学生時代に戻れたら…スイング軌道について伝えたいという関口さん【写真:羽鳥慶太】

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元日本ハムの関口さん、学生時代に現在の知識があったら何をする?

 栃木県にある「エイジェックスポーツ科学総合センター」でスキルコーチ、アナリストを務める関口雄大さんは、公立の進学校から国立大学に進み、入団テストに合格してプロ野球の横浜(現DeNA)と日本ハムでプレーした珍しい経歴を持つ。さらに引退後は日本ハムのアナリストとして野球のプレーを可視化し、改善する工程に携わってきた。もし現在の知識があったら、学生時代の自分に何を教えたいかを聞いた。環境に恵まれなくても、正しい知識で上を目指す道はきっとある。

 関口さんは「フィジカルがすべてを解決してくれました」という野球人生を歩んできた。栃木県立宇都宮北高時代には、練習があまりにきつすぎて、プロ野球選手の夢を一度はあきらめるという経験をしている。

 当時のことを思い返せば「5時間寝られるかどうかという環境でしたから、体が大きくならないのも当たり前ですよね」。リカバリーの時間が重要視されるようになった現代の野球界からは、考えられない環境にいた。さらに現役合格した国立の滋賀大では、野球をやるつもりはなかった。悩まされていた肘の痛みを解決してくれたのは、バドミントン部で掴んだ肘の抜き方の技術と、ラグビー部で実感したフィジカルトレーニングの効果だった。

 だから現在、野球の全てを可視化し、改善していこうとする世界に生きる関口さんに聞いた。もし今の知識が当時あったら、自分に一体何を教えますか――。

「フィジカルを徹底的に鍛えさせますね。後はバットスイングをきちんと作ること。今だったら測定機器を付けて、数字を見ながら改善することもできますから」

 大リーグから始まった長打全盛の時代は、進化しながら今も続く。野球を統計的に分析すれば、アウトにならず塁に出ることと、長打を放つことがもっともチームの得点につながるからだ。長打を放つための方法論も定着してきた。投球の軌道にスイングを“入れて”大きく振ること。ただこれは、中学や高校でよく言われてきた「ダウンスイング」とは正反対になる。

「スイングスピードが上がれば上がるほど、バットの角度も付けられるようになってくるんですよ。下からカチ上げる方向に角度をつけていける。高校生がプロみたいなパワーで振れるわけでもないので、この世代が実際に取り組むと、水平に近い軌道になっていくと思います。ただ上から叩きつけろというのは……。やっぱり違いますよね」

 高校生、大学生だった当時の関口さんは、感覚として上からのスイング軌道が“違う”ことには気づいていた。さらにプロに入ってからも「スライダーにめっちゃ苦しみました。ちゃんとしたバット軌道で攻略していたら、もっと楽に打てたんじゃないか」という後悔がある。「プロのスライダーは変化量もすごいのに、それに対応できるスイングになっていなかった。大間違いをしていました」。

スイング改造の難しさ…3年かけて改造した侍戦士も

 プロ球団を離れた今、中学生や高校生の打撃を見ていて「もったいないな」と感じることも多い。「とにかくバットを最短で出そうという選手が多いですね。チーム方針なのか、個人的にそれが合ってると思っている選手が多いのか……。大きく振る軌道にできていないケースが目立ちます」。プロの強打者すら、修正に時間を要する部分でもある。上を目指そうとするなら、早いうちに身につけておきたい部分だ。

「そこを変えるのって、1年、2年くらい平気でかかるんですよ。近藤(健介=ソフトバンク)選手が札幌ドーム時代の最後から、ホークスに移籍するくらいまでの間、3年くらいかけて変えたのを見ていたので」

 投手に例えると「テークバックの形を変えるようなものなんですよ。難易度がとても高い」のだという。もちろんチームの方針で、とにかく当てろ、転がせという指導もある。そうしないと試合に出られないことも。ただ関口さんは「いざ長打のほうに振ろう、OPSを上げようとすると時間がかかるよというのを、高校生、大学生には知っておいてもらいたいです。1日2日でできるもんじゃない」という。

 さらに、全力で練習しなければ、試合で発揮できるスキルは身につかないのも知ってほしいポイントだ。長時間練習の結果、最大のパワーで動ける時間が減ってしまうというのも学生にありがち。近年、プロ野球選手はグラウンドに出る際にGPSを付けるようになっている。これは各自の練習量を把握して、限界を超えるときにストップをかけるためだ。そんな設備がない学生でもわかる“信号”もあるという。

「本気で振って、意図してる動作と実際の動作のズレが大きくなってきたりとか、力が入らないとか『何かおかしいな』となったら、もうかなり赤信号でしょうね。そのまま6割の力感で技術練習しても、試合で使えるものは身につかないんですよ」

 関口さんは高校球児を抱える親でもある。現在の高校生が日々こなす練習を見ると「量をやりすぎ」との思いが強いという。

「どれくらいの練習量が適切なのかは、なかなか可視化されてこなかったんです。プロでも最近ようやくわかってきたという状況なので。実は思ったより少ないんですよ」

 カロリーを消費しすぎると体作りに結び付かず、怪我につながることもある。「例えば、全力なら1日100スイングしかできませんという中で、ダラダラ走ったりとか無駄に走ったりとかしてしまう。それだと無駄なカロリーを使ってしまい、成長スピードは遅くなる」。選手の技術や進化を可視化する試みは、日々進化している。関口さんはこれを学生にも届けようと、日々挑戦していく。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)