会社は儲かっても社員の給料は上がらない そのカラクリとは
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中小企業から大企業までを含めたサラリーマンの年間昇給率の過去10年間を見てみると、その平均値は「1.5%」。高度成長期の昭和40年代は10%以上でしたから、それと比較すると現代は働いてもなかなか給料が上がらない時代といえます。
ところが、2000年代の初頭、リーマン・ショックが起こる頃までは日本経済は回復傾向に向かっていました。「儲からないから昇給もできない」というのは理解できますが、儲かっているのにどうして社員は昇給できないのでしょうか。
人事コンサルタントの山口俊一さんは『理不尽な給料』(ぱる出版/刊)の中で、この現象について解説をしています。
社長がフトコロの中に入れた? いいえ、そうではありません。実はこの期間も社長を含めた役員報酬の平均値はほとんど上がっていないそうなのです。
一方でのびていった数値があります。上場企業の株主への配当金です。つまり、株主にお金がまわっていったというのです。
バブル崩壊以降、銀行や証券会社、一般企業が手放した株を、海外の投資家が購入しました。バブル期の外国人株主の割合は5%だったのに対し、2000年代は30%近くまで上昇していたと山口さんは述べます。
海外の投資家たちは日本の家族的経営の発想を持ち合わせていませんから、利益があがってきたらまずは株主に配当するよう発言します。そうして企業の利益は外国人株主へと流れていくことになるのです。
では、中小企業はどうでしょうか。
2000年代の景気回復局面では、大企業と中小企業の差が広がった時期でもありました。つまり、大企業が経営を立て直していた一方で、中小企業の苦しい経営はなかなか立ち直らなかったということなのです。
山口さんはコンサルタントとして様々な社長と話す機会があるが、どの社長も「できることなら社員の給与も上げてやりたい」と思っているといいます。しかし、リーマン・ショック以降、不測の事態に備え、少しでもお金を残しておきたいと考えるのが当然の感覚です。
『理不尽な給料』では職業・職種別、地域別、性別、企業の規模別、雇用形態別など様々な観点から「賃金格差」について具体的な数値を出して説明していきます。
どうして中小企業よりも大企業に入った方がいいのか、派遣社員は優秀でも正社員に賃金で上回ることが難しい、公認会計士は失業養成資格に陥っているなど、厳しい現実が本書の中につづられています。
「仕事の価値や能力、努力が正当に評価されて、それに見合った賃金が決まる社会」に近づいていって欲しいと山口さんは述べます。しかし、先行きが見えないこの時代、そんな社会は本当に来るのか?と疑問に思ってしまう人も多いのではないでしょうか。
就職活動や転職活動を控えている人は、賃金格差の実態を知っておいて損はないはずです。
(新刊JP編集部)
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