燃費不正が発覚した三菱自動車の処遇をめぐり、三菱グループは「重大な決断」を迫られている。三菱グループは、三菱自動車の不正により「三菱」の名が傷つくのを嫌っているということだが、そもそも三菱自はグループ内での重要度が高くない。財閥の歴史に詳しい畠山秀樹・追手門学院大学名誉教授はいう。

「三菱グループ内での格付けは、必ずしも業績と一致しません。たとえば業績が芳しくなく、業界シェアも低い三菱製紙ですが、三菱3代目の岩崎久弥が設立した三菱の源流会社の一つのためグループ内での格が高く、支援も手厚い。一方、三菱自は戦後、三菱重工から分離独立した会社なので、規模はそれなりに大きくても、グループ内での格は高くないんです」

 三菱グループ内部では、すでに「三菱自を身売りさせて、三菱という冠を外させる」というプランが検討されているという。身売りで企業グループから外れた例としては、住友金属が新日鐵に吸収合併され「新日鐵住金」となった際、住友グループから脱退したケースがある。

 問題は、三菱自を買う企業が存在するかだ。自動車業界紙の記者は予想する。

「現実的な処理として、中国など海外メーカーへの身売りが一番妥当。ただし、シャープと違って、三菱の場合はコンプライアンスの問題なので、手を挙げる外資がいるのかどうか。今後、三菱が不正の実態をどこまで明らかにして責任を取るかで、売却するかどうか、あるいは売却先がどこになるかも変わってくると見られています。

 三菱自から軽自動車を調達していた日産が、軽を生産している三菱の水島製作所を買うかどうかにも注目しています」

 三菱自の地域別の業績を見ると、アジアでの売上高は全体の21%ほどだが、営業利益は全体の54%を占めている(2015年度)。アジア市場を主軸とする新興国メーカーであれば、三菱自にブランド価値を見出し、関心を示す可能性がある。月刊『BOSS』の編集委員、関慎夫氏はこう指摘する。

「かつて関係のあった韓国の現代自動車やマレーシアのプロトン、あるいは中国企業の可能性もある。いま三菱グループがやるべきは、従業員の雇用と株主の利益をできるだけ守る形で三菱自動車を解体し、売却すること。それが三菱グループに残された役割だと思います」

 三菱グループは創業以来、150年で最大の危機をどう乗り越えるのか。

※週刊ポスト2016年5月20日号