自身初のシリーズで全5戦で安打、柳田の存在なくして日本一は成し得なかった

 福岡の地に、3年ぶりにチャンピオンフラッグが戻ってきた。10月30日の日本シリーズ第5戦。ソフトバンクが阪神を下し、シリーズ成績4勝1敗とした。敵地・甲子園での初戦こそ落としたものの、第2戦で星をタイに戻すと、本拠地に帰って3連勝。一気に頂点へとたどり着き、今季限りでの勇退が決まっていた秋山監督の花道を飾った。

 地元を歓喜させた、日本一への5試合の戦い。最優秀選手には2、3戦目で決勝打を放った内川が選ばれたのだが、影のMVPと言えるのが、全5試合に1番で出場した柳田悠岐(26)だろう。今季、急成長を遂げた背番号44なくして、ソフトバンクの日本一はあり得なかった。

 5試合を振り返ってみよう。まず、初戦だ。6回無死一塁で、左前に自身シリーズ初安打を放ち、7回にも右前安打。試合には敗れはしたが、4打数2安打と個人としては好発進を見せた。そして、第2戦から、この1番柳田の働きが勝利に直結するようになる。

 左腕・能見から、初回先頭打者で中前安打。2番今宮の犠打で二塁へ進むと、内川の左前適時打で先制の本塁を踏んだ。この間、わずか5球。電光石火で生まれた先制点は最終的に決勝点となった。本拠地に舞台を移した第3戦。またしても、初回先頭で右翼線二塁打を放つ。明石の犠打、内川の中越え適時二塁打と、今度は7球で先制の本塁を踏んだ。

 第4戦では、先頭で左前に打球を落とすと、左翼マートンの緩慢な守備のスキを突く好走塁で、一気に二塁打とした。その後、満塁となり、松田の左前2点適時打で生還。3回の守備では、1死満塁から右中間へのマートンの打球をランニングキャッチ。続く、福留の中前適時打を処理すると、判断良く二塁へ送り、二進を狙った福留を刺殺した。ピンチの拡大を防ぎ、守備でもチームに貢献。延長10回の中村の劇的なサヨナラ3ランへとつなげた。

 そして、日本一を決めた第5戦だ。均衡が7回まで続く緊迫の試合展開。ここに風穴を開けたのも、柳田だった。8回の先頭打者で右前安打を放つと、明石の犠打、内川の右前安打で三塁へ。松田の中前への適時打で生還し、待望の先制点を生み出した。この虎の子の1点を、最終回、守護神のサファテが3四球で満塁のピンチを招きながらも、西岡の守備妨害での一ゴロ併殺という何とも珍しい結末で、日本一の座へとたどり着いた。

トリプルスリーに最も近いと言われる男

 シリーズ成績を見ると、圧巻である。20打数8安打、打率4割、出塁率4割5分5厘はソフトバンク、阪神でスタメン出場した選手でトップ。5得点も両球団でトップだった。全5試合で安打を放ち、2戦目から3戦連続で初回先頭打者で出塁し、先制の本塁を踏んだ。2、3戦目は初回の先制点が決勝点となり、5戦目も8回に本塁を踏んだ先制点が決勝点。これだけで、プロ4年目の大砲が、どれほど日本一に貢献したか、一目瞭然だろう。

「本当に一生懸命やっただけ。とにかく、チームに貢献したい気持ちを持っていた。いい結果になって良かったです」

 日本一を決めて、こう喜びを語った柳田。リーグ優勝、CS突破に続く、3度目のビールかけで歓喜の美酒に酔いしれた。ペナントレースでは打率3割1分7厘、15本塁打、70打点、33盗塁と、いずれもキャリアハイの数字をマーク。12日から始まるMLBオールスターと日米野球を戦う侍ジャパンのメンバーにも選ばれている。

 球界で3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーに最も近いと言われる男。底の見えない将来性を秘める柳田は、最後に、こう誓った。

「もっとすごい選手になりたいです」