by Oldiefan

人間は当たり前のように「6」や「32」といったアラビア数字の記号を見て、個数や数量を連想することができます。記号と数を結び付けるには高い認知能力が必要とされていますが、人間よりはるかに小さい脳を持つミツバチも、数を示す「記号」と概念としての「数」を結び付けて認識できることが判明しました。

Symbolic representation of numerosity by honeybees (Apis mellifera): matching characters to small quantities | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences

https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rspb.2019.0238

Bees can link symbols to numbers, study finds

https://phys.org/news/2019-06-bees-link.html

We taught bees a simple number language - and they got it

https://theconversation.com/we-taught-bees-a-simple-number-language-and-they-got-it-117816

人間の脳には860億個以上の神経細胞がある一方で、ミツバチには100万個以下の神経細胞しかありません。それにも関わらず、ミツバチは高い情報処理能力を持っていることが知られており、「ゼロ」の概念を理解できることが過去の研究から判明しています。

ミツバチは「ゼロ」の概念を理解できると判明 - GIGAZINE



そんなミツバチについて、ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT大学)の研究チームは「数字を表す記号と数の概念を結び付けられるのかどうか」を調べるため、実験を行いました。既にチンパンジーやアカゲザルなどの霊長類やハト、オウムなどの鳥類は、アラビア文字などの記号から数を理解するスキルを持っていることが知られているとのこと。

研究チームは記号と数の組みあわせをミツバチに教え込むため、ハトの実験に使用されたものと同じ記号と数字を表す図形のセットを用意しました。以下の画像が実験に使用された記号と数のセットで、「N」の形をした記号は「2」という数を表し、「逆T字」型の記号は「3」という数を表しています。



2つのグループに分けられたミツバチはY字型の迷路に入れられ、Y字型の分岐の手前で1つのグループは記号を、もう1つのグループは図形の個数で表された数を見せられました。その後、ミツバチは分岐の先にある2つの選択肢の中から、分岐の手前で見せられた記号と合致する数のある部屋、または数に合致した記号のある部屋へ入るように、繰り返し訓練されたとのことたとえば、分岐手前でN字型の表示を見たミツバチは四角や丸の図形が2つ書かれた表示がある部屋に、図形3つの表示を見たミツバチは逆T字型の表示がある部屋に入ればOKというわけ。

正しい組みあわせの部屋には甘い砂糖水が、間違った部屋にはキニーネで味付けされた苦い水が用意されていました。ミツバチは両者の違いをにおいから認識できないため、砂糖水にありつくには記号と数を結び付けるしかありません。



50回の試行を繰り返した結果、ミツバチは75%の精度で記号と数を正しく組み合わせることに成功したそうで、これは無脊椎動物において初めて記号と数を結び付けることに成功した事例だとのこと。

また、最初の訓練が終了した後に、研究チームは数を表す図形の色や形を変えて再度実験を行いましたが、やはりミツバチは記号と図形の数を一致させることに成功し続けました。



一方で、記号を見て正しい数を判断するように訓練されたミツバチは、数を見て正しい記号を判断することができず、数を見て記号を判断する訓練を受けたミツバチは、記号を見て数を判断することができませんでした。この点について研究チームのスカーレット・ハワード氏は、「この結果は人間の脳で記号と数が別の場所で処理されるのと同様、ミツバチでも両者が別の場所で処理されていることを示します」と指摘しています。また、今回の研究はあくまで記号と数を結びつける能力について調査しただけであり、ミツバチが記号そのものに対して量的価値を与えたかどうかについては不明です。



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研究チームのエイドリアン・ダイアー准教授は、「私たちは子どものころに数字記号を覚えるのが当たり前だと考えていますが、『4』という記号が表す意味を理解するためには高度な認知能力が必要です」「霊長類や鳥類が記号を数と結びつけられることは研究によって示されていましたが、昆虫でこの能力が確認されたのは今回の実験が初めてです」とコメントしています。

人間は文化によって異なる言語を使ってコミュニケーションを取りますが、数に関する概念は文化的な枠組みに依存しないため、「普遍的な言語」ともいわれています。数を表す記号をミツバチを含む他の動物が理解できるという事実は、数に関する理解を得る能力が人間に固有の能力ではなく、多くの動物にとって普遍的な能力である可能性を示唆していると研究チームは述べました。



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