認知症の祖母へのラブソング「はじめまして、ばぁちゃん。」について、福岡のバンド「ミサンガ」のリーダー高尾和行さんに取材した。

福岡のバンド「ミサンガ」がリリース

福岡を拠点に九州で活動するアコースティック3ピースバンド「ミサンガ」は6日、祖母に贈るラブソング「はじめまして、ばぁちゃん。」をリリースした。

リーダーの高尾和行さんが、米寿を迎えた祖母に向けて作詞。幼い頃から可愛がってくれた祖母が認知症を患い、会いに行っても孫だと認識できない状態になったことに悲しさを感じながらも、いつかきっと昔のように笑顔を見せてくれると願う…そんな思いを託した曲だ。

米寿のお祝いに「歌で届けたい」と作詞

高尾さんが祖母に向けたラブソングを作ろうと考えたのは、祖母(90歳)の米寿のお祝いを親族でする際に、両親から「孫たちは、ばぁちゃんに手紙を書いてきなさい」と言われたのがキッカケ。

改まって手紙を書くのもどこか恥ずかしくて。せっかく自分が音楽をやっているんだから歌で届けられたら、と思って書きました。

祖母を思う素直な気持ちを歌に。当初は、介護の苦労を知らない自分が歌っていいものかと悩んでいたが、介護する叔父に相談したところ、「同じような思いをしている人たちにとって、少しでも気持ちが軽くなるのなら」と背中を押されたという。

個人としては純粋に「ばぁちゃんいつまでも元気でね」という気持ちで祖母に向けて歌っています。ミサンガとしては同じような経験がある方や施設の方などおじいちゃん、おばあちゃんと関わりを持つ方々に聴いていただきたいです。

提供:ミサンガ

「はじめまして」は前を向くキッカケになった言葉

「はじめまして、ばぁちゃん。」というタイトルを付けた経緯を聞いた。

5年ほど前になりますが、祖母の家に行って「ばぁちゃん久しぶり〜」と声をかけると、祖母から「これはどうも、はじめまして」 と言われたんです。

態度も他人行儀で、高尾さんは「ついに僕のことも忘れてしまったんだ」とショックを受けたという。しかし、それを繰り返しているうちに「認知症のばぁちゃんにとっては、それは当たり前のことなんじゃないか」と考えるようになった。

ああ、そうか、ばぁちゃんにとっては、会うたびに新しい「はじめまして」なんだと思うようになったんです。それからは、無理に「俺だよ俺〜。分かる?」と押し付けるような言い方ではなくて、「はじめまして〜」と挨拶を返すようになりました。

そうすると、会話しながら祖母にも笑顔が見られるようになりました。ですから、「はじめまして」という挨拶にはショックもありましたが、祖母の認知症を受け入れ、前を向くきっかけとなった言葉なんです。

提供:ミサンガ

歌を聴いた祖母が涙

9月3日に開催されたCDの先行リリースイベントには、自宅介護している叔父夫婦がおばあ様を連れてきてくれたという。

祖母は車椅子の上で手を叩いたり、笑ったりしていました。 そして「ねえ、ばぁちゃ〜ん」というサビの歌詞では泣いていました。そんな祖母の姿を見て、ステージ上で涙をこらえるのに必死でした。ものすごく嬉しかったです。

イベントの後、祖母と話をしたら「あなた様のおかげで元気になりました。本当にようございました」と言ってくれました。僕を孫だと認識していないかもしれませんが、思いは伝わったのだと実感しました。

提供:ミサンガ

「こんなに泣いたの初めて」と感動の声が続々

同曲についてネット上には「切ないけどあったかい」「愛が溢れる素敵な曲」「心に染みた」「号泣したっ」「涙が止まらない」「歌でこんなに泣いたの初めて」「全国の人に聴いてほしい」など、多くの反響が寄せられている。

9月6日のリリース直後、Amazonに予想以上の注文があり、一時的に品切れとなり追加発送したそう。

たくさんの方がこの曲を楽しみにしてくれているということが本当に嬉しいです。そして、僕と祖母の思い出のように、たくさんの方が同じような経験をされているんだなということを感じています。

認知症の患者さんがいる施設の人たちにも聴いてもらったという。

「認知症をより多くの人に知ってもらい、ポジティブにとらえてもらえる曲。私たちへの応援歌のようです」と受け止めていただいたので、本当に良かったと思っています。

提供:ミサンガ

「家族や大切な人を思い出す機会になれば」

「歌に込める思い」をこう話す。

僕自身この曲を通して祖母をはじめ、自宅介護をしてくれている伯父や伯母の話も聞かせてもらい、感謝の気持ちが大きくなりました。そして、今まで以上に距離が近づいたように思います。

この曲を聴いた方の心がふと軽くなってくれたら、そして、家族や大切な人を思い出す機会になれば嬉しいです。

提供:ミサンガ