「彼女は俺だけのもの」と思っていたら…(写真:Topicimages / PIXTA)

ファースト彼氏とセカンド彼氏?

神奈川県の郊外都市に住む井上真由美さん(27歳・仮名)は、九州にある専門学校を卒業後、東京で美容師として勤務しもう7年になる。小柄であどけない笑顔がタレントのマギーに似ていると周囲からも評判だ。

東京都内のITベンチャー企業で辣腕を振るう広瀬優香さん(27歳・仮名)。長身でルックスは女優の竹内結子によく似ている。就職をきっかけに、学生時代を過ごした西日本の地方都市から上京し、まもなく5年が経過しようとしている。

何の接点もない2人の美女には共通点がある。真由美さんにも優香さんにも7年以上の交際期間を経て同棲中の彼氏だけでなく、その彼氏とは別に交際している男性がいるのだ。

20年間にわたり2000回以上の合コンに参加した日本で唯一の「プロ合コンコーチ」である筆者は、さまざまな男女の恋愛事情を見聞きしているが、昨今、彼女たちのような年齢20代後半の女性が、1人の男性と交際すること(ファースト彼氏)に加えて、2人目の彼氏(セカンド彼氏)を作るケースが何件もあることを知った。

彼女たちにはどんな事情があるのだろうか。

真由美さんの交際状況をもう少し詳しく見てみよう。真由美さんの地元は南日本のとある地方都市だ。そこで出会った同い年のファースト彼氏とは、7年前から交際している。その後、お互いに関東地方に移住し、同棲してからは4年になる。

ファースト彼氏は芸術系の技術職の仕事をしており、サラリーマンではないので収入は不安定だ。月に100万円ほどの収入があるときもあれば、ほぼ無収入に近い月もある。性格は優しいし、ファースト彼氏と一緒にいると飽きることがないほど楽しい。多少、浮気の兆候は見えるものの、コトを荒立てたくない真由美さんは見て見ぬふりをしている。

その真由美さんは1年半前に、友人の経営する居酒屋でおよそ10歳年上の独身男性と知り合った。その男性は音楽系の仕事をしている会社員で、会って食事をするときは必ずご馳走してくれるなど、とにかく羽振りがよかった。逢瀬を重ねるうちに真由美さんはいつしか恋愛感情を抱くようになり、セカンド彼氏としての交際がスタートした。

一方の優香さんは、地元の大学に入学すると、同い年の同級生の男性と知り合いになった。その男性こそ優香さんのファースト彼氏であり、交際期間は7年になる。卒業後は一緒に上京しており、現在は同棲中である。ファースト彼氏はサラリーマンとして勤務しており、年収は約500万円だ。

優香さんは今年に入ってからオンライン上のとあるビジネスコミュニティの一員同士として、約10歳年上の既婚者男性と知り合った。その男性こそ、優香さんのセカンド彼氏である。マスコミ系の会社に勤務する会社員であることもあって、彼と会話をしていると、彼に1200万円程度の豊かな年収があることはすぐにわかった。

食事のおいしい店をたくさん知っているグルメである彼に興味を引かれた優香さん。その興味が恋心に変わるのに、長い時間はかからなかった。今では週に3回会い、会えば必ず性行為にも及ぶ間柄だ。

別に嫌いになったわけではない

優香さんは、ファースト彼氏に対してはもはや異性としてときめいた気持ちを持つことはなく、実際に同棲しているにもかかわらず半年以上性交渉はない。とはいえ、別にファースト彼氏のことが嫌いなわけではなく、一緒にいて居心地はいいし、人間として信頼を置いている。

このように、真由美さんと優香さんの男性との交際状況をひもといてみると、3つの共通点があることに気づく。

まず1つ目の共通点は、「女性が男性を選べる立場にある」ということである。真由美さんにしろ優香さんにしろ、タイプは違えど非常にハイレベルの美人である。しかも、27歳という年齢は、若すぎるのでもなく、年を重ねすぎているのでもなく、多くの男性にとって魅力的な年代だ。

したがって、極めて多くの男性が異性としての興味を持ち接近してくるため、女性からしてみると完全に買い手市場の立場で男性を品定めすることができる。数多くの男性の中から自らのニーズに合ったハイレベルの男性を手に入れられる特権的な地位を有していることが特徴だ。

2つ目の共通点は、ファースト彼氏に対する「マンネリ」である。2人の女性のケースとも、ファースト彼氏との交際期間は7年と長期にわたっている。そうすると、相手に対する安心感や信頼感はあるものの、ときめきや胸の高鳴りのような刺激的な気持ちがもはや起こりえなくなってしまう。

また、そうした長期間の交際によって、ファースト彼氏に対する積年の不満が多層化することも指摘しておきたい。真由美さんの例であれば、彼女が黙認しているファースト彼氏の浮気がそれに該当する。

3つ目が、ファースト彼氏とセカンド彼氏の間に明白な「格差」が存在することである。たとえば、年齢に焦点を当ててみると、ファースト彼氏の年齢が彼女たちと同年代の20代後半であることに対して、セカンド彼氏はそれより10歳程度年上である。

そうすると、デートにおける立ち居振る舞い、美食レストラン情報の深さ、仕事への習熟度など多くの分野において、セカンド彼氏のほうが相対的に優秀な能力を持った男性に見える。

大人の余裕や包容力

その最たる能力が経済力である。年収面で比較してみても、ファースト彼氏の年収はそもそも不安定であったり、安定していてもせいぜい500万円程度であったりするのに対して、セカンド彼氏は年収が1000万円を超えるなど、ファースト彼氏より明らかに経済的な余裕がある。

ファースト彼氏に対してマンネリを感じていたり、不満を募らせていたりする女性にとって、ファースト彼氏より明らかに好条件な男性が目の前に現れてくれば、そうした男性に魅力を感じるのは至極当然であろう。

こうした条件がそろったとき、女性が魅力的な男性に対して思慕の情を持つことは想像に難くない。とはいえ、彼女たちも長い期間交際しているファースト彼氏に対して人間としての信頼感や情はあるし、不貞を働くのであれば多少なりとも罪悪感は持つはずだ。

それが証拠に、真由美さんのケースでも優香さんのケースでも、ファースト彼氏はセカンド彼氏の存在を知らない。当たり前だが、彼女たちはファースト彼氏に秘密でセカンド彼氏と交際している。ファースト彼氏はまさか自分の彼女がほかの男性と交際しているとは夢にも思っていないのだ。

ではなぜ、彼女たちは、それが後ろめたい行為だと理解していながら、セカンド彼氏のもとに走ってしまうのか。それは各人によってそれぞれ事情が異なる。

真由美さんの場合、セカンド彼氏を作る理由は、「ファースト彼氏に対する不満の穴埋め」だ。これは20代後半女性がセカンド彼氏を作る最も典型的な動機である。

真由美さんのファースト彼氏に対する不満は、とにかく彼が子どもで自分のことしか見えていないことだ。

「家事は全然手伝ってくれません。仕事がある日も友人たちと飲んで朝帰りをして、平気で寝坊して仕事に遅刻もします。遊びと仕事を両立させることができていないし、27歳にもなって社会人としてどうかと思います」

と語る真由美さん。最初のうちは注意をしていたが、まったく耳を貸さないので今や完全に放置状態だ。また、前述のように浮気の兆候が見えるのも不満の種である。

それに対して、セカンド彼氏は大人だ。真由美さんは言う。「食事にしてもデートにしても、私の好きそうなところを酌み取ってくれて、全部決めてくれます。そういうところに、大人の余裕や包容力を感じます。」

決定的だったのは、真由美さんの母親が病気で入院したときに、見舞いに来てくれたのはセカンド彼氏だったことだ。このとき真由美さんは、他人の家族さえも大切にできるセカンド彼氏の懐の大きな優しさに感銘を受けた。

収入の安定しないファースト彼氏のことをもともと快く思っていなかった母親は、この見舞い以降、真由美さんに対して「選ぶんだったら絶対こっちの男(セカンド彼氏)にしなさい」と繰り返し話しているという。こうして、母子そろってセカンド彼氏に対するラブコール度合いは日増しに高まってきている。

そんなセカンド彼氏から最近求婚されたという真由美さん。まだ気持ちの踏ん切りがつかないため、返事は保留しているが、近い将来どちらを選ぶか決断を迫られるタイミングが訪れそうだ。

「男性にモテない自分」は、受け入れがたい

これに対して、優香さんのケースでは少々状況が違う。優香さんがセカンド彼氏を作る理由、それは異常なまでに強い「承認欲求」だ。

実は優香さん、セカンド彼氏を作るのはこれが初めてではない。ここ3年間で、一夜限りの体の関係を持った男性の数は10人以上、2〜3回の関係を持った男性も5〜6人いる。というのも、優香さんはつねに「モテる男に気に入られたい」という承認欲求が極めて強い女性だからだ。

優香さんは25歳になる頃に、「今が女性としてのピーク」との強迫観念にかられた。25歳以降女性としての価値が減退し、自分が徐々に男性にモテなくなる未来に恐怖を覚えた。優香さんにとって「男性にモテない自分」は、受け入れがたい、決してあってはならない脅威の存在だ。その恐怖から逃れるために必要なのが、自分を必要として求めてくれるセカンド彼氏なのだ。

優香さんの持つ異常なまでの承認欲求が形成されたルーツは、子ども時代にまでさかのぼる。しつけの厳しい両親に育てられた優香さんは、物心ついたときからつねに親から褒められたいという気持ちが強かった。

そうして幼少の頃より他人の目を気にする傾向が強かった優香さんは、小学校3年生のときにクラス内の女子の間で形成されるスクールカーストの存在に気づいてしまう。カーストの上位にいたいと思いつつ、最上位に君臨する力量がなかった優香さんが選んだ答えは、女ボスに気に入られるためにひたすら奉仕することだった。

この頃から、優香さんの行動規範はつねに相対評価となった。「集団の中で目立っていたい」。他人から自分がどう見られているか、周囲から自分がどのように見られているか、これらの動機を満たすためむやみに行動した。

やがて思春期を経て美しい女性として成長すると、優香さんが寵愛を受けたいと感じる対象コミュニティが、スクールカーストから男性コミュニティに変化した。スクールカーストで女ボスに承認されることに注力していたエネルギーがそのままスライドして、男性コミュニティのトップ、つまり「モテる男」に承認される欲求に進化したのだ。

そんな優香さんに、現在のセカンド彼氏の魅力について尋ねると、

「何と言っても彼がモテる男であることです。実は、彼は既婚者だけど、私と初めて会ったときは奥さん以外にお付き合いしている女性が何人もいたんです。でも、その彼が『ほかの女とはすべて別れるから、お前と付き合いたい』と言って告白してくれました。モテ男にそういうセリフを言わせる優越感がたまらないですね」

と解説してくれた。

優香さん曰(いわ)く、セカンド彼氏との交際がうまくいっている秘訣は、優香さんにはファースト彼氏がいて、セカンド彼氏には妻がいることだという。つまり、お互い2位同士がバランスよく手軽に相手を求め合っているからこそ、この危うい関係は成立するのだ。

「もしファースト彼氏と別れたら、セカンド彼氏との関係はどうするのか?」と優香さんに尋ねたところ、「そのときは、セカンド彼氏とも別れます」という意外な答えが返ってきた。

その理由を聞いてみると、

「自分にもファースト彼氏がいて、セカンド彼氏は本気でないとの建前があるから、セカンド彼氏の奥さんにも罪悪感はありません。でも、ファースト彼氏と別れたらその前提が崩れてしまい、奥さんに対して負い目を感じてしまいます」

「あと、ファースト彼氏がいなくなることによって、私が『奥さんと別れて私をお嫁さんにして』と『結婚を迫る重い女』に変わるかもしれないとセカンド彼氏に思われたくありません。そこは女としてのプライドでしょうか」

と答えた。

いずれにせよ、現時点ではお互いのニーズを満たしている優香さんとセカンド彼氏の交際は当分の間続きそうな気配だ。

より大きな幸せを求めて

27歳独身女性。恋愛、結婚について、人生の岐路に立つ年代である。先の見えない未来の中で、より大きい幸せを求める女性心理もわかる。セカンド彼氏を求める女性、それは少しでも幸せになりたいと願う気持ちが強く、愚直にその気持ちを実行に移すことができる女性なのかもしれない。