日本ハム投手コーチから見る好不調の波の要因

 日本ハムの斎藤佑樹が苦しんでいる。7月31日のロッテ戦で6回1失点。785日ぶりの勝利を飾ったのもつかの間、続いて登板した8月14日のロッテ戦では初回、先頭打者にいきなり四球を出すなど3失点。結果、2回2/3を5失点でKOされた。「立ち上がりの四球が悔やまれる」。声のトーンは当然、沈んだ。

 2012年シーズン終盤に負った右肩関節唇損傷から復帰後は実に好不調の波が激しい。2軍で大量失点することも少なくない。マウンドに登ってみなければ、分からない――。そんな声が聞こえてくるのもうなずける。

 ではなぜ、好投、炎上を繰り返すのか。「球は悪くない」と言い切るのは厚澤投手コーチだ。

「1つ1つのボールは1軍で通用する。ブルペンでも悪くない。ただ、やられる時はいつも不利なカウントから始まる。慎重さからなのか……」

 慎重さとは――。斎藤が持つ豊富な経験が“マイナス作用”している部分もあるのかもしれない。現役時代に「魂のエース」とも評された黒木投手コーチは「打者との対戦の仕方、打ち取り方。『こうやって抑える』というのが染みついているのかもしれない」と指摘する。

黒木投手コーチ「今はしゃにむに行かなきゃダメ」

 夏の全国高校野球選手権(甲子園)の決勝で、引き分け再試合の末に優勝。マー君こと、現、大リーグ・ヤンキースの田中将大に投げ勝った。そして大学日本一。歩んできたのは常に王道。打者との駆け引き。追い込み方。勝負所の見極め。危機察知能力……。すべてに秀でていた。

 日本ハムでも入団2年目の2012年に開幕投手を務め、勝利投手となった。だが、そこはやはりプロ。“同じ手”は何度も通用しない。

 黒木コーチはさらに「今はしゃにむに(がむしゃらに)行かなきゃダメ」と声を張る。今季は右打者の内角をえぐるシュートも武器の1つに携えたはずだった。強気に内を攻めてこそ、持ち前の投球術は効果を発揮する。

 なおも人気は絶大。それは誰もが認めるところだ。

 予告先発が発表されると会場はドっと沸く。拍手と歓声がマウンドへと向かう背を押す。その声を悲鳴に変えてしまうわけには、もういかない。これまでのクレバーな投球スタイルをかなぐり捨てる。“脱・佑ちゃん”が再スタートへのカギなのかもしれない。