ヴラダさんが10月23日にアップしたセルフポートレート(ロシアのソーシャルメディア「VK」より。以下同)

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 10月27日、中国・上海の病院で、あるロシア人少女が亡くなった。少女は、14歳のヴラダ・ジュバさん。同25日に体の不調を訴えたヴラダさんは、意識を失って病院に運ばれ、そのまま息を引き取ったという。ヴラダさんはロシア在住のファッションモデルで、上海にはファッションショーへの出演など、仕事のために訪れていた。

 ヴラダさんの地元シベリアで発行されている「サイベリアン・タイムズ」紙が27日に伝えたところによると、ヴラダさんは髄膜炎を患っていたが、誰もそれに気づくことなく、彼女はファッションショーのキャットウォークに登場し続けていたという。

 そして、13時間にも及ぶファッションショーにぶっ続けで出演し、次の出番を待っているときに倒れ、意識を失ってしまった。すぐに救急車で病院に運ばれたが、回復することなく2日後に死亡。主な死因は、過労によって引き起こされた髄膜炎の急変だった。

 実はヴラダさんは、倒れる数日前に母親への電話で体の不調を訴えていたのだが、その後に病院に行くことはなかった。今回の中国での仕事は3カ月間の契約だったが、その間の医療保険には加入しておらず、ヴラダさんが「病院に行きたい」と言えなかったからだと同紙は伝えている。また、週3時間という労働契約だったはずなのに、それを大幅に超過して働かされたのも原因だと、中国側を非難している。

 14歳という、まだ中学生の年齢の少女が過労死したこの事件は、ファッション業界での児童労働という問題に大きな波紋を投げかけることになった。というのも、中国では最近、ファッションショーに出演させるモデルとして、ロシア、特にシベリアから、若いモデルをリクルートするケースが増えているのだという。

 さらに2日後の続報で同紙は、ヴラダさんの中国での報酬について言及。ヴラダさんは前回の北京での仕事では、2カ月間で3,000ドル(約34万円)の契約となっており、そのほとんどが飛行機代やホテル代などで消え、収入として残ったのは500ドル(約5万7,000円)、1日当たりにすると、わずか1,000円弱しか得ることができなかったというのだ。

 一方の中国では、この一件は外国メディアの報道を引用する形で一部のメディアが概要を伝えるのみだったが、29日になって中国共産党の機関紙「環球時報」が、外国の報道に反論する形で記事を掲載した。

 ヴラダさんと契約していた中国側のモデル事務所の話によると、ヴラダさんの契約書には労働時間のことは書かれておらず、中国の法律を守って1日8時間の労働しかさせていなかったという。また、定期的に休憩を取っていたとも伝えられた。

 さらに、ヴラダさんは13時間のショーの間に倒れたのではなく、1週間に及ぶ上海でのファッションショーの仕事を終えたあと、23日に別の仕事で浙江省の義烏市に向かい、そこで体の不調を訴えたことから仕事をキャンセルし、上海に戻って病院に運ばれたとしている。また上海のロシア領事館にもこの件は伝えられており、ヴラダさんが亡くなる前日には、領事館員が病院に確認に来ていたとも伝えている。

 原因がどうあれ、14歳というまだ仕事をするには幼すぎる年齢の少女が、一人で外国に行ってモデルとして働いている最中に亡くなってしまった事実に変わりはない。それを送り出す側、受け入れる側ともに、今回の事件を教訓として状況を改善していかなければならないだろう。
(文=佐久間賢三)