「めっちゃウザい」「誰?」本田圭佑の“自由すぎる解説”に韓国メディアが驚愕したワケ「日本のレジェンドは意外性が…」
ワールドカップ(W杯)中、筆者の日常的ななんでもないことをXにポストしたら、211万インプレッション(表示回数)を獲得。驚くことがあった。
【画像】「めっちゃウザい」「誰?」本田圭佑の“自由すぎる解説”で注目された美女&選手を写真で見る
韓国から「本田圭佑の解説についての大マジメな問い合わせがあった」と投稿したところ、Xの通知が止まらない状態が続いたのだ。筆者のアカウントのフォロワーが5300ほどだから、ちょっと慌てたりもした。

北中米W杯で現地中継する本田圭佑 ©JMPA
日本代表の初戦、オランダ戦の翌日のことだった。
スマホからメッセージ着信を知らせるバイブ音が鳴った。主に韓国の知人たちとの連絡に使っているアプリ「カカオトーク」からだった。
送り主は、30年来の付き合いになる友人。韓国でサッカーの発信を長く手がけてきた、メディア側の人間だ。日頃から日韓のサッカー事情を情報交換している仲でもある。
「これは事実なのか?」送られてきたのは…
「これは事実なのか?」という問い合わせと共に送られてきたのは、韓国のネット掲示板(韓国では2ちゃんねるのような掲示板が今なお活発)の投稿内容をそのまま貼り付けたようなテキストだった。
〈「解説しに来た近所のお兄ちゃん?」
「『日本サッカーのレジェンド、本田圭佑の解説が物議を醸す』笑」〉
日本の本田圭佑のサッカー解説が、韓国でも大きな話題を集めているというのだ。本田の言動をいくつか羅列し、その真偽を尋ねてきたのだが、ざっと、このようなものだ。
「こいつめっちゃウザい」「誰?」
1. 大会中に「水分補給タイム」が与えられると、本田は何が起きたのか分からず驚く姿を見せた。
2. サッカー界の基本用語であるビデオ判定(VAR)を、昔のビデオテープ時代の用語であるVTRと混同するとぼけぶりを見せた。
3. 日本選手が審判と接触するハプニングが起きると、審判に向かって「審判お前がイエローや!」と叫ぶという解説を披露した。
4. ゴール直前のコーナーキックの場面では、戦術的な説明の代わりに「そろそろ行ける気がする」と、まるでシャーマン(?)のような勘を発動して解説した。
5. オランダチームのダンフリース選手のプレーが気に入り、実況者に所属チームを尋ね、答えを聞くと一人で不思議がって驚いていた。
6. 観客席にいた美女(アメリカ出身のプロレスラー、リヴ・モーガン)がカメラに映ると、好奇心を抑えられずに「誰?」と実況者に質問を投げかけた。
7. オランダの背番号11番の選手を見て「こいつめっちゃウザい」と言い、そこで初めてリバプールのガクポだという事実を知った。
8. そうかと思えば、最も警戒すべきオランダ選手を挙げてと言われると「1にガクポ、2にガクポ、3にガクポ」と、突拍子もないギャグセンスを披露した。
9. 前半40分頃になると「長いて」「見ている方が疲れる。まだ40分でしょ?」と早く帰りたいと本音をあらわにした。
筆者は、これら一つ一つに対して「そうだ、Yes、合ってる、その通り」という風に返事をしていった。
ただ、“金髪美女”が中継に映ったのは、久保建英が負傷した後の緊迫した場面での唐突な出来事だった。そのため、「好奇心」というよりは、思わず素直な疑問がこぼれたという印象だ。また、「見ている方が疲れる」との発言は、「早く帰りたい」からではなく、前半は日本が押し込まれる試合展開が続き、気を張っていたためだろう。
とはいえ、基本的には「本田語録」のほとんどが正確に伝わっている点にむしろ驚いたりもした。
公共放送のNHKで…韓国で考えられない“事件”
この友人が言うには、本田独自の解説について、一部では批判もあるが、多くの韓国人にはオモロいとも思われている、という。さらに、公共放送であるNHKがオファーし、「語録」を紹介しているという点についても韓国では考えられない「事件」であり、「ウケる」と。
そして、「プロの解説委員というより、サッカー好きの近所のおじさんがリビングでチキンをつまみにビールを飲みながら喋っている感じですね。新鮮でいいです」と締め括った。
こうした経緯の発端を何気なくXに投稿したところ、予想外にバズったのだった。
「とにかく見出しにホンダを入れて」韓国でも抜群の知名度
日本のサッカー選手として、本田の知名度は韓国でも抜群だ。ミウラ(三浦知良)、ナカタ(中田英寿)に並ぶ。筆者が2015年に韓国メディアで韓国語での連載を持った際には、「とにかく見出しにホンダ、カガワ(香川真司)を入れて下さい」と言われたものだ。「韓国人は欧州で活躍する日本人にちょっとしたジェラシーを感じ始めているから、それを焚き付けてくれ」と。
冒頭の友人が運営する韓国のサッカー解説YouTube番組では、「本田節」について、出演者らが以下のように語っている。
A:これから本田さんの本当に華やかな語録を紹介していくんですが、その前に。面白い発言だけなら話題止まりだったと思うんですけど、論争になったのは、W杯中継の準備を全くしていないように見えたことなんですよね。
B:ああ、してない。全然してない。
A:もう10試合以上W杯やってるのに、ハイドレーションブレイク(水分補給)を知らないまま中継してるんです。「(水を飲んでいるシーンで本田が)これ、なんすか?」って。
B:いや、解説者でしょ。ちゃんとしないと(笑)。近所の居酒屋でビール飲みながらW杯観てる人でもあれくらい知ってますよ。
A:つまり、あれは水を飲む時間だってことすら知らない=韓国戦も見てないってことなんです。何も見てない、開会式すら見てない。VARという用語も、最近サッカーを見ていれば分かるはずなのに、実際見てない人って意外と多いんですよね。
B:現役時代ずっとサッカーをやってきたから、逆にサッカー自体にちょっと飽きてしまって離れる人、思ったより多いんですよ。
というように、番組の序盤は「ガチ分析」だった。いかにも韓国らしい、「公共の放送なんだから『ちゃんと』しなさい」と。
また、韓国では本田のいわゆる「関西ノリ」が理解されにくいのかな、と感じたりもした。韓国は首都ソウルの文化的影響力が圧倒的で、地方色が薄い。日本への旅行者が「地方ごとにカラーが違って面白い」という感想を口にするのもよく耳にするが、それゆえにいわゆる「関西特有のノリ」という文脈が伝わりづらいのかな? そんなことも思った。
とはいえ、番組の後半部分では「オモロそうでもある」「評価する」というニュアンスが出てきた。
「本田さんが言うと成立する」「面白いじゃないですか」
A:ある意味、私たちは100年後に出会うような解説を先取りして見てしまったのかもしれません。解説の新しい扉を開いた。型にはまった、ありきたりで陳腐な解説をしない、新しいことをやろうとしている。面白いじゃないですか、みんな笑ってますし。
B:(韓国の)チェ・ヨンス監督とちょっと似てますよね。あの人もそういうところあるので。ただチェ・ヨンス監督とて、観客席で美女が映った時に、「あれは誰?」みたいなことはやらないんです。でも本田さんはやる。「(あの女性は)誰?」って。
A:ああいう発言、準備する段階でチェックされていたら、やっちゃダメなやつ認定ですよね。
B:でも、ああいうのもアリなんですよ。これは「スピーカー(発言者本人のキャラクターと認知度)の違い」なんです。私が同じことを言ったら、私は終わりです。世界中から石を投げられます。でも本田さんが言うと成立する。本田さんは、いわばパク・チソンやイ・ヨンピョ*が言ってるようなものなんです。「ああ、そういうやり方もあるんだ」と面白がられる、新鮮に映る。同じ言葉でも、誰が言うかで全く変わる。それがまさにスピーカーの差です。
A:日本のレジェンドって、中田英寿さんもそうですし本田さんもそうですけど、引退後のキャラクターがすごく意外性があって独特ですよね。
B:ええ。彼らの生き方自体、予想を裏切る独特な部分がある。キャラクターが独特ですよね。
A:日本の文化には、そういうものを受け入れる土壌もあるように思います。面白いです。
*パク・チソン=元韓国代表。イングランドの強豪マンチェスター・ユナイテッドでプレー、アジア人初の欧州チャンピオンズリーグ決勝出場、プレミアリーグ優勝などを達成
*イ・ヨンピョ=元韓国代表。オランダの名門PSVアイントホーフェンなどでプレー、2005年欧州チャンピオンズリーグではチームのベスト4に貢献
なぜ筆者のポストがバズったのかは、実のところよく分からない。筆者は「ゴリゴリの固定観念に凝り固まりがちな韓国メディアが、本田圭佑の自由っぷりに驚き、慌てて連絡してきた」「こっちは余裕綽々で返した」という、ちょっとした笑い話を投じたつもりだった。
ただ、確かに本田圭佑の解説は「未来」なのかもしれないなとも思う。今大会はハイドレーションブレイクの導入により、90分の試合を4分割、という絵も見ているわけだし。未来を見る大会、という位置づけの中に本田圭佑もいる。むしろ韓国のサッカーファンたちは、日本以上にカッコよく話をまとめていたのだった。
(吉崎 エイジーニョ)
