マツダ「クリーンディーゼル」でV字復活は本物か?
■ディーゼル車のシェアは6割強
「都会からアウトドアまでどんなシーンにもふさわしい次世代のスタンダードモデルとして自信を持って提案する。コンパクトクロスオーバーSUVとしての独自のスタイリッシュなデザインを持ち、運転することの楽しさを感じられる快適な走行性能を合わせ持った商品だ」
マツダの小飼雅道社長は2月27日の発表会で、新型車「CX-3」についてこう説明した。同車は2012年に発売した「CX-5」以来、独自の次世代技術「SKYACTIV」と「魂動デザイン」を全面採用した5番目のモデルとなる。プラットフォームは「デミオ」と共通化しているものの、既存のジャンルにこだわらず、全くゼロからの発想でつくりあげたという。
そして、国内向けは1.5リットルのクリーンディーゼル車のみで、価格も236.7万円〜302.4万円(消費税込み)と、1.5リットルとしては強気の設定だ。
「4弾目のデミオまでディーゼル車をかなり買っていただいた。CX-5、アテンザで7〜8割、デミオで6割ぐらいがディーゼル車となっている。それに、SUVという商品には、走る喜びが感じられるディーゼル車がいいのではないかと一本に絞った」と小飼社長。
いまやクリーンディーゼル車はマツダの代名詞と言ってもいいほどだ。なにしろ国内で売れている約8万台のうち、6割強がマツダ車だからだ。週末にはその車を目当てに多くにお客がマツダの販売店に訪れているという。
販売も好調で、この1〜2月を見ても、同業他社の多くが前年に比べて大きく落とすなか、マツダは前年同月を上回っている。2015年3月期の営業利益も2100億円(前期比15.3%増)と過去最高を見込む。数年前まで赤字で苦しんでいた企業とはとても思えない数字だ。
■クルマづくりのプロセスをゼロから見直す
マツダが元気を取り戻した裏には、地道なブランド向上活動があったといっていい。その契機となったのが、2002年に打ち出した「Zoom-Zoom」という新ブランド戦略だ。「マツダの車は単なる移動手段ではなく、乗るとわくわくする」と訴え、マツダらしい走りを追求しデザインに磨きをかけることにした。
それまでのマツダは、地力に劣っていたことから販売台数を稼ぐために安売りに走り、その結果、中古車価格が崩れてブランド価値が低下、また安売りに頼るという悪循環で財務体質は大きく悪化、たびたび経営危機を招く結果となっていた。
そこで、「Zoom-Zoom」戦略を打ち出すと同時に安売りをやめたわけだが、最初のうちはなかなかうまくいかなかった。というのも、開発資金が少なかったため、マツダらしい新型車を出せなかったからだ。しかも、その後にリーマンショックや東日本大震災が起こり、再び赤字企業に転落した。
そんな中でも、マツダは安売りをせずにブランド価値の維持に努めた。と同時に、円高にも負けない体質をつくるため、クルマづくりのプロセスをゼロから見直す「モノ造り革新」に取り組んだ。そして、独自の次世代技術である「SKYACTIV」技術を開発し、2012年にそれを搭載したCX-5を発表。このクルマがヒットするとともに「これまでのマツダ車とちょっと違う」と話題になった。
その後、アテンザ、アクセラ、デミオと次々に投入し、マツダのブランドイメージが大きく変わった。以前のような“安売り”イメージを持つ人が少なくなり、若者の間では「走りに特徴があり、デザインがカッコいい」と好印象を持つ人が増えている。
しかし、マツダが主戦場とするのは、最も競争が激しい中小型の乗用車市場だ。その中で、マツダがいま目指しているのは、大衆車ながらプレミアム性があり、高収益を確保するブランド。そのためには、ここで安心することは許されない。言うまでもなく、マツダならではのクルマづくりに磨きをかけ、ブランド向上のためのさらなる努力が必要だ。
(ジャーナリスト 山田清志=文)