願いします」
シー・シェパードが「闘争宣言」−クロマグロの禁輸否決受けて
シー・シェパード声明「人を傷つけないのが、われわれの誇り」
シー・シェパード、日本船に“ワニの卵”投げる−声明文「冗談さ!」