サイレントキラーはいつのまにかやってくる!? 「動脈硬化」について

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執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

「動脈硬化」

は自覚症状がないまま進行するため

「沈黙の殺人者(サイレントキラー)」

とも呼ばれています。

「この間まであんなに元気だった人が、突然亡くなるなんて」という話し、聞いたことはありませんか?

この動脈硬化、一体どういった状態なのでしょうか。

ご一緒に詳しく見ていきましょう。

動脈硬化の基本情報

健康な動脈は弾力があってゴムホースのようにしなやかです。

しかし、その動脈が硬く、狭く、もろくなってしまう状態が

「動脈硬化」

です。

症状が進行すると、動脈の壁がコブのようにふくらんで血液が流れにくくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な血管トラブルを引き起こします。

動脈硬化が起こる原因には、大きく分けて次の二つがあります。

1. 加齢 


 動脈の壁に含まれている、エラスチンという成分が加齢とともに減少していくことで血管の弾力が失われます。
 また、動脈には常に心臓から強い力で血液が流れてくるため、血管の壁に負担がかかって徐々に壁が厚くなり、壁の一部が骨のように硬くなります。

2. 生活習慣の乱れ


 動脈硬化は、不規則な生活習慣の蓄積によっても進行します。
 おもな4つの危険因子として、

「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「喫煙」

が指摘されています。
 当てはまる因子の数が多いほど動脈硬化の進行も早く、血管トラブルの発症率が高くなります。
 それぞれ次のような理由で動脈硬化を進行させます。

・高血圧・・・血管に常に高い圧がかかるため、血管の壁に負荷がかかり硬くなる

・糖尿病・・・糖分を多く含む血液が流れ続けることで、血管の壁が傷つき老化が進む

・脂質異常症・・・血液中のコレステロールが増加し、余ったコレステロールが血管の壁に入り込んで血管の壁を厚くする

・喫煙・・・喫煙後30分ほど、血管は収縮した状態が継続し血圧が高くなる。また、煙草にはコレステロールを血管の壁に入り込みやすくする働きもある

動脈硬化の怖さ

厚生労働省から発表された『平成29年(2017)人口動態統計(確定数)』によれば、日本人の死因は、1位「がん」、2位「心臓病」、3位「脳血管の病気」となっています。

近年この傾向は変わらず、日本人の4人に1人は血管トラブルが原因の「心臓病」と「脳血管の病気」で亡くなっています。

とくに、脳梗塞などの「脳血管の病気」は寝たきりになる原因の第1位でもあります。

そして、動脈硬化はこうした病気になるリスクを高めるのです。

ですから、病気を予防して健康で自立した生活を送るためにも、定期的に自分の血管の状態を知り、生活習慣を見直していくことがとても大切になります。

自分の血管の状態を知る方法:セルフチェック

病院で行う検査には、動脈の硬さを調べる「CAVI検査」、動脈の詰まり具合を調べる「ABI検査」などがありますが、ここでは手軽にできるセルフチェック方法を一つご紹介します。

《こんな人は要注意!あなたはいくつ当てはまりますか?》

□ 階段を上がったり、運動をしたりすると胸に圧迫感がある

□ インスタント食品や脂っこい食品をよく食べる

□ 野菜はほとんど食べない

□ 電話が鳴ったらすぐ出ないと気がすまない

□ 運動らしい運動はほとんどしない

□ 手足のしびれや冷えを感じる

□ 高血圧気味である

□ 血糖値が高い

□ コレステロール値が高い

□ 家族に心筋梗塞や脳梗塞などを患った人がいる

□ 職場では人から頼られる存在

□ 責任感が人一倍強いと思う

□ タバコを吸う


当てはまる項目が、

・0〜 5個

:血管年齢は歳相応といえます。

・6〜10個

:血管年齢は実年齢より10歳ほど高いかもしれません。

・11個以上

:血管年齢は20歳以上高い可能性があります。


加齢にともない血管は自然に老化していくものですが、生活習慣の改善によって動脈硬化の進行を予防できる、という側面もあります。

とくに血管の状態が実年齢より高い人は、生活習慣を見直して血管を若返らせていきましょう。

動脈硬化を予防する生活習慣

動脈硬化の予防には、食事・運動・禁煙・睡眠(休息)・気分転換といった基本的な生活習慣を整えることが大切です。

なかでも

「脂肪を抑えた食生活」

が重要といわれています。

和食はもともと魚や大豆などが中心でしたが、食の欧米化とともに総カロリー量に占める脂質の割合が増え、動脈硬化を促進していることが分かっています。

ですから、日本人の体質に合った改善をして、生活習慣を整えていく必要があります。

最近の研究によると、日本人の血管を守るために、青魚・大豆・玄米などを積極的に食生活に取り入れるよう推奨されています。


【参考】
・高沢謙二・玉目弥生『1日1分で血圧が下がる血管ストレッチ』(2017年 青春出版)
・奥田雅子『日本人の体質』(2017年 講談社ブルーバックス)
・厚生労働省『平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況』(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei17/index.html)


<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供